軽貨物運送での開業について解説~必要手続きや開業資金等~

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軽貨物運送(正式名称「貨物軽自動車運送」)は、インターネット通販等の発展とともに宅配便の需要が拡大したことなどから注目が集まってきている事業です。

今回は、軽貨物運送での開業について解説していきます。

軽貨物運送開業に必要な「黒ナンバー」とは?

軽貨物運送業者として仕事をする場合、黒ナンバーの取得が必須です。 軽貨物運送は、貨物自動車運送事業法第2条に定められている「他人の需要に応じ有償で自動車を使用して貨物を運送する事業」に当たりますので、 運輸局に対し軽貨物開業の届け出を行う際、併せて手続きしておきましょう。営業用の車両なので自家用車と比較して自動車重量税や固定資産税などが安くなるというメリットもあります。

開業タイプ

軽貨物運送の開業タイプは主に「個人開業型」「フランチャイズ型」になります。

個人開業型

軽貨物運送は、軽貨物車さえ用意すれば自宅で一人でも開業が可能になります。営業や宣伝など、顧客獲得のための活動は自ら行う必要がありますが、営業時間を自分で決められるというメリットもあります。近年では、上述した通り、アマゾンと直接契約のできる「Amazon Flex」や配送マッチングサービス「PickGo」など、個人開業事業者に向けたサービスが複数立ち上がっているため、こうした新規サービス情報も積極的に仕入れておきたい所です。

フランチャイズ型

フランチャイズ型は、他の業種と同様、ロイヤリティを支払う必要があるという金銭的なデメリットはありますが、開業サポートやノウハウを学ぶことができるというメリットがあります。また、軽貨物運送では仕事を回してもらえる場合もあるため、その場合は営業・宣伝費が節約できることもメリットとなります。

軽貨物運送の開業に必要な条件

軽貨物運送の開業には、必要な条件があります。とはいえ特別なことはなく、居住していて営業用の車が所有できていることが証明できればよいのです。

営業所

営業の拠点となる場所は個人で始めるのであれば、わざわざ店舗を構えなくても自宅でも可能です。

車庫

原則として車庫は営業所に併設することとなっていますが、併設できない場合は営業所からの距離が2km以内で、事業で使用する車両すべてが収容できることとなっており、1台で始めるのであれば1台収容できれば良いとされています。

車両

車両は、軽貨物車両が1台以上あればよく、車両の構造は原則として乗車定員は2名以下ですが、行灯、メーターなどタクシーと間違われる装備は施さないようにします。また、車両の両側面に「〇✕運送」などと事業者名を記すことになります。

休憩・睡眠施設

運送事業において営業所に併設されることとされる休憩・睡眠施設は、個人で始めるのであれば自宅の一室を指定することで可能です。

運行管理体制

事業の適切な運営に必要な管理体制が整備されていることは、他の貨物事業と変わりませんが、運行管理者資格は必須ではないこととなっています。

損害賠償能力

損害賠償能力とは、万が一事故を起こした場合に十分に損害賠償できる能力のことです。リスクを抑えるためにも自賠責保険の加入だけでなく、賠責保険を超える自損害賠償をカバーするため一般自動車損害保険(任意保険)の締結が強く推奨されています。

運送約款、運送料金表

貨物事業では軽自動車であっても、運送料金や運送業務における責任の範囲、事故が起きた際の措置などを定めた約款が必要で、荷主が不利益を被る恐れがないような規定にする必要があります。ただし、国土交通省が定めた標準約款を使用する場合、提出は不要です。また、適正な運送料金を定めた運送料金表も必要で、料金の目安は各運輸支局に参考となる見本が示されています。

軽貨物運送事業の開業方法や流れについて

では実際に、軽貨物開業する際の方法や流れについて説明していきます。

1.個人事業主として開業手続きをする

個人事業主として行う場合、一般的な手続きとして、個人事業の場合、個人事業の開廃業等届出書、所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書、青色申告承認申請書等を納税地の所轄税務署へ提出します。また、個人事業開始申告書は事業所所在地の都道府県税事務所へ。詳しくは、最寄りの管轄行政に問い合わせが必要です。

ちなみに法人として会社を設立する場合、定款作成、会社登記をし、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、法人設立届出書(地方税)などを提出します。

