ドックトレーナーでの開業について解説

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ドッグトレーナーと聞くと、以前までは警察犬や盲導犬など働く犬のトレーニングという印象がありましたが、近年では家庭犬を取り巻く環境もかわり、家庭犬のトレーニングを行うドッグトレーナーの需要は増加傾向にあります。

今回は、ドックトレーナーでの開業について解説していきます。

ドッグトレーナーとは?

ドッグトレーナーは、飼い犬のしつけをする仕事です。トイレ・散歩・留守番などのマナーを教え、人と犬が一緒に暮らしていけるように指導していきます。また、ドッグトレーナーは、飼い主に対してのアドバイスも行います。いくらドッグトレーナーがしつけをしたとしても、その後、飼い主と犬の関係がうまくいかなければ、しつけの効果も半減してしまうからです。

このように、ドッグトレーナーは「自分で犬をしつけること」と、「飼い主が上手に犬をしつけることができるようにアドバイスすること」の2つの役割を持っています。なお、混同されがちですが警察犬や盲導犬といったいわゆる「使役犬」に対して特殊な訓練をする職業は、一般的に「犬の訓練士」と呼ばれます。

開業には「第一種動物取扱業」の届け出が必須

ドッグトレーナーが独立する場合、法人を設立したり、個人事業主として開業したりするなど、いくつか方法があります。どんな方法であれ、独立開業するためには自治体に「第一種動物取扱業」の届け出と、「動物取扱責任者」の選任を行う必要があります。

第一種動物取扱業にはいくつか種類があり、どのようなサービス内容であるかによって、届け出の種類が異なります。第一種動物取扱業は、以下の7項目に分類されています。

・販売(ペットショップなど生体を販売する場合)
・保管(ペットホテルやトリマー、ペットシッターなど一時的にペットを預かる場合)
・貸出し(動物のレンタルや動物タレント・モデルなど動物を貸し出す場合)
・訓練(ドッグトレーナーや動物の訓練・調教など動物を預かり訓練を行う場合)
・展示(動物園や水族館、動物サーカス、アニマルセラピーなど動物を見せる、ふれあいの提供がある場合)
・競りあっせん業(あっせん会場を設けて競りによって動物の売買を行う場合)
・譲受飼養業(老犬老猫ホームなど有償で動物を譲り受けて飼養する場合)

(参考)【環境省】第一種動物取扱業者の規制

ドッグトレーナーの場合、犬の訓練やしつけのみであれば、「訓練」の届け出が必要になります。それに加え、生体を販売する場合は「販売」、ペットを預かる場合は「保管」も必要になります。

また、動物取扱業の資格を取るには、自治体に申請を行う必要があります。ただ誰でも許可が出るわけではありません。資格の取得要件は各自治体によって差異があります。ただ共通の要件として以下のようなものが挙げられます。

・①申請を行う動物取扱業において半年以上の実務経験がある
・②ペット専門学校やスクールで1年以上学習をして卒業している
・③公平性や専門性が認められたペット資格を取得している

以前までは上記のどれか1つを満たしていれば大丈夫でしたが、2020年6月に動物愛護管理法が改正され、①が必須となりました。さらに②または③を満たす必要があります。従来よりもハードルが上がったので注意してください。また上記の要件を満たしていても、過去に動物愛護法など動物関連の法律に違反したことがある人は、資格の取得が認められないことがあります。詳しくは各自治体で確認して頂ければと思います。

資格には有効期限がある?

動物取扱業の資格には有効期限があります。一度取得したらそれで終わりではなく、事業を続けるためには定期的に更新しなければなりません。資格の有効期限は5年です。更新する際は各自治体の窓口で、第一種動物取扱業登録申請書や必要書類を提出します。手続きは各自治体によって異なるので、HP等で確認してください。

個人開業届or法人登記

個人事業主として行う場合、一般的な手続きとして、個人事業の場合、個人事業の開廃業等届出書、所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書、青色申告承認申請書等を納税地の所轄税務署へ提出します。また、個人事業開始申告書は事業所所在地の都道府県税事務所へ。詳しくは、最寄りの管轄行政に問い合わせが必要です。

法人として会社を設立する場合、定款作成、会社登記をし、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、法人設立届出書(地方税)などを提出します。

ドッグトレーナーになるために必要な資格とは?

現在ではドッグトレーナーになるために、国家資格は必要ありません。警察犬や盲導犬訓練士でも同様に、各団体・学校などが独自に制定しているのが現状です。日本ドッグトレーナー協会で、一般家庭犬に必要なしつけに重点を置き、ドッグトレーナーライセンスを認定しています。

(参考)日本ドッグトレーナー協会

とくにフリーで出張トレーニングなどを行う場合には、ライセンスを取得しておくようにしましょう。

ドッグトレーナーの独立開業方法

ドッグトレーナーの独立開業の道として、以下のようなものがあります。

自身で訓練所を運営

犬舎で数年間住み込みをしながら学び、十分な知識と経験を習得した上で独立開業する方法です。独立開業の方法としてはオーソドックな道です。出身犬舎の一門として独立をすれば、協力や支援が受けられます。そのため完全に個人で開業するよりも、安定した運営が図れます。

