企業がコンプライアンスを遵守するうえで、反社チェックはとても重要になります。そして反社チェックにはさまざまな方法があります。
そこで今回は、取引開始前にすべき反社チェックの方法について解説します。
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目次
そもそも反社会的勢力とは?
そもそも、「反社会的勢力」とは具体的にどんな組織・個人を指すのでしょうか?
政府の指針によると、反社会的勢力は「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されています。暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団、半グレ集団などの犯罪組織やその協力者がこの反社に含まれます。
(引用元)法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」
反社チェックとは?
反社チェックとは、取引の開始前に、その取引先が「反社会的勢力」に該当しないか、また、「反社会的勢力」との関係を有しないか、を確認することを、「反社チェック」と呼びます。この「反社チェック」の対象には、取引先について行われるだけではなく、自社の従業員、更には自社の株主なども含まれます。
これらのステークホルダーについて、反社会的勢力に該当しないか、反社会的勢力との関係を有しないかを都度確認をする必要があります。
反社チェックを行うべきタイミング
反社チェックが必要なタイミングはたくさんあります。新しく取引を始めるときだけでなく、契約を更新する際も改めて反社チェックをすべきです。
また、自社に新しい役員が就任する際や新しい従業員を雇用する際も反社チェックが必要です。本人に対する反社チェックだけでなく、家族も含めて確認しましょう。
さらに、株主を増やすときも反社チェックを実施する必要があります。株主の候補が法人であれば、代表者だけでなく、外部関係者の役員についても反社チェックを行ってください。
取引開始前にすべき反社チェックの方法について
相手先と取引を始める前には、以下の方法にて「取引先が反社会的勢力であるかどうか」チェックを行います。
会社情報の確認
商業登記情報をチェックして、会社名・役員・住所が頻繁に変更されていないか、業績や取扱商品に不審な点はないかなどを確認する方法です。頻繁に変更しているような会社は、過去に何かあり変える必要性があったと思われるため、契約を控えたほうが無難です。商業登記情報と、HPの記載が異なる場合も注意が必要です。
また、HP上の記載内容に矛盾がないか、デザイン等がしっかりとしているか、社長の顔写真があり一定の経歴が記載されているかも確認しましょう。グレーゾーンな運営をしている会社では、情報に矛盾がある、信用性を求められる仕事にも関わらず社長名が出ていないなど不審点が必ず見受けられます。
提示された会社の住所もグーグルマップで一度検索しておきましょう。場合によっては、そこで業務できると思えないような、古いアパートが表示されることもあります。
インターネットによる検索
インターネット上で「株式会社アシロ 反社」「アシロ太郎 ヤクザ」など会社名や取締役名を、以下キーワードでand検索しても反社会的勢力に関する情報が出てこないか確認しましょう。
新聞記事・Webニュース記事の検索
帝国データバンクや日経テレコンなどにて会社名や取締役名を検索し、反社会的勢力に関する過去記事が出てこないか確認する方法です。
風評の調査
業界団体や同業他社に対して、悪い評判はないか確認する方法です。○○協会などのその業種専門の協会などがある場合は、直接相談してみるのもひとつの方法です。もし、このような調査で不信感を抱く場合は、契約をしてはいけません。もし、契約してしまった場合は、すぐに取引を辞めましょう。
新聞記事検索
新聞記事検索は、一般的に新聞・雑誌記事のデータベースサービスを使い反社会的勢力に関する情報を確認する方法になります。各サービスによって内容は異なりますが、専用のサービスサイトから会社名で検索をかけ、取引を希望する企業について過去新聞に取り沙汰されている記事の有無を確認することができます。逮捕や行政処分などの公知情報を収集する手段としては有効と言えるでしょう。
またインターネット記事は古い記事は検索順位が下がり見つけにくくなりますが、新聞記事は古い記事でも見つけることが可能です。一方で、インターネット検索では確認できる噂レベルの情報や口コミは新聞記事にはないため確認することができないこと、また検索対象が多い場合にサービスの利用料金がかさみがちになることは予め理解しておくと良いでしょう。
外部機関への相談
どうしても怪しい場合は、警察や暴力団追放運動推進センターなどへ相談して、取引先に関する情報照会をしてもらいましょう。
相手が反社と判明した場合の対処法
反社チェックを行った結果、反社と判明した場合はどのような対処を行えばよいのでしょうか?ここでは相談先や契約解除といった具体的な対応方法を紹介します。
弁護士・警察に相談
契約を結ぼうとしている相手や、既存の取引先が反社の可能性があると判断した時点で、上司や営業担当などといった関係部署に報告、相談しておきましょう。反社だということ確定した場合は、反社チェック時に収集した情報を整理した上で、顧問弁護士や最寄りの警察などに対応を相談します。
取引を中止する場合、詳細を伝えないようにする
もし反社と判明し取引を中止する場合は、その事実をそのままを相手に伝えてはいけません。社内審査の結果、自社の基準によって取引ができないと相手に伝え、自社の審査基準については非公開であることを伝えるまでにとどめておきましょう。なお警視庁では、警察に相談の上、相手が反社だと分かった場合、相手が取引の中止や契約解除に応じないときには警察からの情報に基づくことを相手に伝えてもよいとしています。こうした状況になった場合は、冷静に警察に相談することも重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、取引開始前にすべき反社チェックの方法について解説しました。
反社会的勢力と関係を持ってしまうと、会社としては、不当要求・条例違反・行政処分・イメージダウンなどの不利益を被ってしまう恐れがあります。したがって、契約後に取引先を「怪しい」と思った場合は、入念に調査して事実確認を行い、もし反社会的勢力であった場合は関係を断ちましょう。
ただし、契約後に契約を解消するには、正当な理由がなければなりません。そのためにも、契約書を作成する際は必ず「反社会的勢力排除条項」を盛り込みましょう。その上で、「取引先が反社会的勢力である事実」を立証し契約を解消する必要があります。
立証や解消に関して会社や担当者個人で行うのは危険です。弁護士・暴力団追放運動推進センターに相談し協力を得た上で対応してもらいましょう。