2.軽貨物車両を用意する

軽貨物運送は比較的小さな荷物を運送するため、軽自動車で申請可能となっています。したがって、軽トラや軽バン、バイク(125cc以上)などがあれば申請できます。

3.届出や必要書類提出

必要書類については、以下になります。

・貨物軽自動車運送事業経営届出書
貨物軽自動車運送事業経営届出書は軽貨物運送業をスタートさせる際、運輸局への届け出が義務付けられている書類です。代表者名や軽貨物車を所有しているという事実、営業所や車庫など組織運営に必要な設備を有しているという事実をこの書類で証明します。この書類は提出用と控え用に2部揃えましょう。

・事業用自動車等連絡書
事業用自動車等連絡書は、運送業者が輸送、監査部門における申請義務を終えていることを証明する書類です。こちらの書類がないと営業用の車のナンバー(黒ナンバーや緑ナンバー、「わ」ナンバー)が取得できませんので、注意してください。

・車検証
車検証は事業用自動車等連絡書と一緒に提出する書類ですので、忘れずに用意してください。

・運賃料金表
運賃料金表は、貨物を運搬する際の料金表です。正式名称は「運賃料金設定届出書」という名前の書類で、こちらも運輸局に提出する書類ですので準備しましょう。

4.仕事を始める

上記の手続きが完了したら、腫れて軽貨物運送事業者として開業したことになります。

開業にはいくらくらいかかるのか?

個人事業主で開業する場合、0円からでもスタートできます。 既に最低限の設備が整っている場合、新たに借入をする必要もありません。 1から揃える場合は、100~300万円程度の初期投資を見込んでおきましょう。

開業する上で欠かせないものは、「運転免許証」「車両」「車庫」「営業所」「自賠責保険」「任意保険」の5つです。 特に車両に関しては、軽バンなど車種がある程度定められている他、荷物を積み下ろしするドアの間口も細かく決められています。 規定に合った車を保有していない場合、改造したり買い直したりする必要もでてきます。

開業後にかかる費用は?

軽貨物運送では、個人事業となるためあらゆる経費は自己負担となります。そのため、仕事で得る報酬だけでなく、支出もしっかりと管理する必要があります。

車両関連費用

車両購入費は軽貨物運送の開業にかかる費用の中では最も大きいので、事業をスタートする時には、新車よりも中古の方が初期費用を抑えることができるのでおすすめです。また、営業用の「黒ナンバー」プレート代は専用の提出用紙代を含めて1,500円程度かかります。

さらに、自賠責保険、任意保険の保険料、そして車検代や車両の整備費・維持費は長く仕事を続けるため、丁寧にメンテナンスする必要があります。車両にトラブルがあると仕事を受けられない場合や、運送会社によっては欠車扱いとなり、損害賠償を請求されるケースもあるので重要です。

ガソリン代、交通費

運送にかかるガソリン代や高速道路の利用料金などは、必要経費のうちでも多くの割合を占める経費です。高速道路の料金は立て替えた後に支給される場合が多く、長距離での仕事の場合、有料道路料金が多くかかるため依頼を受ける際には計算しておくとよいでしょう。

また、利益率に大きく影響するためガソリンの価格変動はチェックしておきましょう。

社会保険料

軽貨物運送は会社勤めのサラリーマンと異なり個人事業主となるため、健康保険、社会保険、国民年金などは個人で加入することになります。

開業資金をどこから調達すればいいのか?

開業するにあたり、自己資金、いわゆる貯金だけで開業できればいいですが、なかなか日々の生活費なども考えると難しい所です。では自己資金以外でどこから調達すればいいのでしょうか?

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。

一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。

創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。

信用保証付の融資

「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。

手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。

親族、友人・知人からの借入

親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。

その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。

軽貨物運送関連のサービスを事前に調査しておこう!

宅配便の取扱数の増加により、軽貨物運送は多くの事業者が参入しはじめています。それに伴い、軽貨物運送の開業に関連するさまざまなサービスも生まれています。

例えば、DAPが運営する「手続きドットコム軽貨物」は、軽貨物運送届出に必要な書類作成を簡略に行うことができます。アマゾンジャパンは、運送事業者と直接業務委託契約を結ぶ「Amazon Flex」を運営しています。CBcloudの運営する「PickGo」は、荷主とドライバーをマッチングするWebサービスです。

開業にあたっては、こうした各種サービスについても事前に調査し、事業計画に組み込んでおきましょう。

まとめ

軽貨物運送は個人でも効率的に利益を上げることができるので、とても人気の高いビジネスモデルです。サラリーマンと比べて時間に融通のきく事業ですから、自分のライフスタイルを重視したい人たちからは特に支持されています。

しかし、軽貨物運送業で会社設立をするには役所への届け出など、所定の手続きを踏んでいく必要がありますので、しっかりと事前の準備をしましょう。

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