菓子製造販売店の開業について解説

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「パンやケーキが好きだから自分でお店を開きたい」
「今までの洋菓子店の経験を活かして開業したい」
「色々なお菓子に関するアイデアがあるのでお店を出したい」

など、特に経験のある人はお店を開きたいと考える人がいるかと思います。今回は、菓子製造販売店の開業について解説していきます。

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菓子製造販売店で開業する場合の許可

後述にそれぞれのお店の形態別許可についてお知らせしていますが、基本的に菓子製造販売店で開業する場合、以下の許可を取得する必要があります。

・飲食店営業許可申請
・飲食店営業許可申請+菓子製造業許可申請
・菓子製造業許可申請

飲食店営業許可申請

衛生法上、飲食店を営業する場合は必ず「飲食店営業許可申請」を保健所に提出する必要があります。厨房、食器棚、空調など店舗設備において細かい規定がありますので、着工前に設計士と共に所轄の保健所に相談に行っておきましょう。

スケジュールを考えて、カフェの工事が完了する2週間ほど前に店の見取り図や食品衛生責任者手帳、手数料と共に申請を済ませておきましょう。許可がおりれば開業できるようになります。

菓子製造業許可申請

パンや菓子のテイクアウトや卸業を中心として開業する場合には、「菓子製造業許可申請」が必要となります。該当する場合には、厨房を工場のように密室にするための工事をしなくてはなりません。通常のカフェよりも厨房工事費が高くなる可能性があります。

通常のカフェとしてパンや菓子の提供をする場合は、菓子製造業に該当しない場合が多いようです。物件を契約して設計に入る段階で、所轄の保健所に確認するようにしてください。

お店の形態で許可が違う!?

食品を取り扱うためには、「食品衛生責任者」が店舗毎に1名必要です。講習を受ければ取れる資格ですので、養成講習を受講して、自治体に申請すれば食品衛生責任者の資格を得ることができます。

以下はパン屋さんを開業する場合の一例になります。各都道府県によって変わってくる場合がありますので、事前に管轄の保健所に確認する事をお勧めします。

店舗内でパン製造、販売(持ち帰りのみ)

菓子製造業許可が必要です。サンドイッチなど、一旦焼いたパンをさらに加工して販売したい場合は、飲食店営業許可も必要です。冷凍されたパンを、お店の中で焼いて出すという場合も同じで、菓子製造業許可を取ってください。菓子製造業許可を取得するには各都道府県条例で定められた施設の基準を満たす必要があります。

店舗内でパン製造、販売、イートインコーナーあり

この場合、必要な許可は菓子製造業許可と飲食店営業許可の2つが必要がなります。菓子製造業許可の施設基準を満たして飲食店営業許可の施設基準も満たす必要があります。その場でパンを焼いてお客様に出すというベーカリーカフェ(持ち帰り無し)のような業態ならば飲食店利業許可のみで対応できます。ただし、持ち帰りもOKとするならば菓子製造許可が必要です。

他から仕入れたパンを売る場合

自前で焼かずに、他から仕入れたパンを販売するだけならば、自治体にもよりますが特に許可はいらないということも多い様です。ただし、小分けにして販売するなどの場合は許可が必要なこともあります。東京都の場合は、サンドイッチ(調理パン)を販売するときは、食料品等販売の許可が必要です。

運搬してパンを売る場合

最近見かけるケースでは、自動車にパンを積み、移動販売するというケースです。自前でパンを製造する場合、通常の店舗販売をするパン屋と同じく菓子製造業の許可が必要です。サンドイッチも取り扱いたい場合は、飲食店営業許可も取らなければならない場合があります。
また自動車に関して、加工済みのパンを積んで車で販売する場合(食品移動販売車)と、車の中で焼く場合(食品営業自動車)とでは申請が異なります。保健所の許可要件に基づいて車を改造する必要があります。

喫茶店を開業する場合は『喫茶店営業許可』

喫茶店を開業する場合、喫茶店営業許可を申請する必要があります。ちなみに、喫茶店営業とは、「喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業のこと」であると法律で定められています。ほとんどの喫茶店が提供をしているサンドイッチ・カレー・パスタなどの軽食を提供できません。(※ドリンク以外では、クッキー・ビスケットのようなお菓子等に限定されます。)また、ビールなどのアルコール類の提供もできません。軽食を提供する場合、喫茶店営業許可ではなく、「飲食店営業許可」を取得するようにしてください。

