個人事業主本人が加入できる社会保険について解説

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個人事業主になると、会社員時代とは社会保険の種類が変わります。個人事業主は、手続きを自分でしなければならないため、自分自身で社会保険のこともしっかり把握していなければいけません。

また、会社員時代には加入していたのに個人事業主になると入れない保険もあります。これは働き方が変わったことによるものですが、こうした変化も理解した上で個人事業主として社会保険とその保障を利用することが必要です。

そこで今回は、個人事業主本人が加入できる社会保険について解説していきます。

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そもそも社会保険制度とは?

社会保険制度とは、病気やケガ、失業、労働災害などに備え、国や自治体、雇用主や雇用者が一体となって支える公的保険制度のことです。一般的に、健康保険(医療保険)・介護保険・年金保険・雇用保険・労災保険などの種類があります。

個人事業主の方でも、この社会保険制度に加入することができます。また、従業員を雇用した際には、事業所としての加入が求められる場合があります。

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個人事業主本人が加入できる社会保険とは?

個人事業主の方が社会保険に加入する場合、まず考えるべきは健康保険・介護保険・年金保険の3種類になります。雇用保険と労災保険は一般に「労働保険」と呼ばれ、主として雇用される側の方が対象となるためです。

ただし、雇用保険や労災保険でも一部個人事業主が加入できるケースもあります。そこで、健康保険・介護保険・年金保険・雇用保険・雇用保険・労災保険のそれぞれについて、個人事業主の視点から制度別に解説していきます。

健康保険

個人事業主の方が健康保険に加入する場合、以下のようなケースが想定されます。

・国民健康保険へ加入
・従事する業種の健康保険組合(建築・土木、士業の方など)へ加入
・前会社における健康保険の任意継続や配偶者などの扶養家族となる

基本的に、個人事業主の方が加入するのは「国民健康保険」です。国民健康保険は各自治体が運営主体となっている保険で、個人事業主や農業・漁業を営む方、アルバイトの方など、会社の健康保険に加入していない方が加入します。

国民健康保険の保険料は、世帯ごとの加入者数や収入、年齢などを基に算出されます。会社の健康保険と異なり、国民健康保険には「扶養」の概念がありません。そのため、配偶者などの家族がいる場合には、個人事業主本人とともに家族の分の保険料も支払います。

また、建築・土木や士業など一部の業種では、業種ごとに健康保険組合が設立されているケースがあります。その場合には、個人事業主であっても健康保険に加入することが可能です。

さらに、会社を退職して個人事業主となった場合には、前会社で加入していた健康保険を任意継続することもできます。任意継続が可能な期間は2年間です。会社に所属していたときと異なり保険料は全額負担となりますが、国民健康保険料より安くなるケースもあります。

一旦任意継続を選択すると、それから2年間は国民健康保険に変えたい、家族の扶養に入りたい、といった理由で変更することはできません。変更できるのは原則として健康保険組合がある会社に再就職した時のみです。

したがって、任意継続を選択する際は、任意継続後の保険料負担額と国民健康保険料を必ず比較して決めるようにしてください。そのほか、配偶者など家族の方が健康保険に加入しており、個人事業主本人の方が扶養範囲に収まる場合には、扶養家族となることも可能です。

介護保険

介護保険は、全国の市区町村が保険者となり、該当する地域に居住する40歳以上の方を被保険者(加入者)とする保険です。したがって、個人事業主の方も、40歳以上となれば介護保険に加入し、保険料を支払います。

介護保険料の支払いは、年齢によって異なります。40歳以上65歳未満の方の場合、40歳以上の世帯全員分の介護保険料を、国民健康保険料を支払う際にあわせて支払います。

65歳以上の方の場合は、年金を受給しているか否かで支払方法に違いがあります。年金を受給している方の場合は、年金より差し引かれるかたちで介護保険料を支払います。年金を受給していない場合には、納付書や口座振替などで自ら納付します。

年金保険

個人事業主の方が加入する年金保険は、「国民年金」です。国民年金は日本在住の20歳以上60歳未満の方は全員加入義務のある年金で、以下の3つの区分があります。

・第1号被保険者:自営業者や農業者とその家族、学生、無職の人など、第2号被保険者や第3号被保険者ではない方
・第2号被保険者:会社員や公務員など、厚生年金・共済の加入者
・第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者(年収130万円未満の方)

