今回は、原型師での開業について解説していきます。
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原型師とは?
原型師はモデラーとも呼ばれ、工業製品の鋳型(いがた)やフィギュア、玩具を造る際に模型となる原型を制作する仕事です。
一般的には、玩具やフィギア、ガレージキットの原型を造形する人も含み、作業は手で行う場合と、パソコンを使ってデジタルで行う場合があります。特別な資格が求められるわけではありませんが、造形の技術力は必須です。
フィギュア原型師を目指すのであれば、フィギュア造形の専門学校で学んでから、フィギュアメーカーやフィギュア制作会社へ就職する流れが一般的といえるでしょう。フリーランスで働く人も多く、個人の実力や制作内容、サイズにより収入には大きく幅が出ます。
手作業での制作は時間がかかるため、今後はCGや3Dプリンターを使ってモデリングを行う「デジタル造形師」が増加するものと考えられています。
資格
原型師には、取得しておかなければならない資格や試験はありませんが、技術職であるため、資格よりも、クライアントの企画を再現できる実力を持っていることが重要とされます。また、日々進化するデジタル技術に対応できる知識も必要でしょう。
原型師として優れた模型を作るためには、日頃から練習を積み、実力やセンスを磨いておくことが何より大切です。ただし、デザイン系の資格やデジタル系の資格が、原型師の実務に役立つ場合もあります。原型師に関連する資格としては、以下のようなものが挙げられます。
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・CGクリエイター検定: デザインやCG作成、映像制作における知識・技術を測る検定
・Adobe認定アソシエイト:アドビシステム社のデザインソフトにおける知識・技術を測る検定
・色彩検定:色彩の効果や配色、利用などについての知識を測る検定
・カラーコーディネーター検定:ビジネルに役立つ色の性質や特性に関する知識を測る検定
原型師はデジタルで造形作業を行うことが多いため、CG系の資格は実務に生かせます。また、色彩見本まで手掛ける場合には、色彩検定やカラーコーディネーター など色彩系の資格も役立つでしょう。
キャリアを積んでフリーランスとして独立
フリーランスの原型師として活動する方法もあります。その場合は、メーカーなどから外注を受け作業を行うことになりますが、そのためには自らの営業活動や人脈が必要でしょう。
ただし、優れた実力があれば、人気原型師になれる可能性もあります。フリーランス になるのは、メーカーや制作会社で経験を積んだ原型師が多いようです。
開業する場合の手続き
個人事業主として行う場合、一般的な手続きとして、個人事業の場合、個人事業の開廃業等届出書、所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書、青色申告承認申請書等を納税地の所轄税務署へ提出します。また、個人事業開始申告書は事業所所在地の都道府県税事務所へ。詳しくは、最寄りの管轄行政に問い合わせが必要です。
法人として会社を設立する場合、定款作成、会社登記をし、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、法人設立届出書(地方税)などを提出します。
フィギュアの原型を作る工程
大量生産されるフィギュアの原型を作る工程には以下2種類あります。
手原型
粘土やパテなどを使用して手作業で原型を作ります。手先の器用さが問われる作業です。
パソコン造形
パソコンを使って原型を作っていく作業です。近年では3Dプリンタによる原型製作も可能になっており、そのためのデータを作成する仕事も含まれます。
フィギュアの原型を作った後には色彩を決めるペイントマスターや仕上げを行うフィニッシャーといった人たちによってフィギュアが完成されますが、これらの仕事を原型師(造形師)が兼任することもあります。
まとめ
近年、日本のアニメやゲームが世界的な評価を受け、その市場を拡大しています。そして、それらの人気に伴いグッズが販売され、フィギュア製品の売上も好調子にあります。そのため、フィギュア製品の元を手掛ける原型師の仕事も、将来性が見込めるでしょう。
1990年代は「エヴァンゲリオン」などのガレージキットが主流でしたが、現在は「涼宮ハルヒの憂鬱」「初音ミク」「ねんどろいど」など塗装を含めた完成品が増加しています。体力勝負の「手原型」は納期を急ぐにも限界があり、今後はCGや3Dプリンターを使ってモデリングを行う「デジタル造形師」が増加するでしょう。