農業での開業について

投稿:
更新:


ここ数年、20代、30代で農業を始める人が急増しています。会社員を辞めて農業を始める、脱サラ農業者も多くなっています。大きな理由として、2012年から「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」がスタートしたことが挙げられます。

「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」とは、次世代を担う農業者となることを志向する人に対して、就農前の研修を後押しする資金(準備型(2年以内))及び就農直後の経営確立を支援する資金(経営開始型(5年以内))を交付するというものです。

このように農業は注目されていますが、開業するにあたり知っておかなければいけない事が多くあります。今回は、農業での開業について解説していきます。

※この記事を書いているVector Venture Supportを運営している株式会社ベクターホールディングスが発行している「起業のミカタ(小冊子)」では、更に詳しい情報を解説しています。無料でお送りしていますので、是非取り寄せをしてみて下さい。

農業分野


農業は農作物を生産する仕事が基本的ですが、分野は大きく分けて以下の2つになります。

    ・①耕種農業:土を耕して作物を育てる
    ※穀物類(米・麦など)芋類(ジャガイモ・さつまいもなど)豆類(大豆・小豆など)野菜(人参・トマト・ナスなど)果物(リンゴ・みかんなど)花き(菊・バラなど)
    ・②畜産農業:牛や豚などの家畜を育てる
    ※牛・豚・馬・羊・鶏など

    (参考記事)酪農家での開業について

    農作物の流通方法

    近年は、鮮度や品質を維持して消費者に農産物が供給される、最適な流通ルートが増えています。代表的な所として農産物は、農家から農協などの出荷団体、卸売市場、仲卸業者、小売業者を経て消費者に届きます。最近はインターネットモールや自社サイトを作って販売したりしています。その他、レストランなどの飲食店と契約する農家も増えています。

    産直通販

    ネット通販をはじめとする、通信販売で農産物を売る方法です。ネット販売を行うために、WEBサイトを開設したり、大手のネットショップ・オンラインモールに登録したり、さまざまな方法でネット販売を行っている農家が多くなっています。

    小売業者へ契約出荷

    小売業者と直接契約し、出荷する方法です。市場出荷の場合、取引価格が日常的に変動しているため収入が安定しにくいのですが、契約出荷の場合は、契約時に出荷する品目や数量、価格などが決まるため、収入が安定しやすいというメリットがあります。

    直売所・道の駅

    近年、直売所・道の駅は、近隣の農家が新鮮な農産物を出荷することから、「鮮度の高く、美味しいものを安く買える」として、周辺住民や観光客から注目を集めています。農家が独自に直売所を運営しているケースも多くなっています。直売所・道の駅では、価格を自分で設定して販売できます。

    スーパーマーケット・コンビニなどで直売

    近年は、スーパーマーケットやコンビニの一角に、地元野菜の売り場(直売コーナー)が設けられているケースが増えています。農家が持ち込んだ地元の新鮮な野菜が並んでいるため、身近なお店で手軽に新鮮な野菜を購入できるとして、多くの人に喜ばれています。

    レストランへ直売

    自家生産した食材や提携農家が生産した食材、地域の食材を使用している「農家レストラン」が増えています。また、農家レストランと謳っていない飲食店でも、食材にこだわるお店が多くなっていて、それがウリにもなっています。特に、有機栽培や自然栽培で作られた食材は、需要が高まっています。

    民間企業のプラットフォーム

    近年は民間企業が間に立って、農産物を集荷してもらい、企業が提携している販売先に直送してもらえるサービスも登場しています。都市部スーパーの直売コーナーをはじめ、全国の直売所など販路を拡大でき、取引をすべて行ってもらえることから、市場よりも高く販売できて収入を増やせるだけでなく、より良い農産物の生産に集中できるというのは大きなメリットでしょう。

    農業ビジネス(生産者)を始める手順とは?

    一般的に、以下の流れで生産者として農業を始めます。

      ・①マーケット調査をして需要を探る
      ・②ポジションと戦略を作成
      ・③栽培作物を決める
      ・④作物の品種を決める
      ・⑤栽培方法を決める
      ・⑥生産する土地を探す
      ・⑦流通・販路を決め、仮契約をする
      ・⑧準備を始める
      ・⑨試験栽培する
      ・⑩都度計画を見直す
      ・⑪本格的に生産開始

      最初に土地を決めてしまうと、その土地で出来る農作物と自分がやりたい農作物が異なる場合がありますので、まずはリサーチして、栽培する作物を決める所から始めます。準備には時間や人、資金が必要になってきますので、様々な専門家にあって相談をしましょう。

      農業の仕事分野とは?


