この記事では、以下のことについて説明します。
・会社設立の流れがわかる
・会社設立のメリット・デメリットがわかる
・会社設立後に必要な手続きが理解できる
・会社設立の費用相場がわかる
会社設立に興味はあるものの、準備や手続きの方法が分からないという方も多いのではないでしょうか。会社を設立するにはいくつもの手続きが必要なため、決まった順序に従って手続きを進めていく必要があります。
ここでは会社設立の基本的な流れや手順についてわかりやすく紹介します。また、会社設立のメリットやデメリット、会社設立後の必要な手続きについても詳しく解説していきます。
目次
会社設立とは
会社設立とは、法務局で商業登記の申請を行い、会社組織を立ち上げることをいいます。登記されると登記簿に記録され、基本情報(たとえば商号、所在地、役員の氏名など)を誰でも閲覧が可能です。これに伴い、法人としての権利や義務を有することになります。
「設立」と「創立」と「創業」について
「設立日」と混同しやすい言葉に「創立日」や「創業日」がありますが、その違いは以下のとおりです。
設立日
法務局に会社登記の申請をした日が設立日です。
創立日
創立は、学校や団体などの組織や機関を立ち上げた日です。
登記の有無は関係ありません。
創業日
創業日は、法人・個人に関係なく事業を開始した日です。
登記の有無は関係ありません。
株式会社と合同会社の違いとは
株式会社と合同会社の違いは、所有と経営が分離しているかどうかにあります。株式会社は、基本的に出資者(株主)と経営者が異なる人によって構成されています。一方の合同会社は、出資者(株主)と経営者が同一ですから、経営に関しては柔軟な対応ができるでしょう。このように、合同会社は株式会社に比べて柔軟な経営が可能なため、小規模の事業やBtoCの企業経営に適しています。
合同会社の設立に際しては、定款の公証役場における認証を必要としません。また、登録免除税は株式会社の最低金額15万円に対して、合同会社は最低金額6万円と低額です。デメリットとしては、株式会社よりも知名度や信頼性がやや劣る点が挙げられます。
会社設立は誰でもできる?
欠格要件には、以下のようなものがあります。
1.法人
2.成年被後見人もしくは被保佐人に該当する者
3.会社法、金融商品取引法、破産法など会社に関連する法律に違反し、刑の執行が終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
4.上記3以外の罪を犯して禁固以上の刑に処せられ、または刑を受けることがなくなるまでの者(執行猶予中の者は除く)
自分で判断することが困難な人や犯罪に関係している人以外なら、会社設立はできます。自己破産した人や未成年でも、会社設立は可能です。
会社設立の流れ
会社の設立は、主に次の5ステップの順に進めていきます。ここでは、株式会社の設立を例に解説します。
1.会社の基本的な情報を決定する
2.法人用の印鑑(実印)を作成する
3.定款(ていかん)を作成し、公証役場で認証を受ける
4.出資金(資本金)の払い込みを行う
5.登記申請書類を用意し、法務局で登記申請する
合同会社の場合は、上記3の公証役場による認証が不要です。次に、それぞれの具体的な手続きについて解説します。
1.会社の基本的な情報を決定する
会社設立にあたっては、はじめに会社の基本情報を定めておく必要があります。定款にも記載する重要事項のため、しっかり押さえておきましょう。
商号(社名)
商号とは、会社名のことを指します。社名の前または後ろに「株式会社」(「合同会社」)の文字を必ず入れます。
ネーミングの際には、使用不可の文字を使わないように注意します。
また「同一住所に同一の商号がある場合は登記できない」という決まりがあるため、調査する必要があります。
さらに、銀行や学校などを連想させる名称や有名企業の名前を連想させる社名は、不正競争防止法の観点から避けるようにしましょう。類似の会社名が存在するかどうかについては、法務局または登記情報提供サービスで調べることが可能です。それと同時に、ブランディングにおけるトラブル防止の観点から商標登録も事前にチェックしておきましょう。
