会社の設立を行うときには、会社の根本規則である定款を作成する必要があります。この定款には、会社の本店所在地を必ず記載しなくてはいけないですが、その本店所在地の記載する方法は2つあります。2つの内、そちらを記載すればいいか判断に悩むポイントです。
今回は、会社設立の際、定款の本店所在地の記載を最小行政区画(市区町村)で止めるメリット・デメリットについて解説します。
(参考記事)会社設立時に必要な「定款」とは?
目次
定款に本店所在地を記載する2つの方法
定款に本店所在地を記載するには、2つの方法があります。
・最小行政区画(市区町村まで)で記載する方法
・地番まで記載する方法
この2つの記載方法がありますが、どちらを記載するかで会社設立後の事務所移転で費用が発生してきます。
最小行政区画(市区町村まで)で記載する方法
まず、最小行政区画とは何かと言うと、以下をまとめて最小行政区画と言います。
・全国の市町村
・東京23区
・政令指定都市の15市(札幌・仙台・さいたま・千葉・横浜・川崎・静岡・名古屋・京都・大阪・堺・神戸・広島・北九州・福岡)
最小行政区画とは?
「最小行政区画」=「市区町村」
行政区画とは、行政機関の権限が及ぶ範囲として細分化された地域です。結論から言うと、東京都の場合は「区」まで、その他の場合は「市町村」までが「最小行政区画」となります。よって、定款では「東京都新宿区」や「埼玉県さいたま市」まで定めれば良いということになります。
政令指定都市の「区」はどうなるのか?
では、横浜市や仙台市、広島市などの政令指定都市の場合はどうでしょうか。これら政令指定都市の住所では「市」の後に「区」が続く形になっていますね。こうなるとどこまで記載すれば良いか迷ってしまいますが、この場合は「市」までが最小行政区画になります。
一般的に「市区町村」という言葉に含まれる「区」は東京都の特別区(23区)を指します。地方自治法では「特別地方公共団体」と定義されており、市町村と同じ機能を持つ行政区画です。これに対し、政令指定都市で言う「区」は単なる住所表示であって、行政区画には当たりません。東京都の特別区と違い、こちらは「行政区」と呼ばれます。同じ「区」であっても、東京都と政令指定都市とではその意味合いが異なるのです。
地番まで記載する方法
本店所在地を事務所の所在する地番まで記載する方法です。
そのままですが、例えば、会社の事務所が東京都新宿区高田馬場〇丁目〇番〇号にあるならば、地番まで記載するなら、「東京都新宿区高田馬場〇丁目〇番〇号」と記載する事になります。この記載方法をした場合、登記申請時に本店所在場所を記載した発起人会議事録を提出する必要はありません。
しかし、本店所在地に地番まで記載しているので、もし、隣の地番に事務所移転をしても定款の変更手続きが発生します。定款の住所変更には、登録免許税3万円が必要となってきます。
会社設立当初、事務所を移転する予定がなくても、将来事務所を移転せざるおえない事情が発生するかもしれませんので、無駄な費用を省く上でも本店所在地には最小行政区画までを記載しておいた方がいいです。
最小行政区画(市区町村)までの記載で止めるメリット
定款の本店所在地の記載を市町村までで止めておくメリットとしては、下記のようなことが挙げられます。
代表者のプライバシーを守れる
本店所在地が会社の代表者の自宅住所である場合には、代表者は自分の自宅住所を登記しなくてはならないことになります。登記された住所は誰でも法務局で登記事項証明書を取得することで知ることができますから、会社の代表者は基本的に住所に関してはプライバシーがないものと覚悟しておかなくてはなりません。この点で、定款に記載する本店所在地を市町村までの記載としておけば、いたずらの郵便物などが送られてくることを避けることができます。
代表者の引越しごとに登記変更をしなくて良い
また、代表者が個人的に引越しをする場合、同一市町村内であれば登記変更が必要ないのもメリットと言えます。
会社の本店所在地は登記義務がありますから、もし変更が生じた場合には法務局に登録免許税を支払った上で定款変更の登記をしなくてはならないことになります。そうなるとその度にコストが発生することになってしまいますから、これを避けるために本店所在地の記載を市町村までにしておくことにはメリットがあると言えます。
最小行政区画(市区町村)までの記載で止めるデメリット
一方で、定款の本店所在地の記載を市町村までにしておくデメリットとしては、郵便物が届かないことがあることが挙げられます。
事業所が一戸建ての施設であるような場合には問題ありませんが、賃貸アパートや貸しビルなどである場合には配送業者が混乱する可能性があります。
開業当初に事業所に配送される郵便物には重要なものが含まれる可能性がありますから、配送ミスなどが生じることが予想される場合には市町村以下の記載も行なっておくのが良いでしょう。
まとめ
定款の絶対的記載事項の一つである、本店所在地について、事務所の所在地を記載したらいいのですが、記載するには「最小行政区画(市区町村)まで記載する方法」と「地番まで記載する方法」の2つがあることについてまずは把握しておきましょう。
事務所移転をした時にこの記載のしかたによって、定款の変更をしなければならない場合があり、その変更には登録免許税3万円が必要となってきます。郵便物の配送ミスが起きるリスクもありますが、プライバシーの問題や、定款変更の無駄を省くためには、定款の本店所在地には「最小行政区画まで記載する方法」が選択肢の一つとして入れてみると良いでしょう。