「NPO法人」と聞くと、ボランティア団体をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、実際はボランティア活動だけではなく、さまざまな活動を行っています。
今回は、NPO法人設立の流れやメリット・デメリットなどについて解説していきます。
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目次
NPO法人とは
NPOは、Non Profit Organizationの略称です。日本語では、「特定非営利活動」と訳されています。
NPO法人は、98年に施行された特定非営利活動促進法(NPO法)の定めにより成立した団体のことをいい、正式には「特定非営利活動法人」といいます。法人格を持つNPO法人に対して、法人格を持たないNPOは任意団体という扱いになっております。
NPO法人はNPO法に基づき、非営利団体は法人格を得ることで、契約の主体者になれる・社会的信用が得られる・事業展開がしやすくなるなどのメリットを得ることができます。 公益性が高い事業を立ち上げて独立しようという人は、株式会社ではなくNPO法人という組織形態を選択するのも、ひとつの方法です。
「非営利」と訳されてますが、収益をあげてはいけないわけではなく、事業を行なって収入を得てもOKですし、従業員に給料を出しても構いません。
ただし、得た収益を構成員に分配することが禁じられています。主に事業活動に充てることを意味するということになります。この点が、利益を得て配当することを目的とする株式会社などとは大きく違う点になります。
特殊で名前は聞いたことはあるが設立手順が分からない方のために、今回はNPO法人設立の手順についてまとめてみました。
NPO法人における非営利とは?
前述でも知らせしましたが、NPO法人で言うところの非営利は、「社員に利益を分配しない」という意味になります。通常の株式会社などは、利益が出た場合は、社員や株主に分配できます。この点が一般的な企業とは大きく異なる点です。利益が出た場合は、活動資金に当てることになります。規定にさえ従っていれば、利益を上げて、事業収入を得ることも社員に給料を支払うこともできます。規定はあるものの、NPO法人でも活動した結果利益が発生するのは、何も問題はありません。
NPO設立法人の活動として認められる業種と要件
下記の活動目的にそぐわない非営利団体の場合は、NPO法人設立はできません。これから設立する団体の活動内容が、どの業種に当てはまるかを最初に確認しておきましょう。
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・保険、医療又は福祉の増進
・社会教育の推進
・まちづくりの推進
・学術、文化、芸術又はスポーツの振興
・環境の保全
・災害救援
・地域安全活動
・人権の擁護又は平和の推進
・国際協力
・男女共同参画社会の形成の促進
・子どもの健全育成
・情報化社会の発展
・科学技術の振興
・経済活動の活性化
・職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援
・消費者の保護
・上記活動に関する連絡・助言・援助
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・営利を目的としないこと(利益があがってもそれを構成員で分配しない)
・社員(総会で議決権を持つ正会員のこと)の入退会に不当な条件を付さないこと
・10人以上の社員がいること
・役員として3人以上の理事と1人以上の監事がいること
・役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の3分の1以下であること
・宗教活動や政治活動を主たる目的にしないこと
・特定の公職者(候補者を含む)や政党を推薦・支持・反対することを目的としないこと
NPO法人設立の流れ
NPO法人を設立するまでには、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。ここではNPO法人設立の流れについてご紹介します。
設立準備(活動内容と活動要件の確認)
上記、NPO法人を設立するために必要な活動内容や要件を確認し、自身が行う業務の内容で設立することが可能か確認します。
設立総会
設立当初の社員が集まり、法人設立の意思決定を行うとともに、定款の内容を確認したり、活動予算の内容を確認したりします。また、入会金や会費、役員の選出など、NPO法人を運営する上で重要な内容を決めていきます。
所轄庁へ設立認証の申請
申請には下記書類が必要になります。