事業目的
事業目的は、どのような事業を行うのかを明示するものです。銀行の融資を受ける際や許認可申請において必要となるため、はっきりと記載しておくことがポイントです。また、今後行う予定の事業は、あらかじめ記載しておくことによって変更登記の手間や費用を省くことができます。
本店所在地
住所(本店所在地)を決める際に、法的な制限は特にありませんが、賃貸の場合には「法人不可」となっていないかどうかを確認しておきましょう。レンタルオフィス・バーチャルオフィスなども本店所在地として設定できますが、類似商号には注意が必要です。
資本金
法律上は、1円から会社設立が可能です。ただし、社会的信用の観点から極端に資本金が少ないのは好ましくないため、適正な金額を設定するようにしましょう。
会社設立日
会社設立日は、法務局に会社設立の登記申請をした日です。縁起のよい日など特定の日付にしたい場合には、日にちを逆算して準備するようにしましょう。
会計年度
会計年度は、企業が会計上の業績を評価する期間のことをいい、自由に設定できます(通常は1年間)。決算月の設定については、繁忙期を避けるのが一般的です。
株主と役員の構成
株主の構成は、会社の株式を誰がどれだけ持っているかという内訳です。取締役は会社の実質的な経営を担うポジションであり、最低でも取締役1人を決めれば会社設立ができます。
2.法人用の印鑑(実印)を作成する
法務局に設立登記の申請をする際には、会社の実印が必要です。なお、2021年2月15日よりオンラインで設立登記を行う際は、印鑑の届出が任意となりました。ただし、会社設立後に実印を使う場面は数多くあるので、会社設立のタイミングで実印を作っておきましょう。
3.定款を作成し、公証役場で認証を受ける
定款(ていかん)とは、会社の目的や事業内容、役員の任期などをまとめたものであり、会社設立において必須の書類です。定款には「絶対的記載事項」5項目が定められ、これらの記載がないと定款自体が無効になります。
定款の絶対的記載事項は、以下のとおりです。
・商号
・事業目的
・本店所在地
・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
・発起人の氏名および住所
定款には決まった書式フォーマットはありませんが、提出方法は紙か電子定款の2通りです。作成した定款の記載が正しいものであるかどうかを第三者に証明してもらうため、公証役場において認証を受けます。なお合同会社の場合には、定款の認証は不要です。
4.出資金(資本金)の払い込みを行う
資本金の払い込みは、定款の認証終了後に行います。この時点では法人口座がないため、資本金の振込先は発起人(会社設立の際に出資した人)の個人口座です。登記申請の際に資本金の振り込みを証明する書類が必要なため、通帳の表紙・1ページ目・資本金の振込内容が記載されているページをコピーしておきます。
5.登記申請書類を用意し、法務局で登記申請する
登記申請に必要な書類は会社のタイプによって異なりますが、ここでは株式会社を例に解説します。
・設立登記申請書
・登録免許税の収入印紙を貼り付けた台紙
・定款
・発起人の同意書(発起人決定書、発起人会議事録)
・設立時取締役の就任承諾書
・設立時代表取締役の就任承諾書
・資本金の払い込みを証明する書面
・取締役の印鑑証明書
・印鑑届出書
・「登記すべき事項」を記載した書面もしくは記録したCD-R
手続きが煩雑なため、司法書士に依頼するケースが一般的です。登記申請後、不備がなければ1週間から10日程度で登記が完了します。
ここからは、それぞれの書類について見ていきましょう。
登記申請書
申請書の様式や記載事項については、法務局の「商業・法人登記の申請書様式」ページからダウンロードできます。
登録免許税の収入印紙を貼り付けた台紙
収入印紙を郵便局などで購入し、A4サイズのコピー用紙などに貼り付けて提出します。
定款
公証役場において認証を終えている定款です。紙の定款の場合は、収入印紙代(4万円)が必要になります。