個人事業主の方は、基本的に第1号被保険者に該当し、毎月16,540円(令和2年度)の保険料を支払います。国民年金には前納割引制度があるため、まとめて前払いをすると割引が適用されます。定額保険料に付加保険料を上乗せすることにより、将来の年金額を増やすこともできます。

また、国民年金と厚生年金の差をなくすことを目的とする「国民年金基金」という公的年金制度もあります。そのほか、企業年金に相当する私的年金として「確定拠出年金」に加入することも可能です。

雇用保険

個人事業主の方は、雇用保険に加入することはできません。これは、雇用保険が雇用されている人を保護するための制度であり、自ら事業を行っている個人事業主本人は対象外となってしまうためです。

なお、個人事業主と同居している親族も、原則として雇用保険に加入できないことになっています。ただし、事業主の指揮命令に従っていることが明確であることなど、一定の条件を満たす場合には、雇用保険に加入できるケースがあります。

労災保険

雇用保険と同様に、原則として個人事業主の方は労災保険に加入できません。労災保険は労働者の業務中のケガなどを補償する制度であり、事業主や自営業者、家族従事者などは補償の対象外となります。

しかし、個人事業主の方でも業務中に事故などが発生する場合はあります。そういったケースを鑑み、労災保険には特別加入制度が設けられています。特別加入制度は、中小事業主など・一人親方など・特定作業従事者・海外派遣者を対象としています。

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従業員を雇用している個人事業主に関係ある社会保険とは?

従業員を雇用している個人事業主は、従業員のために社会保険の手続きが必要です。個人事業主本人については、国民年金と国民健康保険のままですが、必要に応じて手続きを行っておきましょう。

従業員のために加入できる保険

従業員を雇用した場合には従業員のために雇用保険と厚生年金、健康保険に加入することが可能です。ただし、条件を満たす必要があるため、加入を目指す際には勤務状況も配慮しましょう。

雇用保険

雇用保険は同居の親族以外の従業員を雇用し、所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みがある場合には、加入が必要です。ただし、個人事業主と同居している親族が雇用保険に加入するには条件があります。

親族の雇用保険加入には、事業主の指揮命令に従って働いていること、勤務実態や賃金が他の従業員と同じこと、取締役などについていないことを満たすことが必要です。

厚生年金と健康保険

個人事業主でも会社と同じように厚生年金と健康保険の適用事業所になり、従業員をこれらの保険に加入させることができます。任意なので、加入はどちらか一方でも可能です。条件としては、従業員の半数以上が同意し、年金事務所に認可を受けることが必要です。加入したら、事業主は従業員の保険料を半分負担する義務が生じます。

ただし、雇用状況によっては加入が義務になることもあります。常時5人以上の従業員が働いている、サービス業や農業、漁業など以外の業種の場合には、加入しなければいけません。

従業員のために加入が義務である保険

従業員のために、個人事業主でも加入が義務付けられている保険もあります。個人事業主であっても、1人でも従業員がいたら加入は義務となります。

労災保険

労災保険は、従業員を雇用したら必ず加入しなければいけない保険です。正社員でもパートやアルバイトでも加入は必須です。労災保険料は、全額を事業主が負担することになります。

保険料の経理処理について

個人事業主が従業員を雇用し、社会保険の加入が必要となった場合、会社負担の保険料が発生します。発生した保険料は確定申告の際にどのように処理すれば良いのでしょう。保険料の経理処理の方法を解説します。

本人の保険料は経費ではない

まず、個人事業主本人の保険料は、すべて経費にはなりません。ただし、国民健康保険料や国民年金保険料などは、すべて社会保険控除で課税対象の所得から控除できます。確定申告の際に、申告対象の年に支払ったすべての社会保険料を申告しましょう。猶予になっていた古い保険料であってもその年内に支払ったらすべて控除の対象です。

従業員の保険料は法定福利費

従業員のために支払った保険料は、法定福利費として経理処理できます。給料支払いの後で社会保険料は納付するため、給料日に天引きした分を預かり金として計上し、会社負担分は法定福利費として未払費用にしておきます。

まとめ

個人事業主は社会保険の加入手続きを自主的に行う必要があります。会社員のように手続きを会社が代わりにやってくれるようなことはありません。加入が必要な社会保険には自分でしっかりと手続きをして加入しておきましょう。

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