会社の設立を行うときには、会社の本店所在地を定款に定めた上で法務局で登記を行う必要があります。このときに会社の本店所在地を社長の自宅にするケースは少なくないと思います。
起業する際に約60%は1人で起業するという調査結果があります。1人で起業するときに、オフィスはわざわざ賃貸オフィスやシェアオフィスなど必要ではないと思っている方も多いです。但し、自宅兼事務所で起業してもよい場合と良くない場合があります。
今回は、自宅で起業する場合のメリット・デメリットを解説します。
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目次
起業する際の事務所(オフィス)候補は?
いざ起業をしようと考えた時に、どこにオフィスにしようか悩むところです。一般的に候補に上がるのは下記になります。
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・自宅兼事務所
・賃貸オフィス
・レンタルオフィス
・シェアオフィス
・コワーキングスペース
・バーチャルオフィス
・インキュベーションオフィス(施設)
それぞれの特徴については下記からご確認ください。
(参考記事)【起業検討者必見!】起業時のオフィス選びについて
自宅兼事務所起業のメリット
自宅住所で設立する場合のメリットをご紹介します。主には経費削減や時間短縮などが挙げられます。
初期費用の節約
賃貸オフィスで事務所を借りて起業する場合は、月々の家賃や入居時にかかる初期費用(礼金・保証金・敷金・備品など)がかかってきます。保証金の相場は、家賃の6~12ヶ月分が相場になりますので、そうなると、事務所を借りる初期費用だけでもかなり高額になります。
自宅の場合、こういった費用は発生しませんので、初期費用をかなり節約できます。
自宅の家賃やローン、光熱費の一部を経費にできる
自宅の一部を事務所として使用する場合は、自宅の家賃(持ち家の場合は住宅ローン費)や電気・ガス・水道などの光熱費の一部を経費とする事ができます。経費が少しでも多くなれば、その分所得が減って節税につながりますので、自宅起業のメリットと言えるでしょう。
但し、家賃や光熱費を会社の経費として処理するためには、按分計算(あんぶんけいさん)※を行う必要があるのには注意が必要です。例えば、自宅の3分の1の面積を占める仕事部屋を会社のオフィスとして使っているという場合には、家賃全体の3分の1だけを会社の経費として処理するのが適切です。もし家賃全額を会社の経費としてしまうと、税務署による税務調査が行われた際には経費としての処理を否認されてしまう可能性があります。
また、家賃を経費にできるのは賃貸に住んでいるような場合だけです。持ち家の住宅ローンの支払いなどは経費として処理はできませんので注意しておきましょう。
ビジネスシーンでは、経費を私用と業務用に分ける際に使われる機会が多く、「経費を按分(あんぶん)する」と言われます。按分する際には、基準となる金額、または分量の比率を算出し、それに応じて割り振られれます。
時間短縮する事が出来る
オフィスを借りる場合、物件を探さないといけないですが、自宅の場合、その時間を短縮できます。
そして、自宅以外の場合、通勤時間や通勤費用が必要になりますので、自宅を事務所としていれば、通勤にかかる時間やお金を節約することができるというのもメリットになります。
自宅兼事務所起業のデメリット
自宅兼事務所起業のデメリットをご紹介します。安易に簡単だからと言って自宅で起業すると様々な障害がありますので、検討する際には把握しておきましょう。
時間の縛りがないため、公私の区別がつきにくい
自宅に事務所があると、プライベートと仕事のオン・オフのメリハリがつきにくく、公私の区別がつきにくいです。当然、テレビなどの誘惑も多くなり、仕事に集中できない可能性があります。
会社としての信用力低下
職種にもよりますが、他の会社に営業に行ったり自分の考えたサービスを売り込もうとする場合、事務所兼自宅だと他社からの信用が低くみられることがあります。
但し、インターネットネットによる在宅ビジネスなど、そこまで重要視はされない職種もあります。
関係ない人にも自宅が知られてしまう
会社のホームページなどには自社の本店所在地などを記載することが多いと思いますので、関係ない人に自宅が知られてしまう可能性があります。
また、登記するときに会社の住所を公開しますので、法務局で登記簿謄本を取得すれば、全く関係ない人にも自宅を知られてしまい、関連のないDMなどが多く届く場合があります。
会社に関係者を呼べない
なかなか自宅にクライアントを打ち合わせに招くということは難しいです。その場合、クライアントオフィスに行くことになりますが、かえって時間と費用が多くかかる場合もあります。
契約により登記出来ない場合もある
賃貸住宅では、その住所で登記をしたい場合には、会社登記ができるか否かをオーナーに確認する必要があります。契約上できない場合もありますし、事務所使用の場合には、何かしら追加の敷金などを要求されることもあります。
その他、ポストや表札に会社のプレートを設置しても良いかも確認する必要ありますので、結構手間がかかります。
人との交流が少なく、情報が手に入りにくい
特にシェアオフィスやコワーキングスペースなどは、他社と同一の住所で作業していますので、交流があります。交流があるということはビジネスチャンスにもつながる可能性があります。
自宅兼事務所の場合、そういった機会を作るには、外に出てイベントに参加しなくてはいけないので、シェアオフィスやコワーキングスペースなどと比べて、人との交流が少なく、情報が手に入りにくいと言えるでしょう。昨今はネットやコミュニケーションツールが発展していますので、以前よりは情報や交流がしやすくなっています。
事業に必要な許認可が受けられない場合がある
自宅を事務所にすると許認可が受けられない場合があります。この点については、次の2つの対処法があります。
①法人設立後に事業所を借りる方法
法人を設立したうえであれば、事業所や事務所、店舗の契約は容易になります。その事業所や事務所、店舗で許認可を採れば、なんら問題なく営業することは出来るでしょう。
②個人事業から法人成りする
まずは個人事業として許認可を取得し、その後、法人成りをするという方法があります。個人事業で利用している事業所、事務所、店舗での継続営業であれば、法人としての許認可の取得についても、そうでない場合に比べて容易に取得することが出来ます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?料金面を抑えられることが自宅を事務所とする理由として大きいと思います。その他、開業資金が少なく、インターネットを使った在宅ビジネスの方であれば自宅兼オフィスをお勧めしますが、デメリットも多いので、オフィスを探す際には慎重に検討しましょう。また、自宅で登記をして、ある程度の規模になり、本店住所の変更をする際には、登録免許税(3万円)がかかりますので覚えておきましょう。