法人登記とは?法人登記を行うまでの手順や必要書類、申請方法について解説

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法人登記は会社が法人として認められるために必要な法的手続きです。法人登記するためには、様々な手続きが必要になります。

そこで今回は、法人登記とは何かを解説するとともに、手続きをスムーズに進めていくポイントや揃えておくべき書類など会社設立のための最低限の知識をご紹介していきます。

そもそも法人登記(会社登記)とは?

法人登記とは、自分の会社の概要を一般に公表し、法人として公的に認めてもらうための制度で、法律で義務付けられているものです。そのため、法人登記を速やかに行わずにいると、罰則として過料を納めなければいけなくなってしまいます。この過料の金額は裁判所で決定されることになっているため、ケースによって変わってきます。

また、法人登記を行うと、登記事項証明書が法務局から発行されます。この登記事項証明書は、法人が正式に登記を行っているという証拠になるものです。法人登記を行っておくと、銀行から借り入れしやすくなる、対外的な信用度が増すといったメリットがあります。また、法人登記を行っていないと、印鑑証明書などの発行もできません。

法人登記を行うまでの手順について

では、法人登記を行うまでの手順についてご説明していきます。法人登記は、以下の手順で行います。

・会社の設立方法や概要を決める
・法人用の実印を作成する
・定款を作成し、公証役場で認証を受ける
・出資金(資本金)の払込みをする
・登記申請書類を作成し、法務局で申請する

それぞれについて以下で説明します。

会社の設立方法や概要を決める

会社の設立方法には、発起設立と募集設立の2種類があります。発起設立とは、発起人が会社設立時に発行する株式の全てを引き受けて設立する方法です。現在では、一人で会社を始めることもできますし、資本金も1円から設定することができます。これに対して、募集設立とは、発起人以外にも株主になってもらうため、株主となる人を募集する方法です。一般的には、比較的簡単に会社設立が可能である発起設立のケースが多いです。

また会社を設立するにあたっては、会社の基本事項を決めなければなりません。基本事項では、商号(社名)、事業目的、本店所在地、資本金、事業年度(会計年度)などが主な項目になります。

<会社の基本事項>

・商号(社名)
・本店所在地
・発起人
・取締役
・取締役会と監査役の有無
・事業目的
・資本金
・事業年度(会計年度)

法人用の実印を作成する

法務局に法人設立登記の申請をするときには、会社の実印が必要です。社名が決まったら、まず会社の実印を作っておきましょう。そのとき、法人口座の開設に用いる銀行印と、請求書や納品書などに押印する角印(社判)も一緒に作成しておくと、後々の手間がかかりません。

なお、法改正によって、2021年2月15日から、法人設立登記をオンラインで申請する場合、印鑑は任意となりました。ただし、書面で申請する場合は、これまでどおり印鑑が必要です。また、会社設立後に実印を使う場面は意外と多いので、会社設立のタイミングで実印を作っておいた方がいいでしょう。同時に、法人設立登記の申請に必要な書類を揃えます。

定款を作成し、公証役場で認証を受ける

定款(ていかん)とは、会社を運営するうえでのルールをまとめた、会社の憲法のようなものです。定款にはあらかじめ決めておいた会社の概要の項目をはじめとする、必要事項をまとめて記します。株式会社の場合は、作成した定款を公証役場に提出し、認証の手続きを行います。合同会社、合資会社、合名会社の場合は、定款の認証は不要です。

記載内容は、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つです。他の項目に決まりはありませんが、絶対的記載事項がないと定款は無効になります。

<絶対的記載事項>

・事業目的
・商号(社名)
・本店の所在地
・取締役
・取締役会と監査役の有無
・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
・発起人の氏名または名称と住所

<相対的記載事項>

・現物出資の内容
・株式の譲渡制限
・取締役の任期
・株券の発行
・株式総会招集通知の期間短縮
・財産引受の内容

<任意的記載事項>

・会社の事業年度
・取締役の人数
・役員報酬の計算方法
・株式総会開催時のルール
・会社の経営理念など

なお、上記でもお知らせしましたが定款の認証は、公証役場で行います。手続きには、5万円の認証費用と謄本交付手数料1枚につき250円が必要になります。

出資金(資本金)の払込みをする

定款が認証された後には、会社の出資金の払込みを行います。出資金の払込みを行う時には、誰がいくら払込んだのかわかるようにしなければなりません。そのため、発起人設立の場合、発起人名義で通帳に残るように払い込みをします。また、法人名義の口座は、法人登記が完了した後でなければ作成することができませんので会社の発起人となる者の口座に振り込むことになります。

