日本政策金融公庫の融資面談時に聞かれる質問について解説

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創業する方で、日本政策金融公庫からの融資を受けようと思ったとき、審査過程でクリアしなければならないのが「面談」です。面談とは、融資担当者が融資希望者へ対して様々な質問を行い、本当に融資を行っていいのかどうかを見極めるものです。そこで、必ず聞かれる質問の対策をするということは、試験の前に過去問を解くのと似ています。各試験に出題の癖があるように、融資面談にも傾向があります。そのため、質問に対して回答を用意しておくだけで、何を聞かれるのか分からない不安よりも、自信をもって面談に臨むことができます。

そこで今回は、日本政策金融公庫の融資面談時に聞かれる質問について解説していきます。

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そもそも日本政策金融公庫とは?

日本政策金融公庫は、100%政府出資の金融機関です。平成20年に国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行(国際金融等業務)が統合され日本政策金融公庫が設立されました。その目的は「国民一般、中小企業者、農林水産業者の資金調達を支援する」ことであり、国の政策のもと、創業支援や中小企業の事業支援などを重点的に行っています。

また、基本理念の中に「民間金融機関の補完」も謳われており、一般の銀行では融資されないようなリスクがある事業への融資も行っています。

貸付制度は50種類以上!自分に合った借入方法を選択できるのがメリット

日本政策金融公庫の融資制度を利用するメリットは、50種類以上のなかから現在の経営状況や業種などに合わせた借入方法を選べることです。民間の銀行が取り扱っているビジネスローンは基本的に1~2種類となっており、細かい希望には対応してもらえない実情があります。

日本政策金融公庫は資金難に陥りやすい小規模事業者や中小企業の現状を熟知しているため、どういった状況にも対応できるように様々な融資制度を用意しています。例えば創業資金の融資は貸し倒れのリスクが大きいことから銀行では敬遠されるケースが多いですが、日本政策金融公庫なら5種類以上の融資制度で借り入れ可能です。

日本政策金融公庫の融資制度は、事業規模や業種によって大きく以下の3種類に分けられています。

・国民生活事業:小規模事業者向けの小口事業資金、個人向けの教育ローン
・中小企業事業:中小企業向けの長期事業資金
・農林水産事業:農林漁業者向けの長期事業資金

それぞれの事業ごとに、15~20種類ほどの融資制度が用意されています。

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日本政策金融公庫の融資面談時に聞かれる質問について

それでは、実際にどんなことを聞かれるのでしょうか?基本的には、提出した書類をもとに質問されます。提出する書類には以下のようなものがあります。

・借入申込書
・創業計画書
・見積書(設備資金の融資を受ける場合)
・履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)
・本人確認書類
・通帳コピー(過去6ヵ月分)
・許可証 ※許認可が必要な場合
・印鑑証明書
・源泉徴収票、確定申告書

それではよく聞かれる質問例について具体的に見ていきましょう。

個人の信用情報に問題がないか

日本政策金融公庫の審査では、個人の信用情報を必ずチェックします。所得税、住民税、法人税、事業税等の税金関係の他、電気やガス等の公共料金、クレジットカードや奨学金等の返済状況についても調査が行われますので、必ずこの点についての質問がされます。現在も滞納がある人は、借金を返すために融資を受けるとみなされて審査が落ちてしまいますが、面談時にその場限りの嘘をついても結局は調査でバレてしまいます。ご自身の信用情報に不安がある方は、事前に以下で確認してみるとよいでしょう。

・銀行系「全国銀行個人信用情報センター」
・クレジットカード系「CIC(株式会社シー・アイ・シー)」
・消費者金融系「JICC(日本信用情報機関)」

自己資金はどのくらいあるのか

自己資金は、たくさんあればあるほど審査は通りやすくなります。自己資金を十分確保した上で事業を開始するのであれば、それだけで事業計画がしっかりしており、返済の信用性が高いと判断してくれます。自己資金は、どこかの金融機関や知人等から一時的に借りたお金は見せ金と判断されてしまいますので、どうやって作ったお金なのか、という点も質問のポイントです。自分でこれまでに貯めてきたお金ですと言えるようにしておくのがよいでしょう。

それでは、自己資金はどれくらいあればよいでしょうか?この点については、融資を受けたい額の半分程度の自己資金があればまず問題ないと言えそうですが、実際に融資を受けたいと考えている人が融資額の半分を用意するのは難しいことが多いかと思います。現実的には、少なくとも融資を受けたい額の1/3程度の自己資金を用意してから申請を行うのがよいでしょう。

そして自己資金は、これが入っている通帳や預金・定期の残高証明などを提示して証明します。通帳に親からもらった資金が入っている場合には、その箇所に赤線を引くなどして提示するとよいでしょう。

自己資金定義は?
ちなみに自己資金とは起業家が自ら貯めて準備をした資金のことです。そして、自己資金の基本的な考え方は「通帳で確認できること」と「出所が不明な資金ではないこと」「返済義務がない親族からの支援金」などになります。

・自分で貯めた資金
・親族からの支援金(返済義務無)
・退職金
・融資の申し込み前に行った支出(裏付け資料が必要になります)
※株・有価証券・不動産など

創業の動機・理由

融資担当者は、融資希望者の人柄や、創業を成し遂げる意志の強さ・本気度を、この質問で判断します。経営理念がしっかりしている会社の方が失敗する確率が低いと言われております。融資希望者が社会でどうありたいか、どのような立ち位置を目指すかを表した行動指針のようなものなので、かっこいい言葉で飾らなくても構いませんので、自分らしさの伝わるものを考えましょう。