発起人の同意書(発起人決定書、発起人会議事録)
発起人の決定書とは、発起人が社名や目的、本店の場所などを詳細に決定したことを証明するための書類です。
設立時取締役の就任承諾書
設立時取締役の就任承諾書とは、取締役に就任することを承諾したことを証明する書類です。代表取締役として就任する場合には、別途代表取締役としての就任承諾書の作成が必要となります。
設立時代表取締役の就任承諾書
設立時代表取締役の就任承諾書とは、代表取締役に就任することを承諾したことを証明する書類です。取締役が1名の場合には、自動的にその取締役が代表となるため不要です。
資本金の払い込みを証明する書面
会社設立登記における払込証明書とは、定款に記載された資本金を証明するための書類です。通帳の表紙・1ページ目・資本金の振込内容が記載されているページをコピーして提出します。
取締役の印鑑証明書
取締役が複数の場合は、全員の印鑑証明書を取得する必要があります。取締役会を設置しているときは、代表取締役の印鑑証明のみの提出で問題ありません。
印鑑届出書
印鑑届書とは、会社の実印登録をするための書類です。
「登記すべき事項」を記載した書面もしくは記録したCD-R
「登記すべき事項」については、CD-Rなどで記録したものを申請書の一部とすることが可能です。その際、内容を別途印刷して添付する必要はありません。
会社設立するメリット・デメリット
会社の設立には、メリットと同時にデメリットもあります。双方の点を念頭に置きつつ、設立に向けた準備を進めていきましょう。
会社設立5つのメリットとは?
会社を設立するメリットは主に以下の5つです。
・節税できる
・決算月を自由に設定できる
・有限責任になる
・事業承継で会社を残しやすくなる
・社会的な信用が得やすくなる
それぞれ、詳しく解説します。
節税できる
・経費処理として認められる範囲が広がる
法人となることで、経費として認められる項目が増えます。
事業に関連しているものの経費が認められやすくなり、役員報酬や各種保険、社宅などの一部も経費にできるため、節税効果が見込めます。
・法人税と所得税
個人事業主の所得税は最大で45%の累進課税に対し、法人税は最大でも23%程度です。
・欠損金を10年間繰り越せる
青色申告をしておくことによって、赤字が出てしまった翌年から10年間にわたり黒字の年度における欠損金の相殺が可能です。
・相続税対策になる
多額の相続財産がある場合に、資産の分散や相続財産の評価を通じて節税効果が期待できます。
決算月を自由に設定できる
個人事業主の場合の事業年度は1月から12月と決められています。法人の場合は、会社の繁忙期と決算月が重ならないように決算期を定めることが可能です。
有限責任になる
法人の場合は、限られた範囲の「有限責任」です。個人保証による借入を除き、出資額以上の支払い義務が発生しないので、個人の資産は守られます。
事業承継で会社を残しやすくなる
個人事業主の場合に相続が発生すると、個人名義の預金口座が一時的に凍結されるおそれがあり、事業の継続に支障が生じてきます。法人であれば、代表取締役の登記変更の手続きをするだけで済み、事業の継続性が図れます。
社会的な信用が得やすくなる
・取引上の信頼度がアップする
取引の信頼性において、個人と会社ではまったく違います。初めての商取引の際に、まず相手の法人登記の内容を確認するケースがほとんどです。また、取引先によっては、法人でなければ契約を結ばないといった企業もあります。
・融資・資金調達を行いやすい
法人設立によって法人の資産を有するようになるため、会社の資産や収益が明確になり、金融機関も融資判断をしやすくなります。
・法人として銀行口座やクレジットカードが作れる
法人口座開設のための審査は厳しいため、法人口座があると社会的信用度が高いとの評価を得られます。そうした社会的信用は、取引や融資を受ける際に効果的に働きます。また、経費の支払いを法人のクレジットカードに集約することによって経費管理がしやすくなり、キャッシュフローにも余裕が生まれます。
会社設立4つのデメリットとは?