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・設立認証申請書
・定款
・役員名簿
・各役員の就任承諾および宣誓書の謄本
・各役員の住所又は居所を証する書面
・社員のうち10名以上の者の名簿
・確認書(宗教活動等を目的とする団体、暴力団等の統制化の団体ではない)
・設立趣意書
・設立についての意思の決定を証する議事録
・設立当初の事業年度および翌事業年度の事業計画書
・設立当初の事業年度および翌事業年度の活動予算書
書類は受理された日から1ヶ月間公開され、市民からも内容の確認を受けられる状態になります。3ヶ月以内に認証または不認証が下されます。もし不認証になってしまったとしても、その理由が通知に記載されるので、該当箇所を訂正して再度申請を行うことができます。
なお、所轄庁は団体の事務所の所在地によって決まります。事務所がひとつの都道府県にあればその都道府県の知事が所轄庁です。2つ以上の都道府県にあれば内閣総理大臣が所轄庁になります。
法人登記
法人は認証されただけでは対外的に効力をもたず、登記して初めて法人として成立します。主たる事務所の所在地での設立登記は、認証書受領日後、2週間以内に管轄する法務局で設立登記をしなければいけません。
2週間という期間が限られているため、登記に必要なものは審査をうけている間に用意しておきましょう。
設立登記申請内容
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・OCR用紙(または登記すべき事項を保存したCD-RかFD)
・代表権を有する者の資格を証する書面
・理事の就任承諾書及び誓約書
・資産の総額を証する書面
・定款
・委任状
・登記用紙
・代表者個人の印鑑証明書
・NPO法人の印鑑届出
・NPO法人設立認証書
・NPO法人設立登記申請書
(参考)NPO法人設立 必要書類(法務局HP)
(参考)統括法務局の確認はこちらから
所轄庁に法人設立を届出
設立登記完了後、所轄庁に「設立登記完了届出」を提出します。 従たる事務所がある場合は、その所在地での設立登記を、主たる事務所の登記日後2週間以内に完了させる必要があります。
これでNPO法人の設立完了です。
NPO法人を設立する費用
NPO法人を設立する際には、株式会社のように資本金、登録免許税、定款認証手数料などの費用は一切かかりません。つまり、資本金0円、法定費用0円での設立が可能です。
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・住民票(役所に支払う役員人数分)
・設立登記申請時に使用する法人実印
・設立後に法人設立届や銀行口座を作る際に必要な登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
・会社の印鑑証明
・専門家(行政書士)への依頼費用(専門家に依頼した場合)
かかる費用としては上記になりますが、専門家依頼費用を除くと、合わせて1万程度です。
NPO法人設立のメリット・デメリット
NPO法人設立のメリット・デメリットを解説していきます。一般的な会社とは異なる点も多いので、設立の際はメリットデメリットの両方をよく確認しましょう。
NPO法人設立の主なメリット
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・社会的信用を得られる
・法人名を使って活動ができる
・NPO法人は少額で設立が可能
・税金が優遇される
社会的信用を得られる
社会的信用を得るためには、時間をかけて実績を積んでいく必要があります。NPO法人は、設立するための条件が一般的な会社よりも難しく、時間もかかります。しかし、国からの認証も必要になるため、「NPO法人」というだけで社会的信用を得られるのです。
また、社会的信用が高いことで、優秀な人材も集まりやすくなります。一般の企業と同じように、規模が大きくなれば社員を雇用しなくてはいけません。その際に社会的信用をアピールするために、法人化は非常に有効です。
法人名を使って活動ができる
NPO法人を設立すれば、契約や口座名を法人名にできます。個人と資産を分けることも可能で、個人名での契約よりも信頼を得やすくなります。契約に関するリスクも代表個人ではなく、団体が負うことなります。リスクを分散させることで、活動もしやすくなります。
NPO法人は少額で設立が可能
一般的に会社を設立する際は、最低資本金や登記にかかる手数料などにお金がかかります。しかし、NPO法人には、資本金や出資金がなくても設立が可能です。設立にかかる手数料などは全て免除されます。
税金が優遇される
