「確定申告の申請書作成をお願いしたい」
「節税対策をする為に税理士と顧問契約をしたい」
「決算書作成を依頼したい」
など、上記専門分野のプロである税理士に依頼したいと考えている個人や企業の経営担当は多いかと思います。
会計事務所や税理士法人の仕事はクライアントの会計・税務についてサポートする業務です。会計と税務は密接に関連しているため、「税理士」の1年の動きは税務署などへ書類を提出する時期に左右されます。そのため、税理士業界には繁忙期と閑散期があります。
今回は、税理士事務所の忙しい時期について解説しますので、これから税理士に依頼を検討している方や企業の担当者は是非参考にしてみてください。
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一般的な税理士事務所の繁忙期と閑散期
繁忙期は税務署へ提出する書類の種類と量が多いという特徴があります。具体的には、「年末調整・確定申告時期」「決算など通常業務が多くなる時期」などに区分できます。
繁忙期 (11月~5月)
一般的に11月から5月までが繁忙期です。主に以下の業務が発生します。
個人事業主やフリーランスにおいては、事業期間が1月から12月と定められています。したがって、自ずと決算月は12月になります。その後、確定申告を3月半ばまでに終わらせなければならないので、この間が税理士の忙しい時期になります。
具体的には、毎年2月16日から3月15日までの間に個人事業主の確定申告書を作成し、税務署などへ提出します。この確定申告は通常業務と同時進行のため、最も忙しい時期といえます。
法人クライアントの決算月の末日の翌日から2カ月以内に法人税や消費税などの確定申告書を作成して、税務署へ提出します。
法人においては、自由に決算月を選ぶことができます。決算月は、年度区切りに合わせて3月決算の会社が多いといわれています。また、最近は9月を決算月としている会社も増えています。そのため、決算月の2ヵ月後にあたる5月と11月に決算が集中する傾向があります。
税理士は、顧問契約を結んでいる会社の従業員の年末調整代行をしていることも少なくありません。その場合、社員から書類を受け取るのは総務や経理の従業員でも、それら提出された書類の内容確認や法定調書の作成などは税理士が行うことになります。年末調整の業務を実施する時期は12月と1月になりますので、その時期は忙しくなります。
当然ですが、顧問契約数が多い事務所は、個々の企業とのMTGや、資金調達が強い税理士事務所は融資実行の為の事業計画書作成など、事務所によって忙しさも変わってきます。
閑散期(6月~10月)
一般的に6月から10月までが税理士事務所の閑散期です。顧問先にもよるので一概にはいえませんが、ここがいわゆる「閑散期」となります。じっくり相談するのに適したタイミングだといえるでしょう。
但し、前述でもお知らせしましたが、顧問契約数が多い事務所は、個々の企業とのMTGや、資金調達が強い税理士事務所は融資実行の為の事業計画書作成など、事務所によって忙しさも変わってきますし、業界の慣習などにより3月や9月を決算としていない会社を多く顧客に持っている税理士もいます。
事前に依頼したい事務所へのヒアリングをする事が重要となってきます。
1年で最も忙しい時期は?
毎年2月中旬から3月15日までに行われる確定申告のシーズンは、税理士にとって1年で最も忙しい時期といわれています。この1ヵ月間に確定申告を行わないと延滞税などのペナルティを受ける可能性があるため、多くの個人事業主やフリーランスは必死で確定申告を終わらせようと税理士に助けを求めてきます。
しかし、税理士が忙しいのは2月中旬から3月15日までだけではありません。確定申告の準備はそれ以前からはじまりますし、さらに少しさかのぼれば11~12月は企業の年末調整があるため、「11月~3月までは非常に忙しい」というのが最も忙しい時期と言えるでしょう。
会計事務所(税理士事務所)規模別による働き方の違いについて
税理士業界についての業務スケジュールの理解を深めるためには、会計事務所や税理士法人の規模別に働き方を見ていくことが有効です。以下、規模別に4つ分けて説明していきます。
零細事務所
一般的に所長を含めて5名以下の事務所のことを指します。クライアントの規模は中小零細企業が多いです。経理スタッフを雇う余裕がないため、巡回監査はチェック業務だけでなく、クライアントから預かった通帳や領収書などから会計データを入力する記帳代行を引き受けるケースがあり得ます。忙しい時期は作業時間が長くなり、特に年次決算の多い月は業務量の急増が考えられます。
中堅事務所
一般的に15名から40名のスタッフを抱えている事務所のことを指します。クライアントは中堅企業が多く、上場前後のベンチャー企業などからの依頼が増加傾向にあります。求められる業務はクライアントの税務全般で、税金のアドバイスから書類の作成までと幅広いです。
しかも、クライアントの規模から書類を作成する時間がかかる傾向にあります。また、中堅企業は中小零細業よりも経済取引が複雑になるため、高度な知識が求められることは十分に考えられます。閑散期は定時に退社できますが、繁忙期には残業のため退社時間が20時から21時半、時には22時を過ぎることも珍しくないといわれています。
大手・準大手事務所
外資系の大手税理士法人であるBIG4からスタッフを数百名抱える準大手税理士法人のことを指します。クライアントは大企業や外資系企業など規模が大きいのが特徴です。規模が大きく海外進出もあるので経済取引は複雑です。当然、求められる知識は高度であり、1社のクライアントに対して提供する国内税務や国際税務などのサービスは複数の部署で対応する分業制となっています。
クライアントの取引金額は大きいため、例えば国際税務の移転価格税制などはひとつの判断ミスにより、多額の余分な税金を負担させてしまうリスクを抱えています。責任が大きいため、常に勉強することが求められ、残業が多くなる傾向にあります。
以下、4つの税理士法人のことを指します。
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・PwC税理士法人
・デロイト トーマツ税理士法人
・KPMG税理士法人
・EY税理士法人
専門特化事務所
専門特化事務所は大きくは2つに分けることができます。ひとつは医療・IT・飲食店・美容業など特定の業種に特化した事務所。もうひとつは相続税や資産税など税目に特化した案件を引き受ける事務所です。単に会計・税務のサービスにととまらず、コンサルティングサービスを提供するのが特徴です。
コンサルティングサービスの特性上、税務だけにとどまらず、経営課題などクライアントが抱える問題の解決能力が求められます。また、的確なニーズの把握は必須であり、専門的な知識とコミュニケーション能力が求められます。
専門的な知識が求められており、細かい事例を調べて常に勉強が必要となるため、拘束時間が長くなり残業も当たり前といわれています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?税理士事務所の繁忙期と閑散期について解説しましたが、一般的には、年末調整や確定申告時期である11月から3月半ば頃までが、税理士の繁忙期ですが、税理士が忙しい時期は、その税理士が抱えている顧客の数や決算月などにも左右されます。税理士の業務内容や、顧客としている会社の特徴によって、忙しい時期には違いがあるのです。
まずは時期を鑑みて依頼するという考え方より、現在、税理士事務所の中でも初回の紹介相談料が無料の所も多くありますので、前もって税理士と面談して、税理士の顧客数や業務内容など色々な事を把握するところから始めてみましょう。