一般財団法人は、平成20年11月までは公益目的が主たる財団法人のみでしたが、公益法人制度改革に伴い、平成20年12月より公益目的でなくとも一般財団法人を設立できるようになりました。今回は、一般財団法人とはどのような法人なのか、メリット・デメリットについて解説していきます。
目次
一般財団法人とは?
一般財団法人は個人や法人からの寄付などによって拠出された「財産」を運用することで活動していく法人です。拠出される財産は「物」であることが多く、財産を運用して事業を行うことを誰かに任せたいといった場合に、一般財団法人を設立することで財産から生じる利益で事業を行うことができます。
身近なところで言うと、美術館の多くは「財団法人」が運営しています。財産は「物」でなくともお金でも構いませんが、最低300万円以上の財産を用意しなければ設立することができず、また、財産に重点が置かれているため、2期連続純資産額が300万円未満となった場合は解散することになるのが一般財団法人の特徴です。
そして、財産の集まりに対して法人格を与えるという性格上、社員という概念はなく、理事や評議員を置く必要があります。財団法人の例としては、美術、学術、芸術など文化財の保護事業団体、スポーツの振興事業団体、奨学金事業団体や育英会、ボランティアなどの福祉活動団体、学校法人などがあります。
かつては公益性が求められ主務官庁の許可を受けなければ設立できませんでしたが、現在では法律に定められた要件を満たせば、登記だけで誰でも設立することができるようになっています。
財団法人には一般と公益がある
財団法人にも社団法人と同様に、「一般財団法人」と「公益財団法人」があります。
一般財団法人
2008年12月に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により設立できるようになった法人です。この法律により、一定額以上の拠出金があれば目的に制限はなく、誰でも一般財団法人を設立することが可能になりました。また、一般社団法人と同様に、営利を目的としない非営利団体となります。生じた利益を分配することはできませんが、給料や役員報酬を払うことができます。
公益財団法人
一般財団法人のうち国や都道府県より公益認定された財団法人のこといいます。認定を受けるには「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に定められる23種類の事業分野に該当すること、公益目的の事業費が全体の支出の50%以上を占めていることなどがあります。
一般財団法人に向いている事業とは?
前述でもお知らせしましたが、財団法人の例として、美術、学術、芸術など文化財の保護事業団体、スポーツの振興事業団体、奨学金事業団体や育英会、ボランティアなどの福祉活動団体、学校法人などがあります。
実際に、事業家等多額の財産を築いた人が一般財団法人を設立して社会貢献事業を営む例は日本だけではなく世界に存在しています。事業では営利を追求し、財団法人では自分が将来的にサポートしたいと思う人材や分野に資金を出すという仕組みです。有望な若者のための奨学金を運営している団体もあります。
近年、退職後のセカンドライフを充実させるために一般財団法人を設立するケースが出てきました。生活費の足しにしたいという思いと、社会貢献したいという思いが合わさった結果、一般財団法人もしくは一般社団法人を運営し役員報酬を得るという形になっているということです。
一般財団法人を設立するメリット・デメリット
一般財団法人を設立するメリット
一般財団法人を設立するメリットは、基本的にどのような事業でも自由に行うことができ、個人事業よりも社会的な信用を得やすいという点です。個人事業の名義で銀行口座を開設することが難しくても、法人名義では可能です。さらに、非営利目的の法人であるため各種助成金を活用できる可能性があります。
・基本的にどのような事業でも自由に行うことができる
・任意団体と違い法人格を持つ団体として信用力がつく
・会社設立にあたって官庁の許認可は不要(法務局での登記は必要)
・設立後も監督庁がなく、事業報告の義務等もない
・法人名義で銀行口座を開設したり、法人名義で財産を所有できる
・事業目的が公益目的である必要はない
・公益認定を受けることで公益財団法人になることができる
・非営利型に該当すると税制上の優遇を受けられる
・設立者(財産を拠出する人)は1名でよく、役員と兼任できる
一般財団法人を設立するデメリット
一般財団法人を設立する際のデメリットは最初に資金を300万円以上用意しなければならない点や最低でも7名(理事3名・評議員3名・監事1名)の人員を確保しなければなりません。そして、赤字であっても法人住民税を払う必要があり(最低年7万円)また、非営利目的の法人であるため、利益を分配することができません。
・300万円以上の財産を用意しなければならない
・剰余金の分配ができない
・最低でも7名(理事3名・評議員3名・監事1名)の人員を確保しなければならない
・赤字であっても法人住民税を払う必要がある(最低年7万円)
・最低2年に一度は理事の重任登記をしなければならない
・拠出された財産が滅失等により事業ができなくなった場合は解散する
・2期連続純資産額が300万円未満になった場合は解散する
・財団の目的は、その変更に関する規定を定款に定めない限り、変更不可である
一般社団法人と一般財団法人の違いとは?
では、一般社団法人と一般財団法人の違いとは何でしょうか?簡単にいうと、一般社団法人が人(法人も含む)の集まりであることに対し、一般財団法人は財産の集まりという点が違いになります。
一般社団法人は、何かを行うことを目的として集まった人(法人も含む)が法人を運営しますが、一般財団法人は、何かを行うことを目的として集められたお金や土地などの財産を管理・運営するための団体になります。
まとめ
今回は、一般財団法人を設立するメリット・デメリットについてご紹介致しました。一般財団法人は、財産の拠出が必須であることや運営のための人数が多いことなどから、設立のハードルは上がると言えますので、設立を検討している方は、予め専門家(行政書士など)に相談しておきましょう。