・会社設立に費用や手続きが必要
・事務作業の負担が増える
・赤字でも法人住民税の納税が必要
・社会保険へ加入しなければならない
それぞれについて詳しく解説します。
会社設立に費用や手続きが必要
会社設立の費用は、株式会社で20万円〜25万円、合同会社で10万円前後を要し、書類の準備や手続きなどの手間がかかります。
事務作業の負担が増える
法人になると、厳密な会計ルールにのっとった会計処理が求められます。また、法人税をはじめとする税金の申告手続きは複雑なため、税理士に依頼するのが一般的です。
赤字でも法人住民税の納税が必要
法人住民税の均等割は資本金や従業員数に応じて課税されるため、赤字でも納税が必要です。
社会保険へ加入しなければならない
株式会社や合同会社などの法人は、社会保険(健康保険および厚生年金保険)に加入する必要があり、社長が1名だけの場合であっても強制加入となります。
会社設立後に行う手続き・必要書類
会社設立後は、下記の手続きが必要です。提出期限が定められている届出もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
届出の必要な行政機関は、次の3つです。
・税金関係の手続き(税務署・都道府県事務所・市町村役場)
・社会保険関係の手続き(年金事務所)
・労働関係の手続き(労働基準監督署・ハローワーク)
それぞれについて、詳しく解説します。
税金関係の手続き(税務署・都道府県事務所・市町村役場)
設立登記が完了後、法人設立届出書などを会社の所在地を管轄する税務署に提出し、続いて都道府県税事務所または市町村役場への届出を行います。
法人税について税務署に届け出る
会社の所在地を管轄する税務署にて届出を行います。
・法人設立届出書
定款、寄付行為、規則又は規約の写しを添付します。提出の期限は、法人設立の日(設立登記の日)から2か月以内です。
・青色申告の承認申請書
設立の日以後3か月を経過した日と当該事業年度終了の日とのうち、いずれか早い日の前日までが提出時期です。
・給与支払事務所等の開設届出書
開設の事実があった日から1か月以内に提出します。
・源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書
原則として、提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。
法人住民税・法人事業税について、各都道府県税務署・市町村役場に届け出る
法人設立届出書(都道府県によって呼称が異なります)
定款の写しと登記事項証明書を提出します。手続きは都道府県によって異なるため、納税地ごとに確認が必要です(東京都の場合は15日以内)。
社会保険関係の手続き(年金事務所)
社会保険関係は、年金事務所に届出をします。
健康保険・雇用年金の加入手続きについて年金事務所へ届け出る
・健康保険・厚生年金保険新規適用届
登記事項証明書と法人番号指定通知書等のコピーの添付が必要です。提出時期は、会社設立から5日以内です。
・健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
提出時期は、会社設立から5日以内です。
・健康保険被扶養者(異動)届
提出時期は、事実発生から5日以内です。
労働関係の手続き(労働基準監督署・ハローワーク)
従業員を雇用する場合には、労働基準監督署やハローワークへの届出が必要です。
労働法に関する届け出を労働基準監督署に提出する
・労働保険関係成立届
登記事項証明書を添付し、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に提出します。
・労働保険概算保険料申告書
保険関係が成立した日(労働者を雇い入れた日)の翌日から50日以内に提出します。
・適用事業報告書
労働者を使用するに至ったときから遅滞なく提出します。
雇用保険に関する届け出をハローワークへ提出する
・雇用保険適用事業所設置届
登記事項証明書を添付し、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に提出します。
・雇用保険被保険者資格届
提出期限は、対象者を雇用した月の翌月10日までに提出します。
会社設立にかかる費用の内訳・相場
述したように、会社設立の費用は、株式会社で20万円〜25万円、合同会社で10万円前後です。合同会社は定款の公証役場における認証が不要で、登録免除税が株式会社よりも低額になっています。
ここで、ここまで見てきた内容を一覧表にしてみましょう。
専門家に依頼するには別途費用が発生するため、時間と手間、費用との兼ね合いを考慮しつつ検討を進めていきましょう。
まとめ
会社を設立するには多岐にわたる手続きが必要であり、それなりに時間のかかる作業です。それだけに、一連の流れについて事前に把握していくことが重要です。会社設立の手続きで時間を費やしてしまうと、肝心の事業展開に支障が出てしまいます。また、会社設立後にも税務署や年金事務所、各行政機関への届出も行う必要があります。前もって準備することによって手続きをスムーズに進め、新たな第一歩を踏み出していきましょう。