この出資金の払込みを行ったことを証明するための「払込みがあったことを証する書面」を作成し、登記所に提出します。

登記申請書類を作成し、法務局で申請する

ここまでの手順をすべて行った後に、法務局に法人登記の申請を行います。法人登記の申請を行った日が、会社の設立日となります。設立日を大安など特定の日にしたい場合は、逆算して準備を進めておきましょう。なお、法人登記の申請が完了した後は、税金や社会保険関係の手続きを行います。従業員を雇う場合は、労災保険と雇用保険の加入手続きも必要です。

法人登記の必要書類・申請方法

法人登記を行う際に必要な書類は、その会社の種類や状況によって変わってきますが、基本的には以下のような書類が必要です。一見すると、必要書類が多く大変そうに感じるかもしれません。しかし、中には特定の場合にだけ必要で、該当しない場合には準備不要の書類もあります。

法人登記の必要書類

設立登記申請書

設立登記申請書は、社名(商号)や本店所在地、登録免許税の金額、添付書類の一覧などを記載する書類です。法務局のWebサイト、「商業・法人登記申請手続https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/touki2.html」のページから申請書様式をダウンロードできます。

登録免許税納付用台紙

登録免許税納付用台紙は、登録免許税を納付する際に使用するA4サイズの台紙のことです。登録免許税は収入印紙で納付するため、金額に応じた収入印紙をこの台紙に貼り付けて提出します。株式会社の登録免許税は「資本金額×0.7%」となり、算出される金額が15万円に満たないときは、登記申請1件につき15万円です。なお、収入印紙への消印を押印してはいけません。

定款(謄本)

法人登記の手続きは、定款の作成および認証を終えてから行います。登記申請の際には、作成済みの定款の謄本を1部用意します。

発起人の同意書(発起人決定書、発起人会議事録)

発起人の同意書は、発起人全員の合意の下に、社名や事業目的、本店所在地などを詳細に決定したことを証明するための書類です。発起人決定書や発起人会議事録ともいいます。

代表取締役の就任承諾書

代表取締役の就任承諾書は、代表取締役に就任することを承諾する旨の記載をした書類です。取締役が1人だけの場合は、一般的に代表取締役の就任承諾書と設立時取締役の就任承諾書を併せて出します。

取締役の就任承諾書

取締役の就任承諾書は、取締役への就任を承諾したことを証明する書類です。設立時に複数人の取締役がいる場合は、人数分の就任承諾書の作成が必要です。

監査役の就任承諾書

監査役の就任承諾書は、監査役に就任することを承諾した旨を証明するための書類です。監査役を設置しない場合は、提出は不要です。

取締役の印鑑証明書

登記申請の際には、設立時の取締役の印鑑証明書が必要です。印鑑証明書の有効期限は3か月間なので、有効期限が切れていないかを確認しておきましょう。取締役が複数人いるなら、全員分の印鑑証明書が必要です。ただし、取締役会を設置している場合は、代表取締役のみ必要となります。

出資金(資本金)の払込証明書

出資金(資本金)の払込証明書は、定款に記載されているとおりの資本金が、所定の銀行口座に振り込まれているかを証明する書類です。資本金の払込みを証明するため、通帳の表紙と1ページ目(表紙の裏)、振込内容が記帳されているページのコピーが必要です。

印鑑届書

印鑑届書は、会社の実印を届け出るために必要な書類です。法人登記の際に必須ではありませんが、後日改めて登録をする手間を省くために、登記申請と一緒に提出するケースがほとんどです。

登記すべき事項を記録した別紙、または記録媒体

登記すべき事項を記録した別紙、または記録媒体は、定款に書かれていないことを補足するための書類です。「登記すべき事項」は、設立するのが株式会社か合同会社かによっても異なります。書面で提出するケースが多いですが、CD-RやDVD-Rなどの記録媒体での提出も可能です。

法人登記の申請方法

法人登記の申請には、窓口で申請、郵送で申請、オンラインで申請の3つの方法があります。それぞれについて説明します。

法務局の窓口で申請

管轄の法務局の窓口に出向き、法人登記に必要な書類一式を直接提出することができます。提出書類に不足がないかを窓口でチェックしてもらえるため、登記申請に不安がある人にはおすすめです。提出書類の内容に問題がなければ、申請から1週間~10日程で登記が完了しますが、その際に法務局からは、特に登記完了の連絡はありません。もし、提出書類に不備があったときは法務局から連絡が入り、指摘された箇所を補正(訂正)して期限内に再提出します。

