会社が資金調達を行うには、さまざまな理由があります。資金調達を行うケースとして、一番多いのは、新規の事業を立ち上げるために設備を導入するときです。新規の製品を生産するには、最新またはいままでとは異なる設備(土地、建物、機械など)が必要になるため、多額の資金を準備しなければなりません。
また入金がない期間の支払いのためにも資金調達が必要になります。業種にもよりますが、例えば建設業の場合は工事を行ってから入金までの期間が長く、その間の資金が枯渇する可能性もあります。当然、入金までの期間にも、工事のための資材や人件費の支払いは発生します。その支払いのためには、運転資金として調達する必要があります。
上記以外にもさまざまな理由がありますが、今回は、会社が資金調達が必要な場面と主要な資金調達方法をご紹介していきます。
目次
会社が資金調達が必要な場面とは?
会社が資金調達が必要となる具体的な場面は多岐に渡ります。以下にいくつかの例を挙げます。
会社設立や新規事業の立ち上げ
新しい会社を設立したり、既存の事業に新たな拡大や進出をする場合、資金調達が必要になることがあります。これには設備や施設の購入、従業員の雇用、マーケティング活動などが含まれます。
技術開発や研究プロジェクト
高度な技術開発や研究プロジェクトを行う場合、多額の資金が必要になることがあります。研究者やエンジニアの給与、実験材料の調達、設備や施設の整備などに資金が必要です。
成長や拡張
成長するためには、市場拡大や新たな地域への進出、製品ラインの拡充などが必要になることがあります。これには販売チームの拡大、広告・宣伝活動の増加、新製品の研究開発などが含まれます。
資本投資
会社の設備や施設の近代化、効率化、自動化などのために資金が必要な場合があります。新しい機械や設備の導入、生産ラインの改善、省エネ対策の実施などには資金が必要です。
経営の安定化
経営上の困難や資金不足に直面した場合、資金調達が必要になることがあります。例えば、給与や請求書の支払い、借入金の返済、供給網の安定化などのために資金が必要です。
M&A(合併・買収)
他社との合併や買収を行う場合、多額の資金が必要になることがあります。企業の買収価格や関連費用、合併による統合費用などが資金調達の対象となります。
大規模な広告・マーケティングキャンペーン
新製品のローンチやブランドの拡大を目指す場合、大規模な広告・マーケティングキャンペーンが必要となることがあります。広告代理店の手数料やメディアへの広告費、プロモーション活動の費用を賄うための資金調達が必要です。
固定資産の更新や修繕
会社が所有する不動産や設備の更新や修繕を行う場合、資金調達が必要になることがあります。建物の改築、設備の更新、機械の修理などのために資金が必要です。
法的な紛争や訴訟対応
法的な紛争や訴訟に関連する費用は高額になる場合があります。弁護士の費用や法的手続きに関連する経費を賄うために、資金調達が必要になることがあります。
これらは一般的な場面の一部ですが、実際の企業の状況や業種によって必要な資金調達の理由は異なる場合があります。会社が成長や発展を遂げるためには、適切なタイミングでの資金調達が重要になります。
主要な資金調達方法
資金調達のなかでも主要と呼ばれる方法があります。ここでは14種類の方法を解説します。
1.自己資金
自分が保有している資金を利用する方法で、返済が不要かつ自由度の高い経営が行えるというメリットがあります。自己資金だけで会社や事業の立ち上げが可能であれば、特に大きなリスクを抱えることもありません。
そのため外部から資金調達するよりも安全な方法ですが、ほとんどの場合は最初からすべての費用を自己資金で賄うことが困難なものです。自己資金をどれくらい準備できるか・できているかを中心に考えながら、外部からどのように資金を調達するかを検討していく方法が現実的と言えます。
2.銀行融資(プロパー融資)
銀行融資には、制度融資とプロパー融資の2種類があります。まず、プロパー融資について解説します。プロパー融資とは「金融機関からの直接融資」のことで、信用保証協会の保証を受けない融資です。銀行が直接融資するため、万が一、借入人が返済できないとなった場合、損失を100%銀行が負担しなければならないリスクを負っています。そのため、信用力がないと資金を借りられません。会社設立から間もない企業ではハードルが高いといえるでしょう。
3.銀行融資(制度融資)
制度融資とは、都道府県などの自治体・民間の金融機関・信用保証協会が連携して実行する融資で、主に中小企業や小規模事業者への資金調達のサポートを目的にしたものです。プロパー融資と異なり、信用保証協会が債務の保証をしてくれるため、銀行がリスクを負わずにすみます。そのため、創業から間もない状態でも、比較的資金調達がしやすいと考えられるでしょう。一方で、都道府県などの自治体の認定が求められ、審査には時間もかかります。
4.公的機関(日本政策金融公庫)からの融資
日本政策金融公庫とは、主に中小企業や個人事業主を対象とした支援を行う政府系金融機関です。日本政策金融公庫における融資制度は様々なものがありますが、「創業融資制度」や「新事業活動促進資金」などは起業家でも利用しやすい上に金利が低い傾向にあります。ただし審査には面談が必要なこと、審査項目が多いため時間がかかることに注意が必要です。
5.社債の発行
