LLP(有限責任事業組合)とは? メリット・デメリットを解説

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2005年から新たに定義された事業体がLLP(有限責任事業組合)です。LLPは法人ではないのですが、株式会社と任意組合の良いところを取り入れた特徴があります。

今回は、LLP(有限責任事業組合)についてやメリット・デメリットを解説していきます。

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LLP(有限責任事業組合)とは?

LLPとはLimited Liability Partnership(リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ)の略称で、日本語では「有限責任会社」と呼ばれる組織形態のことです。1900年代にアメリカで生まれ、その後先進国・新興国に広がり、日本でも2005年から制度適用されています。

LLPの最も大きな特徴は利益配分の仕組みにあるといえます。通常の株式会社であれば出資者(投資家)には出資率に応じて利益が配分されます。但し、損失が出た場合には出資者はその分だけ損失を払わなければいけないです。すなわち、株式会社はいわば無限責任をその特徴としていますが、LLCでは出資者は事業破たんしても出資額分だけしか債務を負わなくてよく、事業経営で得た利益の配分も出資比率にかかわりなく「組合員の能力、技術、特質」などに応じて独自に決めることができます。

上記でお知らせした特徴から、LLPは企業と研究機関の産学連携の促進、異分野のエキスパート同士による共同事業運営、ベンチャービジネスの活発化のために用いられていることが多いです。

LLPの主な特徴について

LLPの主な特徴を、「株式会社」「合同会社(LLC)」と比較しました。

構成員全員が有限責任を持つ

出資者は出資額分しかリスクを負わないため、事業に参画しやすくなります

損益や権限の分配を自由に決定できるなど、内部自治が徹底している

資額に寄らない分配ができ、取締役などの会社機関が強制されず、柔軟な組織編成が可能です。

構成員課税の適用を受ける

LLPに法人課税はされず、利益が出た時に、出資者に所得税が課税されます。有限責任、内部自治、構成員課税の3つの特徴によって、大企業同士や大企業と中小企業、専門的人材同士など、様々な共同事業の促進を目的としている制度です。

LLPはどんな事業に向いているのか

LLPは、内部自治、有限責任、構成員課税という3つの特徴から、「個人×個人」「法人×法人」「法人×個人」といった、様々な属性をもつ出資者が共同で事業を行う場合に動きやすい形と言えます。一般的に、大企業と中小企業による共同事業や、産学連携、ベンチャー事業、領域の異なる専門人材どうしが集まって事業を行う場合などに向いています。

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LLPのメリット・デメリット

LLPには、ほかの法人と比べてメリットがありますが、デメリットもあります。それぞれ確認しておきましょう。

LLPのメリット

設立時の費用が安い

株式会社を設立するときに必要な費用25万円程度と比べて、LLP設立にかかる費用は6万円となります。会社設立のための費用が安いことは大きなメリットです。

会社設立までの期間が短い

株式会社を設立するには、およそ通常は数週間から1ヵ月程度が必要となりますが、LLPであれば数日~2週間程度で設立できます。

決算公告義務がない

LLPでは、決算公告をする義務がございません。株式会社は、資本金を出資しているのは株主であって、経営者とは別です。そのため、決算書などを通じて、株主に会社の状況について知らせる義務があり、決算公告を行う必要があります。

柔軟な経営ができる

組合員の出資割合や利益・損益の分配、事業方針の決定は、組合員が自由に決めることができます。LLP事業で利益が出た場合に、どの組合員にどれだけ利益を分配するかは、出資額と無関係に自由に決めることができます。株式会社であれば、持ち株数(≒出資金の多寡)に応じて出資が配分されます。クリエイターなどノウハウや専門技術を提供する人への分配を多くするなど、インセンティブを高める工夫も期待できますから、ソフト開発やアニメ制作事業などでの活用が望めます。

事業方針や経営のことなども出資者の話し合い(原則として全員一致)で自由に決めることができます。例えば株式会社であれば、取締役会や株主総会の設置が強制されたり、経営方針の決定に株主の顔色を伺う必要があったりという制約があります。それに対し、出資者全員が、主体的に、対等の立場で発言し、即座に実行に移すことができるのもLLPのメリットです。企業や大学が共同して行う研究開発など、短期的な利害関係に捉われずに進めたい事業と相性がいいと考えられます。

損益通算できる

LLPでは、法人税が課税されずに、出資者である組合員に対して所得税として直接課税されます。LLPに直接課税するのではなく、LLPへの出資者の利益配分額に対して、それぞれ課税されるというわけです。そのため、LLPの事業で損失が出たときは、出資の価格を基礎として定められる一定の範囲内で、組合員が別の事業から生じた所得と通算することができ、全体の課税対象額を圧縮できます。

LLPのデメリット

法人格ではない

LLPには、株式会社のように法人格がございません。それは「法人税がかからない」というメリットにもなりますが、多くの利益が見込める事業であれば、法人化することで節税効果が大きくなる場合があります。また、法人格がないため、LLPの名前自体では契約できません。

税金負担が大きくなってしまうことがある

前述の「法人格ではない」と似ていますが、法人格がないため、利益が大きくなった場合にはかえって税金負担が大きくなってしまうことがあげられます。構成員課税によって法人税がかからないのは、起業当時はメリットとなりますが、事業規模が大きくなって多くの利益が見込める場合、法人化したほうが節税効果が大きくなります。

株式会社に組織変更できない

LLPの場合、株式会社に組織変更することができません。法人格がないために、いったんLLPを解散してから株式会社を設立する必要があります。

LLPの設立方法について

LLPは「会社」でも「法人」でもなく、「組合」となります。そのため法人格はございませんが、設立するには登記手続が必要となります。ただし、株式会社を設立するのに比べて要する期間は短く、かかる費用も少ないことが特徴となります。

登記は、株式会社と同様に管轄の法務局に対して申請を行います。その際、組合員による組合契約書(株式会社における「定款」)を作成しておき、登記時に提出します。なお、同一市町村内で同一の事業を行うLLPと類似名称はつけられませんので、登記申請前に名称調査は行っておきましょう。

同時に、登記申請をする前に出資金を払い込んでおく必要があります。出資金額は2円からとなっており、現金だけでなく、現物資産(動産、不動産、有価証券など)による出資もできます。なお、登記にかかる費用は「登録免許税」の6万円のみ(専門家に設立依頼した場合には別途費用が発生)で済みます。

その後、申請内容に不備がなければ、申請してから約7~10日で登記が完了します。登記が完了した後は、LLPの登記簿謄本や印鑑証明書も取得できます。法人格がないといっても、税務関係や社会保険労務関係の届出は行う必要がありますので注意しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、LLP(有限責任事業組合)についてやメリット・デメリットを解説してきました。多くのメリットを持つLLPですが、万能の団体ではありません。会社や組合、個人事業と併せて、事業を興すときの選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか?

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