動物をたくさん取り扱う業種であるペットショップのオーナー。動物好きの人にとってはたまらない職業でもあるでしょう。そんなペットショップですが、自分で開業するにはどのような登録・資格がいるのでしょうか?いざ始めてみるとなるとどれぐらいの開業資金がかかるのでしょうか?
そこで今回は、ペットショップでの開業に必要な登録や開業資金などについて詳しく解説していきます。
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目次
ペットショップの開業形態の種類
ペットショップを開業するには主に以下の形態があります。それぞれについて説明していきます。
店舗を構えて開業する
ペットの売買をインターネット上のみで行なうことは禁止されているため、ペットショップは無店舗で営業できません。また店舗をかまえる場合は、動物愛護管理法で店舗の構造や規模などに細かなルールがあります。
店舗の場合、集客が見込める立地を自分で選べることがメリットですが、物件オーナーによっては動物の鳴き声や臭いなどを嫌がる人もいるため、物件がなかなか見つからなかったり、賃料が高めになったりすることもあるでしょう。
自宅で開業する
自宅で開業すれば、賃貸料もかからなくて良いのではと思う方もいるかもしれません。ただ、立地が店舗向けではないこともあるので注意が必要です。
また、動物愛護管理法の規定をクリアしなければなりませんし、ご近所のなかには、動物の鳴き声や臭いを嫌う人もいるでしょうから、防音や防臭対策をしっかり行なう必要もあります。
フランチャイズを利用する
フランチャイズを利用してペットショップを開業する方法もあります。フランチャイズは、知名度があるため集客が容易になることや仕入れルートを最初から確保できることなどが利点です。経営のノウハウを教えてもらえるのもメリットでしょう。
一方で、フランチャイズでは保証金や加盟金のほか、毎月のロイヤリティなどの負担がかかる点に注意が必要です。フランチャイズを利用する際は、ロイヤリティなどの金額をよく確認しておきましょう。
ペットショップの開業に必要な登録
ペットショップ開業には登録が必要ですが、この登録に際して必要とされる「動物取扱責任者」の取得要件について、法改正による変更がありました。さらにこれとは別に2022年(令和4年)6月からは、犬猫へのマイクロチップ装着が義務化されるという法改正も決定しています。
これらの法改正もこれからペットショップ開業を考えている方にとって大きく関わることなので、登録要件と合わせて詳しく見ておきましょう。
第一種動物取扱業者の登録
営利目的での哺乳類、鳥類、爬虫類の取り扱いには、第一種動物取扱業者の登録が必要です。登録には都道府県知事等からの許可が要るので、各自治体に申請しましょう。この第一種動物取扱業者に登録した場合、動物の健康と安全をきちんと維持・管理しなければなりません。動物の管理には環境省令で定める基準を遵守する必要があります。登録に関しては、各都道府県の動物愛護担当部局などに申請をしてください。
なお登録には手数料が必要ですが、各自治体によって料金が違うため例として東京都の場合を挙げておきます。
【東京都の場合】
申請手数料は1種別につき15,000円です。同時に多種別を申請する場合には、下表のように割安となるように設定されています。
・1種別:15,000円
・2種別(同時申請、以下同様):25,000円
・3種別:35,000円
・4種別:45,000円
・5種別:55,000円
登録の条件として、1店舗ごとに1人以上の「動物取扱責任者」の設置が必要です。動物取扱責任者については以下で説明します。
動物取扱責任者
動物取扱責任者は、ペットショップの店舗に1人以上の設置が必要な資格です。2021年(令和2年)6月の「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」の法改正で動物取扱責任者の資格取得要件が厳しくなり、資格の取得には実務経験が必須となりました。
具体的には、一定の大学・専門学校等の卒業もしくは一定の試験に合格した上で、常勤6カ月以上の実務経験が必要です。なおこの要件の緩和措置として、「実務経験と同等と認められる1年以上の飼養に従事した経験」があれば、常勤の実務経験はなくて良いともされています。
「実務経験と同等と認められる飼養」にはアルバイトやパート・ボランティア経験などが入ると考えられますが、各自治体の判断にもよるので一概には言えません。詳細は必ず各自治体に問い合わせて確認してください。
マイクロチップ搭載の義務化
マイクロチップとは、ペットそれぞれの個体を識別するための器具です。大きさは直径が2mm・長さ約8~12mm程度の小さなものであり、チップに記録された15桁の数字によって個体の識別ができます。最近は、万が一ペットが迷子になっても見つけられるようマイクロチップを使用する飼い主が増えていますが、マイクロチップには遺棄されたペットの飼い主を探し出す役割もあります。
そこで2022年(令和4年)6月1日より、ペットを販売する業者に対して犬猫のマイクロチップ装着が義務化されることになりました。法律が施行された後は、マイクロチップなしで犬・猫を販売することができません。マイクロチップ装着には一般的に5,000円程度の費用もかかるので、これから開業を考えている方はこのことを頭に入れておく必要があるでしょう。
ペット業者の飼育数制限
当初予定されていた2021年6月の施行は先送りになりましたが、改正動物愛護法に基づき「繁殖業者やペットショップが犬猫を飼育・管理する際に、飼育者1人あたりの飼育数の上限を定める規制」が段階的に導入されることになっています。
環境省はこれを、一部の悪質なペットショップなどを規制するための数値規制としています。しかしペット関連の業界団体や一部の繁殖業者からは、経営が成り立たなくなり廃業に追い込まれる中小・零細業者も出るとして「繁殖用の犬猫が行きどころを失う」「殺処分が増える」など強い反発の声が挙がっています。
省令通りに完全施行されるのは2024年6月なので、今後の開業を検討するならこの数値規制についても頭に入れておきましょう。
ペットショップを開業でおススメのペット資格