最後に、喫茶店営業許可は、営業所等を管轄する保健所等で取得することになり、申請先によって異なりますが、申請手数料は10,000円程度で、審査期間は15日程度になります。許可を受けないで飲食店営業を行った場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金(併科規定有)となります。(食品衛生法第72条)

みはこちらから。

菓子製造販売店の開業タイプ

開業タイプは、主に下記の3つのタイプがあります。

自宅開業あるいは地域(街中)出店型

洋・和菓子製造販売店には、洋菓子と和菓子をそれぞれ単独で取り扱う、洋菓子と和菓子を取り扱う、洋菓子とパンを取り扱う、喫茶店・レストランを併設するなど、いくつかの業態があります。

カフェ型

駐車スペースを確保し、自店製造のケーキを選び、友人や家族とともに店内で食べることができるようにした喫茶スタイルの店舗です。

無店舗型

店舗は持たずに自宅などで製造し、定期的に決まった場所で販売する、通販のみで販売するといったタイプもみられる。認知度を向上させ顧客の定着に成功した場合は、①あるいは②に移行するパターンも見られます。

保健所との事前相談が重要になる

営業形態で取得する許可ごとにお店の施設基準が変わってくるので事前相談の段階で「もれなく」「細かく」「ハッキリ」伝えて、お店の施設をどうすれば基準に適合するか確認します。

ここで本当はやろうとしているサービスをハッキリ伝えていなかったり、漏れがあったりすると施設基準が変わり、事前相談で聞いた基準通りにお店を作ったのに許可がおりなかったり、営業できたとしても後から保健所から指導が入ってしまうことがあります。(いきなり罰則が下されることは実務上ないです)

例えばパン屋さんがイートインを設置するのにその旨を伝えなければ、保健所は菓子製造業の施設基準でお店の許可を判断してしまいます。(この場合、飲食店営業許可が必要)

(参考記事)【飲食店開業】保健所へ事前相談に行くタイミングとは?

菓子製造販売店の開業で必要なスキルとは?

和菓子や洋菓子それぞれに、素材についての知識、それら素材を用いる製法に関する知識、そして製造技術・経験は不可欠である。加えて、経営知識や原価管理などのスキルが必要です。それらのスキルを得るには、専門学校への就学のほか、メーカーや老舗、ホテル・レストランなどでの勤務において、製菓衛生師などの資格を取得する方法があります。

資格については、製菓衛生師を取っておいて損はありません。製菓衛生師というのは、お菓子の製造において衛生管理や資質向上を目的に、お菓子の作り方や衛生などのあらゆる専門知識を持っているかどうか証明するための資格です。この資格を手に入れれば食品衛生責任者の資格も手に入れることも出来ます。

その他、飲食店として開業する場合の許可や届出

前述の他に、飲食店として開業する場合、様々な許可や届出が必要になってきます。出来れば事前に飲食店開業に強い行政書士などの専門家と相談することをおススメします。

(参考記事)飲食店を開業するのに必要になる資格・許可・届出について

飲食店開業にかかる費用とは?

飲食店を開業する際にかかる費用の大きなものとしては以下になります。

・物件取得に関する費用
・店舗投資(内外装工事、厨房機器・備品の購入など)に関する費用
・開業後の運転資金(仕入、広告宣伝費など)

飲食店の業態や立地、内外装をどこまでこだわるかにもよりますが、だいたい300万円~1,500万円くらいの費用が係る事が多いです。ただし300万円は、ギリギリまで切り詰めたうえでの最低額なので、現実的には最低でも500万円は用意しておかないと、開業後の経営が困難になってくることは目に見えています。

(参考記事)【飲食店開業】開業資金の目安はいくら必要なのか?

開業資金には融資は必要!?

自己資金や開業する業態や立地などに係る費用にもよりますが、前述でもお知らせした開業に係る費用が大体300~1,500万くらいになりますので、自己資金は最低200~300万円以上用意し、足りない分を融資で調達するのが理想的です。融資先としては、日本政策金融公庫は飲食店の開業資金の融資で非常に利用者の多い金融機関ですので、自身の自己資金、そしてお店の開業に係る費用や想定運転資金を鑑みて足りない部分を融資で賄う事を検討しましょう。

まとめ

菓子製造販売店には、形態や開業タイプによって様々な営業許可や届出などが絡んできます。業態の多様化により取得する許可が複雑になってきていますので、ご自身で始めるお店がどのような形態で何を販売するかしっかり決めてから事前相談にのぞみ、適切な許可を取得しましょう。

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