現在、ビジネスモデルに変革が起こっています。従来は買い切りタイプの商品・サービスモデルが一般的でしたが、最近では「サブスクリプション(サブスク)」のサービス形態がさまざまな企業で提供されている状況です。
今回は、サブスクリプションのサービスを導入するメリット・デメリットについて解説していきます。
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目次
そもそもサブスクリプションとは?
サブスクリプション(Subscription)とは、商品やサービスを利用可能な権利を、月額や年額などで入手するビジネスモデルを指します。
現在では、製品やサービスの提供モデルの1つとして、消費財からITまで幅広いサービスが存在しています。
企業がサブスクリプションを導入するメリット
サブスクリプションでは、法人向けに特化したサービスも多く登場しています。企業がサブスクリプションを利用する際のメリットを紹介します。
初期費用を抑えられる
サブスクリプションのサービスは初期費用がかからないものが多く、購入するよりも導入コストを抑えられます。特にサービスや商品、機器を短期的・一時的に利用する場合は、月額契約のできるサブスク・サービスの利用が経済的です。
利用したいときだけ利用できる
サブスクリプションは、顧客が好きなときにサービスを開始でき、また好きなときに解約をすることができます。その場合解約金は発生しないことがほとんどです。サービスを利用してみて気に入らなかったときには、すぐにサービスの利用を停止することができます。この部分が分割払いとの大きな差になります。
会計上の手間が少ない
例えば社用車を購入する場合、「車両運搬具」と呼ばれる固定資産となり、会社の資産として計上されます。そうすると、毎年の減価償却や売却時の売却損益の計上など会計上の手間が発生します。一方、サブスク・サービスで車を利用する場合、購入時のような会計上の手間はなく、税金や自賠責保険料、車検などの費用も定額利用料の中に含まれているので、リース料として費用計上することが可能になります。
バージョンアップ・サポートが含まれている
買い切りタイプのソフトウェアだとバージョンアップをする場合に別途料金が発生したり、サポート費用として別途月額料金が発生するケースがあります。サブスクリプションならば月額、年額の定額料金の中に、ソフトウェアバージョンアップやサポートが含まれているケースがほとんどで、定期的にバージョンアップを繰り返すより最終的なコストが変わらないケースも多く見受けられます。
企業がサブスクリプションを導入するデメリット
利用しなくても料金が発生する
サブスク・サービスは一定期間利用できる権利を購入する仕組みのため、使っていなくても毎月定額の利用料が発生します。導入前に自社で定期的に利用するサービスや機器なのかを、改めて確認しましょう。導入後も利用頻度を都度見直して、頻度が低ければ解約をし、必要になったときに再度契約をするなど、定期的な見直しをするようにしましょう。
また、中途解約も考慮し、導入前に契約期間中に解約する場合の違約金や中途解約金が発生するかを確認することも大切です。
多くのサービスに加入してしまいがち
サブスクリプションは、月々に支払わなければならない料金が低額です。それは大きなメリットなのですが、料金が安いがゆえに、たくさんのサービスに加入してしまうことがあるので注意が必要です。
月々5000円程度だからと、10個のサービスに加入してしまえば、トータルで50000円の出費になります。ひとつひとつのサービスだけに注目するのではなく、サブスクリプションの加入状況を俯瞰的に把握し、利用するサービスを厳選するようにしてください。
サブスクリプションの始め方について
続いては、ビジネス経営をしている企業の視点から、実際にサブスクリプションサービスを始める方法を紹介していきます。サブスクリプションを軌道に乗せるためには、コストを過度にかけることなくサービスを普及させ、スムーズに継続顧客を獲得していくことが大切です。
サブスクリプションを始める際には、以下のステップに従って準備した上で、サービス展開を図ることが大切になります。
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・ターゲットとサービスの確定
・収益モデルの策定
・サービスをするためのシステム構築
ターゲットとサービスの確定
まずはじめに行うべきなのは、ターゲットとサービスの確定です。ターゲットについては、マーケティングのように、性別、居住地、職業や性格、生活様式などから「ペルソナ」を設定して、どのような層を顧客に取り込んで行くのか明確にします。
ターゲットを開拓するために、適したサービスを定めていく場合もありますし、自社の特定サービスを普及させるために、ターゲット選定を行う場合もあります。いずれにしても、ターゲットのニーズとサービス内容がうまく合致していることが大切です。このプロセスを誤ると、サブスクリプションサービスを軌道に乗せる難易度は非常に高くなります。
