「支払調書」と言葉を聞いてもあまり馴染みがないという方がほとんどではないでしょうか。
企業などが従業員に給与を支払った際に発行するのが源泉徴収票ですが、支払調書も報酬を支払った際に発行する書類です。源泉徴収票に似ていますが、少し違うところがあります。
そこで今回は、支払調書についてや源泉徴収票との違いを解説していきます。
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支払調書とは?
支払調書とは、税務署に提出が義務付けられている法定調書の一種で、報酬の支払者である会社や個人事業主が「誰に、どのような内容で、年間いくら支払ったか」を税務署に報告し、支払いを受けた人が正しく申告をしたかどうかを確認するための書類になります。
提出する際は、以下の6種類の法定調書をまとめた「法定調書合計表」を税務署へ提出します。
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・給与所得の源泉徴収票
- 外交員、集金人、電力量計の検針人及びプロボクサー等の報酬・料金、バー、キャバレー等のホステス等の報酬・料金、広告宣伝のための賞金については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの
- 馬主に支払う競馬の賞金については、その年中の1回の支払賞金額が75万円を超えるものの支払を受けた者に係るその年中の全ての支払金額
- プロ野球の選手などに支払う報酬、契約金については、その年中の同一人に対する支払金額の合計額が5万円を超えるもの
- 弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が5万円を超えるもの
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの
・退職所得の源泉徴収票
・報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
・不動産の使用料等の支払調書
・不動産等の譲受けの対価の支払調書
・不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書 など
会社が支払調書を提出することで、税務署はその企業のお金の流れを正確に調べることができるようになり、法人税や所得税が正しい金額で申告されているかどうかを確認することができるのです。
また法定調書には支払調書以外にも、租税特別措置法で規定されている特定口座年間取引報告書、財産債務調書や信託の計算書、保険契約者などの異動に関する調書といった内容が存在します。
「支払調書」の目的について
支払調書は、特定の支払いを行った事業者がどのような支払いをしたのか税務署に示すために作成します。その書類を税務署がチェックし、正しい申告が行われているかどうかを確認していきます。
支払いを受けたとしても、申告しなければ問題になることはないと考える人もいるかもしれませんが、脱税行為になるので用心しなければいけません。支払いをした側が税務署に対して支払調書を提出すれば、その段階で支払いの事実が確認できるからです。
支払調書は源泉徴収票とどこが違うのか?
法定調書とは税務署に提出が義務づけられている書類のことですが、支払調書が源泉徴収票と違うのは、報酬を支払った人に対して発行をする義務がないという点です。
源泉徴収票は、給与を支払った人に対して必ず発行しなければならないのに対して、支払調書は、報酬を支払った人に対して発行をする法的な義務がありません。年始に源泉徴収義務者である取引先から個人事業主に送られてくる支払調書は、今までの商慣習や所得税の確定申告をするときに大変だろうなどの理由から、企業が厚意で発行しているものなのです。そのため、発行義務のない支払調書は、確定申告書に添付する必要がないのです。
ちなみに、従業員に発行義務のある源泉徴収票は、所得税の確定申告書に添付しなければなりませんでしたが、税制改正により、平成31年(2019年)4月1日以降に提出する確定申告書へは、添付不要となりました。同時に5年間保存も不要になりました。
支払調書が必要なのはこんな時
支払調書は、報酬の支払い者が税務署に提出する書類ですが、全ての取引について必ず提出しないといけない書類ではありません。外交員や弁護士、税理士などのへの報酬や契約金、作家や画家に対する原稿料や画料などで規定を超える金額を支払った場合に提出しなければなりません。
(参考)【国税庁】「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等
ただし、支払調書の提出が必要なのは「源泉徴収義務者」のみです。源泉徴収義務者とは、給与や報酬、料金を支払う際、支払金額から所得税及び復興特別所得税を差し引き、国に納税する義務を負う人のことです。所得税及び復興特別所得税を差し引いて、国に納める義務のある者を源泉徴収義務者といいます。
法人の場合は自動的に源泉徴収義務者となり、個人事業主の場合は従業員を雇って給与を支払った場合に源泉徴収義務が発生します。そのため、従業員を雇わずに自分一人で仕事をしている個人事業主であれば、源泉徴収義務者には該当しないため支払調書を提出する義務もありません。
なお、法人へ支払いをする場合、源泉徴収の必要はありませんが支払調書の提出は必要となります。
支払調書の提出方法
作成した支払調書および法定調書は、以下のいずれかの方法で管轄税務署に提出します。
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・書面で提出
・CD、DVDなどの光ディスクで提出
・e-Tax(国税電子申告・納税システム)で提出
書面で提出
規定の書式に基づいて作成した支払調書を書面で提出する場合、事前の申請や申し込みは必要ありません。作成した書類を税務署宛てに郵送もしくは持参します。
期限直前ですと、窓口が混雑したり不備があった際に修正が間に合わなかったりする恐れがあります。書面で提出する際は、必ず余裕を持って準備しておきましょう。なお郵送の場合、消印の日付が提出期限内であれば問題ありません。
CD、DVDなどの光ディスクで提出
支払調書をCDやDVDなどの光ディスクで提出する場合、事前に税務署への届出が必要です。支払調書を光ディスクなどで提出しようとする日の2か月前までに、所轄の税務署長宛てに「支払調書等の光ディスク等による提出承認申請書」を提出します。
提出の日から2か月を経過する日までに何らかの通知がなければ、2か月を経過する日に承認があったものと見なされます。
e-Tax(国税電子申告・納税システム)で提出
法定調書の種類によっては、提出枚数が膨大な枚数に及ぶ場合もあるでしょう。当該法定調書の提出枚数が1,000枚以上のものは、インターネットを利用したe-Taxを使用するか、光ディスクなどで提出しなければなりません。
なお現行は1,000枚以上ですが、令和3年1月1日以降に提出すべき法定調書については、提出義務の判定基準が100枚以上に引き下げられます。
支払調書の作成方法
支払調書は以下、国税庁のホームぺージからフォーマットをダウンロードできます。
(参考)【国税庁】「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」(同合計表)
作成枚数が多い場合は、エクセルを活用する方法もあります。毎年支払いを行っている対象者がいれば、区分や細目などの過年度分のデータが参考になります。出来れば会計ソフトを活用するなどでして、できるだけ入力や作成の手間を省けるようにするのがおすすめです。
支払調書の提出期限
支払調書は原則として、報酬を支払った翌年の1月31日までに、支払者の所轄税務署へ提出しなければいけません。また、税務署へ提出する際は、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を作成・添付する必要があります。法定調書合計表とは、法定調書の種類ごとに支払金額や源泉徴収税額を集計したものです。
そして提出が遅れたとしても基本、罰則はありません。しかし税務署は、法定調書合計表を納税者との対応の基礎資料にしますので、決して虚偽の申請は行わずに正直に記載しましょう。偽りの申請があった場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
まとめ
支払調書は、法律で提出が義務付けられている法定調書のひとつです。企業が従業員に対して支払った額を源泉徴収票にまとめるのと同様に、会社や個人事業主に報酬などを支払った場合についても、正確に取りまとめて税務署に報告する必要があります。
分からない場合には、専門家(税理士など)に相談するといいでしょう。