社債は、投資家から資金を集めるために発行され、利子をつけて返済されるものです。多くの方から資金調達できるため、資金を集めやすいメリットがあります。しかしながら、発行・発行後の手続きが込み入っているほか、満期にはまとめて資金を返済しなければなりません。
6.ビジネスローン
ビジネスローンとは、銀行、金融機関が提供する、法人向けの融資のことです。無担保、保証人なし、審査が厳しくないというメリットがあり、即日借りられるものもあります。ただし、金利は高く設定されているため、利用には計画性が必要です。
7.家族・親族からの借り入れ
家族や親族から借り入れるのも、資金調達の一つの手法といえます。気の置けない関係であれば、難しい手続きもなく、金利や借入期間といった条件も柔軟に設定できるというメリットがあるでしょう。一方で、資金を貸せるほどお金に余裕のある人は少ないため、大きい金額を借りることは難しい傾向にあります。また、条件や義務・権利が曖昧になりやすいため、のちのちトラブルに発展してしまうというリスクも考えられます。
8.ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業やスタートアップ企業など、今後大きな成長が見込める未上場企業に対し、投資を行う機関のことです。当初の投資額と、上場などで株式を売却したときの差額で利益を得ることを目的としています。ベンチャーキャピタルは出資を前提としているため、基本的には返済義務がありません。また、多くのベンチャー企業に投資した経験に基づいた、アドバイスやサポートを受けられるというメリットもあります。ただし、ベンチャーキャピタルは株式の売却で利益を得ることが目的のため、安定株主にはなりません。また、経営にも関与してくるため、ベンチャーキャピタルの移行に沿った経営が求められます。
9.エンジェル投資家からの出資
エンジェル投資家は、設立間もない企業や有能な経営者などに資金を出資する個人投資家のことです。個人投資家であるため、審査が厳しくないことも多く、素早く資金を調達できるというメリットがあります。またエンジェル投資家は、過去に自身が起業家であったというケースも多いため、その経験をもとにしたアドバイスやサポートを受けられることも。ただし、場合によっては、経営に過度に関与しようとしてくることもあり、自由な経営の妨げになる可能性があります。
10.クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、企業・個人がファンドを設立し、インターネットサイトを通じて、出資を募る仕組みをいいます。近年、クラウドファンディングによる資金調達は増えてきているので、ご存じの方も多いかもしれません。インターネットで広く呼びかけるため、一口の額を少なく設定しても、ある程度まとまった資金を調達できます。また返済しなくてよいのは、メリットといえるでしょう。一方で、多数の出資者に呼びかけるため時間がかかることや、資金調達できるかの予測が立ちにくいというデメリットがあります。
11.第三者割当増資
第三者割当増資とは、既存の株主に関わらず、特定の第三者に新株の購入権利を割り当てることで、資金を調達する方法です。株式を割り当てる先が決まっているので、早期の資金調達が可能で、自己資本率も上がるため、財務基盤が安定するというメリットがあります。ただし、第三者割当投資によって経営者の持ち株率が低下し、経営への統制能力を失う危険性もないとはいえません。経営権を奪われることがないよう、持ち株比率を確認しましょう。
12.ファクタリング
ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に売却することで資金を調達する方法です。自社の信用率は関係なく、売掛金の支払先の信用が高ければ、ファクタリングを利用できます。本来回収されるまで待たなければいけない売掛金を、すぐに現金化できるのがメリットです。一方で手数料がかかるため、満額ではなく、手数料分を差し引いた金額で入金されるというデメリットもあります。
13.M&A(事業や会社の売却)
M&Aによって事業や会社を売却をすることで、資金を調達する方法です。以前は、大企業が行うイメージがありましたが、近年では中小企業でも取り組みやすくなりました。売却する事業・会社の規模によっては、大きな資金が得られます。また、会社すべてではなく一部の事業のみを売却することもできるので、特定の事業に注力できるようになるメリットもあります。一方で、M&Aをしたくても売却先が見つからないというケースもあるので注意が必要です。
14.補助金・助成金
不定期ではありますが、自治体にて開業資金に関する補助金・助成金利用の公募が行われていることがあります。開業に必要な資金が交付されるため、返済義務に悩む心配がありません。
ただし、交付の対象となるには自治体が定めた「交付の目的」に沿った事業である必要があります。審査の手続きに時間がかかるうえ、資金の交付は開業後に支払われるため当面の間は借入した資金でやりくりしなければならないケースがほとんどです。
まとめ
上記でさまざまな場面での資金調達の例をご紹介しました。企業が成長や発展を遂げるためには、適切なタイミングでの資金調達が重要ですが、具体的な資金調達の必要性は企業の状況や目標によって異なることを念頭に置きましょう。