      農業の仕事分野は大きく分けると「生産者」「農業周辺ビジネス」に分かれます。

      生産者として農業開業

      生産者としての起業・開業するには、初期投資が必要になります。そのためには米作のように天候や台風などの影響が大きく、年一回の収穫で米価の値下がりや、米の不作などの当初の予測と違ってくる問題もあります。

      個人が生産者として起業・開業するには、初期投資の回収や自分達の生活費など考えると、規模にもよりますがリスクが大きくなるので、果菜類や花などのように年に複数回収穫できるものを選ぶ方法もあります。また農業法人のようなところでしっかり研修し、体験してからの起業・開業という方法もあります。

      農業周辺ビジネス

      農業ビジネスは、農産物の生産に限ったものではありません。これまで農家が苦手としていた分野にこそビジネスチャンスがあります。

      例えば、収穫した農産物を販売するためのマーケティング、消費者に喜ばれる商品企画、生産者から消費者までの物流、ブランド化戦略、流通業者との商談、インターネットによる宣伝などです。こういった、生産者と消費者をつなぎ、双方に効果やメリットを与えられるビジネスが可能性を秘めています。

      生産者と違い、事業によっては初期投資が少なくて済むのも魅力の一つです。

      【無料】起業相談会を実施しています。起業相談会申し込みはこちらから。

      農業はお金がかかる!?

      当然、土地や機器など何もない状況から始めると多額の費用が発生します。新たに農業を始める場合の費用として、最も大きいのがトラクターやトラックなどの設備投資です。平均的な初期費用は400万円程度ですが、金額は作物によっても変わります。ほとんどの人が購入することになるトラクターは新品を買うと、高いものだと1,000万円以上にもなります。その他にも、トラックやコンバインなど買わなければならないものが多く、多くの人が頭を悩ませている点になります。そして、もちろん土地も費用として大きいですが、地方など安価で貸し出したりする場合があります。

      この初期費用をいかに抑えることができるかどうかが農業を始めるにあたってのポイントです。各自治体によっては支援制度があったりしますので、収納予定地が決まれば、その自治体の窓口に相談してみることをおススメします。

      一般的な就農資金とは?

      一般的に、新しく農業を始めるにあたって用意する資金の平均金額は600万円程度になります。内訳としては、設備投資などが450万円、当面の生活費が150万円です。

      農業を始めた場合、農作物を収穫して現金として入ってくるまでは収入がないため、あらかじめ生活費を用意しておく必要があります。また、収穫できたとしても思うように売れるとは限りません。そのため、目安として、生活費は1~2年分用意しておくとよいでしょう。また、種子や肥料、ガソリンといった農業をやっていくうえで必ず必要になる営農資金も必要です。営農資金は平均として年160万円ほどです。営農資金は農業をしていく限り、必ず毎年かかる費用です。かかる費用は作る作物によって変わりますので、事前にチェックしておきましょう。

      そして、農業のために必要な農地を取得する必要があります。しかし、農地は買うよりも借りた方が得策です。農地の借地料はだいたい10アールあたり畑で5500円、田んぼで10000円ほどです。農地は比較的安く借りることができますので、借りることをおすすめします。

      新規就農者のためのおススメの資金援助制度

      新たに農業をはじめようと思った場合、それなりの資金が必要になります。そこで、農協(JA)や日本政策金融公庫(公庫)からの融資を活用することをおすすめします。どちらも新規就農者の初期費用のために低金利での融資制度を用意しています。

        ・JAバンク「JAの農業融資
        ・日本政策金融公庫「新規就農・農業参入支援

        また、農業の場合は当面の生活費の用意も問題です。農業は収穫期にしか収入がなく、種子を撒いてから収穫できりまでに最低でも3カ月かかります。また、収穫できらからといって高く売れるとも限りません。そこで、農林水産省による農業次世代人材投資資金の活用をおすすめします。これは新規就農者のために、当面の生活費を補助する目的で設けられています。

        どちらの融資も年齢制限が設けられていますので、農業を始めようと思っている方ははやめに融資を申込むようにしましょう。

        農業開業までのキャリアパス

        何も経験がない、知らない状況よりも、農業でにお開業する場合、一定の生産技術を起業・開業前に身に着けることが必要になってきます。

          ・①自分がやりたい農業分野の農家に住み込みで働く
          ・②農業大学校などの全寮制の研修機関で生産技術を習得する

          (参考)各道府県の農業大学校一覧

        時間はかかりますが、近道は農業大学校などで技術を習得して、その後自分がやりたい分野の農家さんに住み込みで働いて、ノウハウや流通などを学ぶ方法です。

        開業する場合の手続き

        個人事業主として行う場合、一般的な手続きとして、個人事業の場合、個人事業の開廃業等届出書、所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書、青色申告承認申請書等を納税地の所轄税務署へ提出します。また、個人事業開始申告書は事業所所在地の都道府県税事務所へ。詳しくは、最寄りの管轄行政に問い合わせが必要です。