ペットショップを開業し、お店を経営していくためには、お客さんの信頼が欠かせません。そのためペット資格の取得を検討しましょう。資格を持っていると知識や技術の社会的な証明になり、お客さんも安心します。資格を取るためにペットの様々なことを勉強することは、ペットショップを経営していく上で損になることはありません。
取得を目指す資格としては、トリマーや動物看護士、動物介護士、ペット販売士、またペットビジネス系の資格がおすすめです。ペット資格を取得するのに何も専門学校に通う必要はありません。通信講座で取得できる資格も数多くあります。通信講座の場合はカリキュラムを受講し、課題を提出することで資格が取得できるケースも少なくありません。課題が検定試験の役割を果たしており、後日に試験を受ける必要もありません。このシステムなら在宅で資格を取ることもできます。ペット資格には様々な種類があるので、「仕事をする上でどの資格が役立ちそうか」「お客さんにどんなサービスを提供したいか」といったことを踏まえて取得する資格を選んでください。
・ペット販売士
・ドッグトレーナー
・動物看護士
・動物介護士
・ブリーダー
・トリマー
・ペットシッター
ペットショップの開業資金
ペットショップを開業するための資金を「初期費用」と「ランニングコスト」とに分けてみていきましょう。
初期費用
基本的にペットショップを開業するために必要な資金の相場は、平均して500~1,200万円と言われています。開業するにあたっては普通にお店を経営するのとは異なり、様々な費用が発生します。それぞれ挙げていきます。
物件所得費
まずはペットショップを開業するための物件を所得しなければなりません。保証金や礼金、仲介手数料などが契約の際には必要となってきます。この際に保証金は1ヶ月の家賃の10ヶ月分に値し、さらに仲介手数料や礼金は家賃1カ月分程度が必要となります。この金額は契約するお部屋の広さや地域などによっても異なってくるでしょう、
内装・外装費
物件を調達することができたら、ペットショップの内装や外装の工事費用が発生します。相場としては1坪あたり15~20万円ほどが必要です。さらに看板などを設置する外装工事費としては200万円前後となります。こちらの工事費も使用する材料などによっても値段は大幅に変わってきますので目安として考えてください。
什器備品
ペットショップとともにトリミングサロンなどを併設する際と、生体のみを販売する場合やペットグッズも販売する場合などによって費用が異なります。ショーケースなどはどちらにせよ使用することになりますが、それだけでも1つあたり3万円程度必要です。
このほかにも広告代や仕入れ代、消耗品などの備品代が発生します。
ランニングコスト
毎月発生してくるランニングコストとしては、月々の家賃や光熱費、人件費、仕入れ費などが挙げられます。それに加えてペットショップでは動物たちを飼育していかなければなりませんので、飼育管理費が発生します。
さらにはペットを自宅まで配送するサービスをしているのであれば、自動車にかかる費用も加わります。ペットショップを続けて行くためにはこのような細かい費用がランニングコストとしてたくさん発生します。
開業資金をどこから調達すればいいのか?
開業するにあたり、自己資金、いわゆる貯金だけで開業できればいいですが、なかなか日々の生活費なども考えると難しい所です。では自己資金以外でどこから調達すればいいのでしょうか?
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。
創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。
信用保証付の融資
「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。
親族、友人・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。
ペットショップ開業後の仕入れ先について
主な動物の仕入れ先としては、ブリーダーやオークション、自家繁殖があります。それぞれのメリットとデメリットを確認していきましょう。
ブリーダー
ブリーダーとは血統書付きの動物の繁殖を行なっている業者です。ブリーダーから仕入れるメリットは、実際に実物を見られることが挙げられます。
一方でブリーダーのなかには、育成環境が劣悪であったり、健康に問題がある生体を売ったりする悪質な業者もいるのも事実です。悪質なブリーダーから動物を仕入れていると、お客さまからのクレームなどにつながる可能性があるため、注意してください。
オークション(セリ市)
オークションとは、業者間で行なわれるセリ市です。メリットとして、ブリーダーから仕入れるよりも安く仕入れることができる点や動物の種類が豊富なことなどが挙げられます。
一方で、病気にかかっていない生体を仕入れるためには見極め力が必要です。また、優良な生体はブリーダーから直接売られることが多いため、ブリーダーで仕入れるよりも品質が劣りがちなのもデメリットでしょう。
自家繁殖
自家繁殖のメリットは、ブリーダーやオークションを通さないため、中間マージンを支払う必要がないことです。病気にかかりにくいことや、店舗で親犬(猫)の姿を見せることができるのもメリットでしょう。
一方で、自家繁殖では種類を増やすのに限界があります。また数が安定しないのもデメリットです。安定した数をそろえるにはブリーダーやオークションなどを併用する必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、ペットショップでの開業に必要な登録や開業資金などについて解説しました。
ペットショップは動物愛護法で定められた動物取扱業になるため、法律により常勤の動物取扱責任者を1人以上設置する義務があります。ただ生体を扱わないお店や、魚類・昆虫のペットショップを開業する場合、届け出は不要です。動物取扱責任者の設置も必要ありません。
ペットショップを開業するにはペットやペットビジネスに関する知識や技術の他、このような法律面をクリアしていかなければなりませんので、開業を検討している方は事前に覚えておきましょう。