収益モデルの策定
ターゲットとサービス内容が定まってきたら、収益化するまでのモデルを策定します。サブスクリプションモデルはユーザーの参入障壁を下げて集客した後に、定期料金を徴収して安定収益化するケースが多いです。例えば、最初の○ヶ月を無料としたり、機能を制限した無料もしくは低額のプランを設定して、集客効果を高める施策はしばしば導入されます。
集客用のプランを策定する上では、以下の3点のバランスを取ることが大切です。
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・エントリープランが高い集客効果を持つこと
・エントリープランと通常プランのギャップによる顧客離脱を抑制すること
・顧客に迎合しすぎて収益性を阻害しないこと
サービスをするためのシステム構築
収益化するまでのプロセスが定まったところで、いよいよサービスを展開するためのシステムを構築します。現代では、ほとんどの場合Webを活用して集客、サービス提供、決済などサブスクリプションビジネスの一連のアクションを行うことになります。
したがって、サブスクリプションサービスの運営と管理に必要な一通りの機能をシステム上に構築することになります。自社でシステム構築することももちろん可能ですが、近年ではサブスクリプション用のプラットフォームも増えてきています。ここからはプラットフォームを活用した場合と、自社で構築した場合の2つのパターンについて解説します。
・プラットフォームの活用
サブスクリプションビジネスを行うのに必要な機能が一通り揃ったプラットフォームサービスが増えてきています。自社でのシステム構築に自信がない、構築費用を削減したいという企業にはプラットフォームの活用がおすすめです。
特徴としては、プラットフォームの費用も月額料金の「サブスクリプション」形態をとっていることです。ビジネスによる収益も月額で安定的に入ってくることから、収益・費用をマッチングさせやすくなっています。
機能の幅はプラットフォームによってさまざま。Webサイト作成の代行、決済機能や商品の配送管理などサブスクリプションビジネスに必要な機能が得られるほか、CRMや販売促進などマーケティングツールの機能まで兼ね備えているものも。また、店舗型、BtoB型など特定の業態のサブスクリプションサービスに特化したプラットフォームもあります。
サービス内容と必要とする機能を踏まえて、適切なプラットフォームを活用するとよいでしょう。
・自社でのシステム構築
基本的には自社開発の方が難易度が高くなります。検討できるのは、自社内にシステム開発関連のノウハウを持つ部署があり、また初期投資を大胆に行える企業に限られるでしょう。
月額の料金プランの構築やそれに合わせた決済システム、エントリープランから収益プランへの顧客管理など、通常のECとは異なるサブスクリプションサービス独特の構造に対するシステム構築が必要に。通常プラットフォーム利用より開発に時間がかかるため、サービス開始までのリードタイムも長くなります。
一方で、自社で自由に開発できるため、集客のためのWebも、ビジネス管理ツールなども、ニーズに沿って柔軟に構築できます。また、特にIT系の企業などの場合はサブスクリプションビジネスのシステム開発ノウハウを持つことが将来の強みにもなりうるでしょう。
また、一度構築したのちは、月額料金などが発生する訳ではないので、長期間ビジネスを継続する場合にはかえってコスト優位になる可能性もあります。
日本で展開されているサブスクリプションビジネス
日本でも様々なジャンルがサブスクリプションビジネスを展開しています。
自動車業界
代表的なサービスはカーシェアです。さまざまな車種に乗ることができるようになるほか、車庫や維持費の心配をすることがなくなります。
ファッション業界
必要な洋服を気軽にレンタルできるサービスが登場しています。プロのスタイリストが選んだ服が届くサービスもあり、トレンドの服を着続けることができます。
音楽業界
多くの音楽を好きなだけ聞くことができ、サブスクリプションビジネスの代表的なサービスのひとつとして認知が進んでいます。
動画配信サービス
ドラマや映画、アニメなどの見放題サービスです。ラインアップはサービスにより異なり、良質なコンテンツの獲得が各社の間で加熱しています。
飲食業界
一定料金を支払うことにより、1日1回食事をとることが可能なサービスが登場し、話題となっています。
まとめ
現在、様々な企業でサブスク・サービスの導入が進んでいます。コストの試算や解約時の違約金の有無などを確認しながら、自社の業務効率化や生産性向上につながるサブスク・サービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。