経営者の経歴

事業経験の有無は、融資の審査に大きな影響を及ぼします。事業経験の期間は「5年以上」あれば問題ありませんが、できれば「3年」以上は欲しいところですなお、事業経験がまったくなくとも、フランチャイズに参加してシッカリとしたトレーニングを受けていれば「事業経験あり」と認めてもらいやすくなります。もし、事業経験が少ない場合には、前職で経験した関連する業務(例えば、経理や仕様品管理、接客など)を組み合わせてアピールすることにより、事業経験の不足を補うことができる場合があります。

また事業に役立つ資格を保有しているのであれば、事業がうまくいくためのプラス要因となりますので、しっかりアピールするとよいでしょう。

営業場所はどこなのか?

営業場所については、テナントの賃貸契約書や不動産屋の間取図などを提出します。しかし、この場合、必ずしも正式な契約までしている必要はありません。また、同時に住宅地図のコピーや、建物外観の写真を用意しておくと好印象となります。なお、融資の結果がでるまでにそのテナントを他に借りられてしまったり、契約が解除されると、その融資はやり直しとなってしまいますのでご注意ください。

主力となる商品は何か?

主力となる商品は何か。サービス業や小売業などを例にすると以下答えられるようにしておいた方がよいでしょう。

・主力商品が売り上げに占める割合
・仕入先
・掛け率
・売掛・買掛の期間(サイト)

また、仕入先はできるだけ一社に絞らず、複数業者を用意しておくようにします。もし、特定の主力商品がない場合には、自分で想定した客単価などにもとづき説明します。

顧客の開拓方針について

顧客をどのように開拓していくのかも、聞かれる質問です。売り上げが上がらなければ当然、借入金の返済が困難になりますので、日本政策金融公庫側としてももっとも聞きたい質問になるかもしれません。この時点で見込み客がいる場合や、既に顧客がついている場合には、その旨を伝えましょう。これから顧客開拓をしていく場合には、どんな顧客開拓方法を持っているかを説明する必要があります。全ての開拓方法を説明し、最も自信のある方法を中心に話をするのが良いかと思います。

想定する月の売上げや経費の額はいくらか

月毎の予定売上けを考える際に気をつけるべきなのは、「根拠なく右肩上がりの数字にしない」ということです。通常、どんな商売でも季節的に売れる、売れないの変動(季節変動)やその業種特有の波があります。しかし、これを無視した計画は信ぴょう性の乏しいものとなってしまいます。売上げを作る際の注意点については、「創業融資を引き出す売り上げの作り方」の記事で解説していますが、例えば、座席についても常に満席にするのではなく、死席なども想定した計算式とする必要があります。

取引先はどういう会社なのか?

取引先の商号・本店・事業内容などの他に、そこからどの程度の仕入れや販売をする予定なのかを答えられるようにしておくのが望ましいです。なお、もし、仮にその会社に問題がある、非合法的なことをしているなどの場合には、審査の上でも大きな不利となります。

取引先や取引関係などを通して、売掛金の入金、買掛金の支払いサイクル

入ってくるお金、出ていくお金をきちんと認識しているかが判断される質問です。末締め末払いなど、現金の入出金サイクルをきちんと回答できるようにしておきましょう。

なぜ、計画通りの売り上げを達成できると思うのか?

このような質問をされた場合には、過去に行った同種の事業の経験から十分可能と考えていると説明します。また、できないことや経験がないものについては無理に「できる、頑張る」などと主張するのでなく、その点については他の人材にまかす、外注するなどといった現実的なプランを考えておきましょう。フランチャイズの場合には、本部から同程規模の店舗の平均的なデータをもらい参考にすると内容に信ぴょう性が増します。

営業に必要な許認可の見通しは?

飲食店の営業に必ず必要となるのは、保健所の営業許可と食品衛生管理者の資格なので、この2点については早めに対策をしておくべきです。しかし、保健所の営業許可は内装設備および電気、水道の開通ができた後でないと検査を行うことができませんので、この点については、工事会社との調整も必要となります。また、深夜営業をする場合には、これらとは別に「深夜酒類提供の届け出」を警察に提出する必要があるため、これについての予定も伝える必要があります。

申込金額について

「申込金額より減額になってしまうかもしれませんがどうですか?」と聞かれる場合があります。そのような場合は、「ここの予算を削れば大丈夫です」や「購入するのをやめてリースにします」など前向きな回答をしましょう。担当者の感覚と経験で「このくらいの融資金額だろう」と判断されてはいますが、面談の時点ではまだ正式に減額が決まったわけではないので、落ち込むことなく最後まで前向きに話せるようにしましょう。

信用保証協会融資(制度融資)への申込みはしているのか?

たまに、担当者から「制度融資の利用はしているのか?」と聞かれることがあります。制度融資との併用自体については問題ないのですが、これを伝えるとそちらの状況をいろいろと聞かれる可能性がありますので、現状の状況をお伝えしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、日本政策金融公庫の融資面談時に聞かれる質問について解説しました。

面談の準備や自分で手続きを行うのが難しいと思う場合は、専門家に相談してみると良いでしょう。自分でやる場合よりも融資借り入れの可能性が高くなり、かかる時間、手間等も短縮が可能になります。

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