郵送で申請

管轄の法務局宛に、必要書類一式を郵送して法人登記の申請をすることもできます。郵送方法に決まりはありませんが、配達状況が追跡できる簡易書留や引き受けを記録する特定記録郵便で送ると、届いたかどうかがわかるので安心です。法務局に行く時間がない方や遠方の方には便利な方法といえます。登記完了までの期間は、窓口での申請の場合と同じく、1週間~10日程です。提出書類に不備があった場合は、法務局に直接再提出する他、郵送で補正(訂正)することもできます。

オンラインで申請

オンラインの場合は、法務局の登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと 新規ウィンドウで開く」から法人登記の申請を行うことが可能です。好きな時間に自宅から申請ができますが、あらかじめ専用ソフトをダウンロードする必要があります。また、電子証明書の読み取りが必須となるため、慣れていない方にとっては、ややハードルが高い方法だと感じるかもしれません。提出書類に不備があった場合は、登記所から「登記ねっと 供託ねっと」に補正(訂正)のお知らせが届きますので、オンライン上で補正(訂正)して提出、または、補正書様式の書面を法務局に直接再提出する他、郵送することで訂正が可能です。

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法人登記の完了後に行うこと

法人登記が完了したら、「登記事項証明書」と「印鑑証明書」を取得します。登記事項証明書は、法人口座開設や税務署への届け出に必要です。法務局で取得するか、オンラインで入手しましょう。印鑑証明書は、担保の設定や諸契約に必要なため、取得しておいてください。

登記事項に変更が生じたときの対応

会社登記した後、登記されている事項に変更が発生したときは、必ず登記内容を変更する手続きをしなければいけません。これを「変更登記」といいます。

変更登記は、会社の名称が変わったときや本店所在地を移転したときはもちろん、代表取締役の住所が変わったとき、事業目的が変わったとき、新規事業を始めたとき、任期満了などにより取締役や監査役を変更したときなどが対象です(たとえ1ヵ所であっても、変わったときは変更登記が必要となります)。なお、変更登記を行う場合も、管轄法務局へ登記内容変更の申請書を持っていく方法のほか、郵送やオンラインで届け出を行うことができます。

変更登記の期限は、変更から2週間以内と定められています(期限を過ぎても変更登記は受理されます)。ただし、期限内に変更登記をしなかった場合は、会社の代表者に対し100万円以下の罰金(過料)が科せられる可能性があるためご注意ください。

また、最後に会社登記をしてから12年間(株式会社の場合。一般社団法人や一般財団法人は5年間)変更登記がなされていない場合は、会社(法人)が事業を廃止していない届け出をするよう官報に公告が出された後、解散したとみなされることになります。これは、現行の会社法では役員、監査役ともに任期は(選任後)10年とされているため、12年以内には何らかの変更登記がなされると想定されているからです。そのため、長期間にわたり変更登記がない場合、会社は解散して法人としては消滅することになります。

会社登記時に得をするには【豆知識】

会社が支払わないといけない税金のひとつに「法人住民税」があります。この税金には、法人税額(所得から算出される)に住民税率を乗じた「法人税割」と、法人の資本金別などで定額となっている「均等割」の2つがあります。

例えば、東京23区内に事業所があり資本金が1,000万円以下かつ従業員50人以下だとすると、法人住民税の均等割は12ヵ月で7万円(1ヵ月あたり約6,000円)です。6月2日に会社を設立して期末を5月31日に設定したとすると、第一期は「12ヵ月-1日」となるため11ヵ月計算となり、第一期で支払うべき法人住民税が1ヵ月分(約6,000円)マイナスとなります。そのため、月初の1日を避けるようにすれば、わずかですがお得になるというわけです。

まとめ

会社登記にはやるべきことがいくつもありますが、いずれも会社を設立するために必要なことです。用意する書類などは多いものの、それぞれの記述は意外と簡単ですので、手順に従って1つずつクリアしていきましょう。

また手続きの中でどうしても分からないことは出てくるでしょう。自分ひとりでは難しいと思ったら司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。ただし、専門家を頼る場合でもある程度の基本的な知識を身に付けておくことは損ではありません。会社の登記に必要な書類は他記事でも解説しています。合わせてチェックして円滑に手続きを進められるようにしましょう。

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