雇用されて働いている人のなかには、将来に期待できないなどの理由で、働き方を見直している人もいるかと思います。そんな方に業務委託で独立開業することをおすすめします。成功すれば今より高額の収入を期待でき、働き方の自由度も増すからです。一方で、事業の起動に乗らずに収入が下がり、生活が苦しくなる場合もあるため注意が必要になります。
今回は、業務委託の基礎知識や独立するメリットデメリットについて解説していきます。
目次
業務委託とは?
業務委託とは、その言葉通り、「業務」を外部の企業や個人に「委託する」ことを指します。仕事を引き受ける側(受託者)と仕事を任せる側(委託者)は、雇用関係を結ばず、対等な立場で業務委託契約を結び、自営の形で業務を行うのが特徴です。言い換えると、「どんな業務を、いくらの報酬で、いつまでに行うか」という取り決め(業務委託契約)をして、その約束を守ることで報酬が発生する働き方と言えます。業務委託では、仕事を任せる側(委託者)に指揮命令権や労務管理の責任は発生しません。仕事を引き受ける側(受託者)は、契約で定められた業務を自らの責任と裁量で遂行することができる一方で、期限までに業務を遂行する必要があり、成果物に対する責任を負います。この点は契約社員や派遣社員との大きな違いと言えます。
業務委託契約と雇用契約の違い
業務委託と契約社員・派遣社員の違いとは?
業務委託と同じく「いつまで」という期間が決まった働き方として、契約社員や派遣社員があります。それぞれどのような違いがあるのか見てみましょう。
契約社員
契約社員は「雇用契約」に基づく働き方です。雇用契約とは雇用者と労働者の間に結ばれる契約で、労働者は雇用者の指揮命令のもと役務を提供する対価として、給与を受け取ることができます。雇用契約のうち、一定の契約期間が定められた形態を契約社員と言います。一方、正社員には期間の定めがありません。
有期の雇用契約を結ぶ場合、「1回の契約期間の上限は原則3年(特例を除く)」という規定が法律で定められています。ただし、雇用契約が通算で5年を超えて継続更新された場合は、契約社員から無期雇用契約(正社員)への転換を企業に要求することができます。
派遣社員
派遣社員は、労働者が派遣会社と結ぶ「雇用契約」と、派遣会社が派遣先企業と結ぶ「派遣契約」に基づく働き方です。派遣会社に雇用された労働者が、派遣先企業の指揮命令のもと業務に従事する形態を指します。給与の支払いや労務管理に関しては、雇用者である派遣会社が責任を持ちます。
派遣社員の契約期間も、契約社員と同様に「原則として上限3年」と定められています。一般的な派遣社員の場合、有期の雇用契約を派遣会社と結び、派遣先企業での就業期間が終了すると同時に、派遣会社との雇用契約も終了します。
業務委託
業務委託は、「業務委託契約」に基づく働き方です。仕事を依頼された受託者は、契約で定められた業務を自らの責任と裁量で遂行します。委託者側に指揮命令権や労務管理の責任は発生しません。受託者は、期限までに業務を遂行する必要があり、成果物に対する責任を負います。この点が契約社員や派遣社員との大きな違いと言えます。
なお、「業務委託契約」は民法をはじめとする日本の法律に定められているわけではありません。一般的に、民法上の委任(準委任)契約または請負契約の性質を有する契約と考えられています。
委任契約と請負契約の違いとは?
