世の中にはさまざまな職業がある中で、「士業」と呼ばれる専門的な資格職業があることはよく知られています。例えば「弁護士」「税理士」「司法書士」などが代表的ですが、そのほかにも様々な種類の「士業」が存在します。
そこで今回は、士業の種類やその仕事内容についてご紹介していきます。
目次
そもそも士業とは?
士業(しぎょう)とは、たとえば弁護士や税理士、司法書士など「○○士」といったように、「士」という名称が語尾に付く専門性の高い職業の俗称を言います。士業と呼ばれる職業の大半は、資格を持っていないと開業できず、都道府県もしくは監督官庁に登録する必要もあります。また、多くの場合で実務経験を証明する事業者の書面か、もしくは実務経験が必須の上位資格が必要となっています。
士業の資格には、「国家資格」と「民間資格」がありますが、そのうち「国家資格」に関しては、資格の認定が法的に担保されると同時に、独占性についても多くが法的に担保されます。一方「民間資格」については、独占性についての法令上の担保はなく、「一定の専門性」を持つことが認められるのみとなっています。
また士業は「8士業」と「10士業」に分類されます。以下で8士業・10士業について詳しくご紹介していきます。
8士業について
8士業は、戸籍謄本や住民票など公的書類に関して職務上請求を用いて請求する権限が与えられています。そのため、委任状がなくても第三者の戸籍謄本や住民票を請求することができます。なお、8士業はいずれも専門的業務となる国家資格です。
名称や主な業務については以下になります。
弁護士
民事や刑事など訴訟事件の手続きや解決など、法律に関するトラブルへの対処が主な業務です。
弁理士
特許や実用新案、意匠、商標など、国内外における知的財産権の出願や取得手続きを担うのが主な業務です。また、関税の認定に関する手続きの代理も行います。
司法書士
不動産取得や会社設立時の登記申請書類の作成および裁判所へ提出する書類作成が主な業務です。また、法務大臣の認定を受けている司法書士であれば、140万円以下の民事訴訟の手続きを行うことができます。
行政書士
官公署に提出する許認可申請の書類作成や事実証明に関する書類作成、権利義務に係わる書類作成など、行政書士の業務は多岐にわたるのが特徴的です。
税理士
確定申告など税務書類の作成や税務調査の立ち合い、財務書類の作成、会計帳簿の記帳代理などが主な業務。税務に関する相談や代理などは、税理士の独占業務です。
社会保険労務士
行政機関に提出する社会保険に関する書類の作成や申請代行が主な業務です。また、人事労務管理のコンサルティングなども行います。雇用や社会保険、労働問題、公的年金など社労士の業務は多岐にわたります。
土地家屋調査士
不動産の表示に関する登記につき、必要な土地および家屋に関する調査または測量を行うのが主な業務です。不動産登記の申請代行や審査請求の手続き代理も行います。
海事代理士
船舶の登記や登録、検査をはじめ、船舶免許の取得、更新の申請代行などが主な業務です。
10士業について
続いて10士業についてですが、上記でご紹介した8士業にある海事代理士を除き、「公認会計士」「中小企業診断士」「不動産鑑定士」の3つを加えたものが10士業に分類されます。
公認会計士
個人事業主をはじめ企業における監査や税務、コンサルティングが主な業務です。特に監査に関しては公認会計士のみが行える独占業務です。
中小企業診断士
中小企業の経営に関する経営診断や助言を行う、いわゆるコンサルティングが主な業務です。
不動産鑑定士
不動産に対する鑑定評価が主な業務で、不動産の価値を求める鑑定評価は、国から認められている独占業務です。また、不動産に関するコンサルティングも業務の一環です。
10士業は、商工会議所の相談窓口に設置されていることが多く、個人や中小企業と密接した業務が対象となっています。もちろん3業種すべてが国家資格です。
その他士業
今回ご紹介した「8士業」「10士業」以外にも士業はあります。よく見かける士業を以下でご紹介します。
一級建築士
一級建築士は、国土交通大臣から認可された国家資格になります。一級建築士の職務には、建物の設計のほか、工事の監理についても含まれます。このうち設計については、「構造設計」「設備設計」「意匠設計」の3つを担います。「構造設計」は建物の安全性を確保するための設計のことで、「設備設計」は室内環境に関する設備の設計になります。「意匠設計」は、建物のデザインに関する設計です。「二級建築士」との違いは、設計できる建物に制限がないという点になります。
気象予報士
観測データやアメダス、気象レーダーなど、気象庁から提供されるそれぞれの情報を分析し、気温や湿度、降水確率など天気について予想するのが主な仕事です。ちなみに気象予報士になるための国家資格は非常に難しいとされ、合格率はおよそ5%です。
自動車整備士
自動車の点検整備、分解整備、板金塗装などを行うのが自動車整備士の主な業務です。整備士には3級・2級・1級・特殊の4種類の資格があり、いずれも国家資格です。なお、資格によって行える業務内容がそれぞれ異なります。
ファイナンシャル・プランニング技能士
「FP技能士」とも呼ばれますが、こちらは「職業能力開発促進法」に基づく国家資格となっています。ファイナンシャル・プランニング技能士の職務は、顧客の資産に応じた貯蓄や投資などについての、プランの立案や相談といったものです。顧客ごとに適した総合的な資産設計や、ライフプランのアドバイスを行うのが仕事になります。
士のつく仕事一覧
()内の法律はその士業を規定する法律になります。
弁護士(弁護士法)、公認会計士(公認会計士法)、税理士(税理士法)、計理士(計理士の名称の使用に関する法律及び旧計理士法)、弁理士(弁理士法)、司法書士(司法書士法)、行政書士(行政書士法)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法)、海事代理士(海事代理士法)、建築士(建築士法)、測量士(測量法5章)、技術士(技術士法)、計量士(計量法7章1節)、不動産鑑定士(不動産の鑑定評価に関する法律)、歯科技工士(歯科技工士法)、社会保険労務士(社会保険労務士法)
歯科衛生士(歯科衛生士法)、自動車整備士(道路運送車両法55)、作業環境測定士(作業環境測定法2章1節)、栄養士(栄養士法)、理学療法士、作業療法士(理学療法士及び作業療法士法)、視能訓練士(視能訓練士法)、臨床工学技士(臨床工学技士法)、救急救命士(救急救命士法)、
まとめ
いかがでしたでしょうか?
士業には、国家資格や民間資格など、様々な種類があります。それぞれの士業が何が出来るのかをしっかり把握しておきましょう。