NPO法人も収益事業で得た所得に関しては、法人税を支払う必要があります。しかし、非営利活動を通して得た所得に関しては、課税の対象になりません。つまり、課税対象となる特定の収益事業をしていない場合は、一切法人税を支払う必要がなくなります。
また、消費税に関しても、2期目までは免除になり、3期目以降も課税対象になる売上が1,000万円以下であれば、納税が免除になります。但し、商品の仕入れなどにかかる一部の消費税は納めなくてはいけません。その他に印紙税も一部免除になるなどがあり、全てを合わせると非常に大きな金額が免除になります。
NPO法人設立の主なデメリット
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・すぐに設立できない
・活動できる分野が限定されている
・10人以上の社員が必要になる
・情報公開が必要
すぐに設立できない
NPO法人設立は、一般の企業と比べると複雑な手続きをしなくてはいけません。審査などもあるため、設立までには時間がかかります。提出書類の準備や書類を提出してからの審査を含めると、最低でも3~4ヶ月はかかります。当然、書類に不備があれば審査は上手く通らないため、さらに時間がかかります。同じ時期に申請している団体が多ければ、その分時間もかかります。
活動できる分野が限定されている
NPO法人を設立するためには、NPO法に規定されている非営利活動の20分野いずれかに該当しなくてはいけません。活動内容を変更するには、総会を開催し決議を取り、再度所轄庁に書類を提出します。非常に時間がかかますし、決議も必要になるため、基本的に変更はなかなか難しいです。活動内容は、設立の申請前に十分に話し合い、活動の変更がないようにしましょう。
10人以上の社員が必要になる
NPO法人設立には、10人以上の社員が必要になります。この10人は一般的な企業の社員とは異なり「活動内容に賛同してくれて入会した人」で、未成年や家族でも入会が可能です。そのため、とりあえず人数を集めることは、そこまで難しくありません。しかし、NPO法人では社員1人にも平等に決議権が与えられます。信頼できる人や家族であれば、心配する必要はありませんが、あまり活動をよく思っていない人に決議権を与えてしまうとトラブルの元になってしまいます。慎重に10人を選ぶとなると、時間のかかる作業になるでしょう。
情報公開が必要
NPO法人は年に1度、事業報告書や収支計算書などを所轄庁に提出する必要があります。提出した書類は、誰でも閲覧できるようになります。通常企業が隠しておきたい情報でも、公開しなくてはいけません。法人化すると社会的信頼性は高まりますが、調べようと思えば誰でも、会社の内情を把握できてしまいます。場合によっては、赤字の経営状況など、悪い部分も見えてしまうのはデメリットとなるでしょう。
NPO法人設立に関して、注意すべき点
ここからはNPO法人設立に関して、注意すべき点について解説していきます。設立したあとの手続きや一般的な企業との違いに注意しましょう。
設立後にも手続きが必要になる
NPO法人を設立したら、すぐに活動を開始できるわけではありません。税務署や所轄庁などに、以下の各種書類を提出する必要があります。
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・給与支払事務所等の開設届出書
・法人設立届出書
・定款の写し など
一般的な企業と異なる点が多い
NPO法人は一般的な企業とは、営利・非営利であること以外にも異なる点が非常に多いです。社員が10人以上必要な点や決議権が社員全員に与えられる点など、これまでに会社を設立した経験がある人でも、分かりにくい部分も多くあります。
もちろん、設立の手続きも異なるので、事前によく確認しておくのが大切です。不明な点がある場合は、行政書士への相談や各自治体で行っている相談会などを活用して疑問点をなくしましょう。
役員報酬は役員全員がもらえない
NPO法人では、役員に渡す報酬を役員全体の1/3以下に抑えなくてはなりません。これはつまり、理事が全6名いたとしても、そのうちの2名しか「役員報酬をもらえない」ことを意味します。
こうなると、他の4名については、役員なのに無報酬と考えてしまいますが、そうでもありません。役員は、有給の社員として兼務もできるため、その対価である給料をもらうことができます。
まとめ
NPO法人設立するまで結構な時間がかかります。準備から申請書類を作成し、審査が終わるまでにも3~4ヶ月の時間がかかります。申請書類を作成したり、申請書類の不備があるとさらに時間が必要になってきます。
滞りなくNPO法人の設立をする為には、多少のお金がかかりますが、専門家(行政書士)に依頼することも視野に入れておいた方が得策です。