        法人として会社を設立する場合、定款作成、会社登記をし、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、法人設立届出書(地方税)などを提出します。

        農業での資格

        農業に関連する資格にはさまざまなものがありますが、無資格でも農業を行うのは可能で、実際のところ運転免許しか持っていないながら、農業をしている人はたくさんいます。

        当然ですが、農業を始めるなら普通自動車免許は必須資格です。軽トラやトラクター、コンバインなど、農業で使用する農業機械はたくさんあります。軽トラは収穫した農作物や農機具などを運搬するのに必須で、普通自動車免許がなければ運転することができません。農地を耕すトラクターや稲刈りのためのコンバインは免許がなくても操作可能ですが、免許なしで公道を走ると無免許運転になってしまいます。

        また経営規模によっては、作業の効率化をはかるために農機を利用する人もいることでしょう。大型のトラクターやコンバインを利用する場合には「大型特殊自動車運転免許」、またけん引タイプの農機具も多いので「けん引免許」が必要となる場合があります。

        そして農作業では、危険物や毒物を扱う必要がある場面が生じます。例えばハウス栽培を行う場合には、ボイラー設備を使用することになるでしょう。ボイラー設備では重油を扱うことになるので、総務省が認定する国家資格「危険物取扱者(乙種第4類)」が必要になります。ボイラーを管理する場合には、「ボイラー技士」の資格取得もおすすめします。自然農法などを取り入れない限りは、除草や病害虫予防のために農薬を利用する場面があるかと思います。しかし農薬の中には、扱い方次第で重大な結果を引き起こす劇薬も多いです。そこで「毒物劇物取扱者」の取得をおすすめします。農薬の適切な知識が身につくはずです。

        最後に、近年は農家のドローン活用が注目されています。ドローンを活用する場合には、申請等手続きが必要になりますが、「産業用無人ヘリコプター技能認定」は、農薬散布等で利用する無人ヘリコプターの操作に関する資格ですから、資格を取得し、無人ヘリコプターを扱えるようになれば、作業の効率化がはかれます。

        こちらから。

        直接販売で更なる売り上げ拡大へ

        前述でもご紹介しましたが、農産物は、農家から農協などの出荷団体、卸売市場、仲卸業者、小売業者を経て消費者に届くケースが多いですが、直接販売することにより更に売り上げ拡大が見込めます。

        そして直接販売の拡大は、生産者の収入を増やすというメリットだけでなく、高品質で安心・安全な農作物の提供によって顧客から支持されたり、それによってやりがいを感じたり、多くのメリットがあります。しかし、それだけでなく、地域で採れた農産物を知ってもらうことにより、以下のようなメリットも生まれています。

        体験農場併設など経営規模の拡大

        農場にレストランや体験農場を併設し、美味しく安全な農産物を使った料理を提供したり、実際に収穫してもらったり、育てた農産物をウリとした新たなビジネスも生み出します。

        地域の活性化

        かつては、農村から出荷された農産物が都市部で販売される流れしかありませんでしたが、近年は都市部の人が農村の直売所・道の駅を訪れ、購入する流れもできています。そして、地域内外の交流が新しい産業の創出や観光の活性化にもつながり、さらには雇用が生まれ、賑わいを取り戻す効果なども生み出しています。

        新規作物の試験販売

        直接販売は、どのような農作物が売れているのかがわかりやすく、消費者の声を取り込めます。新規作物の試験販売へのハードルが高くありませんし、情報収集により、どこにどのように出荷したらより多くの収入を得られるのか、経営のヒントもみつかるでしょう。

        【農業】豆知識

        ◇農法や栽培方法
          ・慣行農法:農薬や化学肥料など人工的に作り出し物を多く活用して育てる農法
          ・有機農法:農薬や化学肥料を使わない農法
          ・自然農法:人の手のなるべく加えず、自然のままの環境で育てる農法
          ・露地栽培:自然の気候や土の条件で栽培
          ・施設栽培:ビニールハウスなどを利用して栽培
          ・水耕栽培:土を使わず、成長に必要な養分を溶かした水溶液で栽培
           

          ◇畑の単位
            ・1a(アール)=100㎡(例 10m×10mの土地)
            ・1ha(ヘクタール)=10,000㎡(例100m×100m)=100a
            ・1反(たん)=1,000㎡ およそ10a
            ・1町(ちょう)=約10,000㎡ およそ1ha 
             

            ◇おすすめの中古農機具買取サイト

            初期費用を抑える為に、農機具は出来るだけ安く購入したい所です。中古農機具の販売・買取するサイトをご紹介します。

相談会

相談会

今まで1,000人以上の相談会をしてきたアドバイザーが、豊富なデータ・最新情報とノウハウ、専門家の知見を元に、無料かつ約30分~1時間ほどで「起業・開業ノウハウ」をアドバイスします。