ただし、自身で訓練所を運営する場合には、多額の資金が必要です。住み込みで働いている間にしっかりと資金を貯めておいてください。

職業犬の育成

警察犬の中には警察が直接飼育する直轄警察犬の他に、嘱託警察犬というものがいます。これは民間団体に委託されて管理や育成が行われる警察犬です。実は直轄警察犬よりも、嘱託警察犬の方が圧倒的に数が多いです。

そこで民間団体として警察犬や災害救助犬を育成、管理する道もあります。時には犬と一緒に現地へ行って業務を行います。大変ですがやりがいのある仕事です。

ペットショップと契約

ペットショップと契約し、犬のしつけ教室を開催する方法もあります。近年はペットショップのサービスで犬のしつけ教室を行う機会も増えています。そこで土日に活動できるフリーランスのドッグトレーナーが求められています。

宣伝はペットショップ側が行ってくれるので、ドッグトレーナーは当日の運営を行うだけです。集客に労力を割かなくてもいいというメリットがあります。複数のペットショップと契約することで、収入の安定を図れます。

家庭訪問型のトレーナー

各家庭に訪問して、マンツーマンで犬のしつけを行う出張ドッグトレーナーです。独立開業が最もしやすく、フリーランスの働き方では非常に多いです。ペットショップに比べれば収入も多いですが、宣伝活動や顧客の獲得は、全て自分で行う必要があります。

ドッグトレーナーとしての手腕はもちろんのこと、飼い主と良好な人間関係を築けるコミュニケーション能力や対人スキルも求められます。

独立して事業を継続していく為には集客が重要!

独立して事業を継続していく為には集客が重要になってきます。集客方法の工夫は、新規顧客やリピーター客を増やすためには欠かせません。どのような集客をすればいいのか、以下ご紹介します。

・ウェブサイトやブログ、ソーシャルメディアの準備
・チラシの配布
・地域の情報誌に広告を出す

それぞれについて、説明していきます。

ウェブサイトやブログ、ソーシャルメディアの活用

ウェブサイトを開設して、サービス内容を紹介してみましょう。また、ブログでドッグトレーナーとしての想いを発信することも大切です。飼い主が愛犬を預けるときに安心して任せられるよう、ドッグトレーナーの人間性が垣間見れる情報発信は集客につながると期待できます。

また、FacebookやTwitter、Instagramなどのソーシャルメディアは、無料でさまざまな機能を使えます。ぜひ活用してみてください。

チラシの配布

オフラインでの集客も大切です。その一つとして挙げられるのが、チラシの配布です。人が集まりやすい駅や公園があれば、その近辺でチラシの配布を行うと良いでしょう。さらに、ペットショップや動物病院などペット関連の場所にお願いして、チラシを置かせてもらうのもオススメです。

地域の情報誌に広告を出す

その地域をターゲットに発行される情報誌に広告を出す方法もあります。読者は地元の住人なので、効果的に宣伝ができるという利点があります。広告の費用も3万~5万円なので、比較的小さな負担で宣伝ができます。

独立開業にはどのくらいの費用がかかるのか?

ドッグトレーナーで開業する場合、場所を設けて開業するか出張型で開業するかによって費用は大きく異なります。物件を取得して開業する場合、物件取得費や内外装工事費用、什器備品などが必要です。犬が利用する施設なので、床の素材やエアコンなどにはこだわりを持ちたいところです。あとは、クレートやケージなどを準備する必要があります。

30万円の物件を賃貸した場合、物件の取得費だけで240万円~420万円程度かかります。これに内外装工事費や備品等が加わるので、500万円~1,000万円の費用は必要となります。一方、出張トレーニングの場合には、トレーニングに使う備品類をそろえておけば後は、身体ひとつで始められます。

移動手段として車を準備する場合は、車の購入費用なども必要ですが、毎回、駐車場を探す必要があるというデメリットがあります。ご自身の拠点からどのくらいの範囲までを対象とするかという点を事前に確認しておく必要があります。

開業資金をどこから調達すればいいのか?

開業するにあたり、自己資金、いわゆる貯金だけで開業できればいいですが、なかなか日々の生活費なども考えると難しい所です。では自己資金以外でどこから調達すればいいのでしょうか?

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。

一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。

創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。

信用保証付の融資

「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。

手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。

親族、友人・知人からの借入

親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。

その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。

まとめ

近年では、犬を飼うことを趣味感覚ではじめる人が多いのが現状です。その結果、幼年時にきちんとしつけをせずに甘やかせて育てたり、逆に虐待したりする人が後を絶ちません。そして手がつけられないような性格に育ってしまったのを犬の責任にして、保健所に持っていくような人も大勢います。そういう社会を少しでも変えていくのが、ドッグトレーナーのような正しい知識を持ち、犬を心から愛する人たちです。

大変意義のあり、需要もある仕事でもありますので、独立を検討する際にはしっかりとした知識と準備をしていきましょう。

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