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海洋生分解性プラスチック(Marine Biodegradable Plastic)とは?
微生物の働きによって、最終的に水と二酸化炭素に完全分解されるプラスチックを「生分解性プラスチック」といいます。そのうち、海洋での生分解性に長けたプラスチックを「海洋生分解性プラスチック」といい、近年、プラスチックごみによる海洋汚染が問題視されていることから、環境中にどんどん増えていく海洋ごみを減らす観点で、その普及に期待が寄せられています。
ごみとして流出されるプラスチック問題
1950年以降、世界で生産されたプラスチックは83億トンを超えており、そのうち63億トンがごみとして廃棄されています。そして、現状のペースでは、2050年までに120億トン以上のプラスチックが埋め立て・自然投棄されるとの予測が立っています。年間1,220万トンのプラスチックごみが海洋に流出し、その94%が海底に沈んでいるといわれています。
流出したプラスチックは、海の生き物の成育や自然環境に悪影響を与えることがあります。また、流出したプラスチックごみは、波や紫外線の影響で徐々に小さくなっていき、年間95万トンがマイクロプラスチックに変わっていきます。マイクロプラスチックは長い年月を経て、さらに小さくなっていきますが、海の中で完全には分解されず蓄積されていくため、環境への負荷が問題視されています。
海洋プラスチック問題を解決するためには?
この海洋プラスチックごみ問題を解決するためには、使用したプラスチックが自然環境に漏れ出さないように回収して再利用するなど、私たちの生活の中で循環させる社会システムへのシフトや関連技術の開発が必須です。一方、漏れ出すことが避けられない用途に対しては、現在使われているプラスチックを、海洋で生分解される海洋生分解性プラスチックに代替することで、海洋プラスチックごみを今後蓄積していかないようにすることが求められています。しかし、国内プラスチック生産量(年間約1000万トン)のうち、日本国内で流通している生分解性プラスチックは約2300トン(0.02%)と少なく、海洋生分解性プラスチックにいたっては、わずかしかないのが現状です。
海洋生分解性プラスチックの普及に向けて
海洋生分解性プラスチックが普及するための課題の一つは、環境条件にあわせて分解速度が変わる海洋生分解性プラスチックの開発です。海洋生分解性プラスチックには、プラスチックとして使用されている間は丈夫で、できるだけ長く使用できることが求められますが、使用済みとなり海洋中に出た場合、早い段階で生分解することが求められます。漁具やブイなどの海洋中に流出しやすいプラスチック製品は様々ありますが、製品化した際の用途や特性を考えた素材開発が必要です。
もう一つの課題は、製品の信頼性の担保です。開発コストが高いため、ポリエチレンを原料とした安価なものを、まさにグリーンウォッシングとなる「海洋生分解性プラスチック」と偽って流通している現状があります。偽物は形状がなくなるまで分解しても、水と二酸化炭素にはならず、マイクロプラスチックのままとなってしまう問題が残ります。このような、いわゆる「不完全な」海洋生分解性プラスチックと、「正規」の、微生物の力によって、水と二酸化炭素にまで分解される海洋生分解性プラスチックが、きちんと区別され、正しく評価された上で、認証される制度及び枠組みの創設が喫緊の課題です。
引用
UNDP 「The Climate Dictionary」
https://www.undp.org/publications/climate-dictionary
産総研マガジン
https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20220713.html
独立行政法人製品評価技術基盤機構
https://www.nite.go.jp/nbrc/industry/plastic-waste.html
関連サイト
ベクターエネルギー
https://venergy.vector.co.jp/
ベクターエコサービス
https://vecos.vector.co.jp