先述の通り、業務委託契約には委任(準委任)契約と請負契約の2種類があります。どちらの契約形態に該当するかは、受託者が責任を負う範囲によって異なります。
委任(準委任)契約
委任契約は仕事が完成したかどうかにかかわらず、成果を上げるために遂行した「業務そのもの」に報酬が支払われる契約です。成果物が求められない業務は委任契約に分類されます。民法における委任契約は、法律行為に関する事務を委任する契約(弁護士に訴訟代理を依頼する場合、不動産業者に土地の売却を依頼する場合など)を指し、それ以外の業務に関しては準委任契約と呼びます。
請負契約
請負契約は「成果」に対して報酬が支払われる契約です。委任契約と違い、請け負った業務を完了させるか、もしくは成果物を完成させる義務が発生します。
業務委託で独立することのメリット・デメリット
業務委託で仕事をするメリットやデメリットには、どのような点があるのか紹介します。
業務委託で独立することのメリット
自分の頑張り次第で収入を変えられる
自分の頑張り具合が直接収入に結びつくため、頑張りがいがあるというのが業務委託の良い点です。営業や新規開拓業務を積極的に行うことで、今すぐ収入にならなくても、近い将来には契約数が増えたり、新しい業務に結び付く可能性が高くなります。
複数の仕事を兼任できる
同時に複数の仕事を兼任できる点も、業務委託の魅力です。得意分野を主軸にしつつ、似たようなスキルを必要とする異なる分野の案件に挑戦することができます。例えば、ライターを中心に仕事をしつつ、校正や進捗管理など編集業務を行うことが可能です。
人によっては、日中は販売員として働き、空いた時間でプログラミング業務を請け負うなど、全く異なる分野の仕事に挑戦する場合もあります。
働き方を自分でコントロールできる
独立して仕事をするということは、自分で働き方をコントロールできるという良さもあります。特に、自分一人で業務を行う場合には、上司や同僚に気兼ねなく休憩時間や休暇の取得ができます。また、会社のように勤務時間が決まっていないので、自分のライフスタイルに合わせて、働きやすい時間帯を選ぶことも可能です。
業務委託で独立することのデメリット
一方で、業務委託で独立することによって生じるデメリットを紹介します。
安定収入を目指して仕事を探す必要がある
業務委託は、働く時間や業務量などを自分で設定できるため、業務量を減らしすぎると収入も減少することになります。また、仕事を自由に選べる点が魅力の業務委託ですが、仕事を選びすぎると依頼自体が来なくなる可能性もあるため、注意が必要です。
安定した収入を得るためには、目標とする収入に適した業務量を請け負う必要があります。
労働基準法では守られていない
企業からの業務委託は、実質個人事業主として受注することになるため、会社員とは異なり、労働基準法の適用外となります。会社で一部負担をしてもらっていた健康保険や厚生年金など、福利厚生面のサービスは一切受けられなくなります。個人事業主専用の福利厚生サービスはありますが、すべて自己負担となります。
請け負った仕事の責任は雇用より重い
請け負った仕事に関しては、すべて自己責任になります。会社員の場合は、会社単位で受注する業務がほとんどなので、万が一のことがあっても原則として会社が責任を負います。しかし、独立して働く場合は、すべて自分が責任を負わなければならないため、負う責任は重くなります。
自分で確定申告等の手続きをしなければならない
独立して業務委託で稼ぐ場合、報酬の管理だけでなく税金の管理も行わなければなりません。特に、年に一回の確定申告は必要書類を揃えたり、税務署への申告書類の作成をしたり、仕事以外に割く時間が増えます。企業に勤めている人は、特別な控除や給与以外の収入がない場合、企業が年末調整を行うため個別に確定申告を行う必要がありません。
しかし、自営業やフリーランスで働く人は、毎年確定申告を行うことが必要です。また、業務上屋号を取得する場合も、法務局で手続きをしなければなりません。加えて、屋号を取得している人も、確定申告が必要になるので忘れないようにしましょう。
業務委託を始める場合、業務委託契約書を取り交わすのは必須
業務委託を始める場合、業務委託契約書を取り交わすのが一般的です。
業務委託契約書の内容は法律等で定められておらず、原則として委託者・受託者双方の取り決めによって、業務内容や報酬を自由に決めることができます。そのため、お互いに不利な契約条件にならないように、契約書に関する基本知識を身につけておくことが大切です。
ネットで検索すると、無料でダウンロードできる業務委託契約書の雛型が沢山あります。雛形をそのまま使用するのではなく、業務内容に合わせた契約書を作成することが大切です。それぞれの業務でトラブルになりそうなポイントをよく検討し、可能な限り契約書に構成するようにしましょう。
そして業務委託契約書を作成する際には、双方にとって納得のいく内容が正確に明確に盛り込まれているか、その盛り込まれた内容が双方のリスク回避になっているかを確認することが大切です。その契約書の有効期限も双方同意のもとに明記されていることが必要です。どちらかが不当・不利になるような内容になることは避けなければなりません。
契約書は必ず2通作成し、同じものを共有するようにします。またのちに発行される注文書などでさらに業務や条件が追加される可能性もあるので、事前に確認を取り合って基本契約の段階で内容をできるだけ明確化してもらい入念な作成を進めることが重要になります。
事細かに作成された業務委託契約書は、互いに安心して業務を任せる、業務を遂行できるようになりますので、いらないかもしれないと思えるような項目でも、契約書に構成しておくようにしてください。
(参考)【起業・開業者必見!】業務委託契約書とは?基本項目や注意点を解説
まとめ
雇用された働き方を見直したいと思ったら、業務委託で独立を検討してみましょう。
業務委託は、自分で働く時間や業務量、仕事内容を決められるので、ライフスタイルやライフステージに合わせて、仕事を変更することも可能です。長く安定した収入を得るためには、目先の利益にばかり目を向けるのではなく、スキルアップを含めてさまざまな案件を受注するなどの工夫も必要です。
業務委託で独立を検討し始めたら、メリット・デメリットを理解して、記事内で紹介した案件を参考に、デメリットの少ない案件からスタートしてみましょう。