会社を設立するときに必要な定款を作成する際に設定するものに「発行可能株式総数」というものがあります。しかし、ほとんどの起業する方は、「発行可能株式総数」についての知識が不足しているため、どのように設定したらよいか分からないというのが現状です。
今回は、起業時に定款で設定する発行可能株式総数の決め方について解説します。
発行可能株式総数とは?
「会社が将来的に何株まで株式を発行できるか」の上限値のことをいいます。
会社はこの発行可能株式総数を超えて株式を発行することはできません。会社法では、株式会社は設立登記のときまでに、発行可能株式総数を定款で定めなければならないとしており、この発行可能株式総数の定めは廃止することはできません。仮に発行可能株式総数を超えて株式を新たに発行する必要が生じた場合は、事前に株主総会の特別決議によって、定款を変更する必要があります。
発行可能株式総数を決める前に決定すべき事とは?
「発行可能株式総数」を決める前に決定しておくべきことは下記になります。
・資本金:会社を経営する上での運転資金
・一株当たりの金額:会社が発行する株の一株当たりの金額
・株式数:会社が発行する株式の総数
「資本金」が決まれば「一株当たりの金額」と「株式数」は以下で決定することが可能です。
「資本金」 = 「一株当たりの金額」 × 「株式数」
例えば資本金の額を100万円として、一株当たりの金額を50,000円と設定するのであれば、自動的に発行される株式数は20株と決まります。ちなみに定款には資本金(記載必要)一株当たりの金額(記載不要)株式数(記載必要)になります。
発行可能株式総数の決め方について
まず決めなければならないことは、発行する1株当たりの株式の金額をいくらに設定するかということです。
一般的には、1株あたりの金額を1万円か5万円に設定する会社が多いようです。
わかりやすいのは1株1万円
例えば資本金が300万円なら、300株が発行されているとすぐにわかります。この株式を二人の株主が50%ずつ保有しているケースなら、150株=150万円ずつ保有しているなとすぐに計算できます。
一方、1株5万円の会社設立も多い
これは2001年(平成13年)までの旧商法で、「無額面株式の発行価額は5万円を下回ってはならない」という規定があったことの名残ですが、現在ではこの規定は撤廃されていますので、特に気にする必要はありません。ただ、1株1万円に比較して、1株5万円は何となく格式があるような感覚がするのも確かです。
1株当たりの価格に上限はありませんので、1株100万円とすることも可能です。今回は1株を5万円に設定して説明します。
前述でも説明した通り、資本金100万円に対して、1株を5万円に設定すると、実際に発行する株式数は20株になります(100万円=5万円×20株)。ここから発行可能株式総数を決めていくことになりますが、実際に発行する20株をそのまま発行可能株式総数とすることも可能です。
何度も繰り返しになりますが、発行可能株式総数とは文字通り、今後どれだけ株式を増やせるか、すなわち増資ができるかという上限数値です。例えば前述の例(一株50,000円・20株発行・資本金100万円)で、発行可能株式総数を200株としておけば1,000万円まで、2,000株としておけば1億円まで、この会社は増資することができるわけです。
一般的な中小企業(非公開会社)では、この発行可能株式総数に制限はありません。何株に設定しても自由ですし、ご自身が100%株主であれば、定款の変更(発行可能株式総数の変更)も簡単にできますので、特別な事情がない限り、当初会社設立時に発行する株式数の10倍(発行可能株式総数=株式数×10倍)としておいて問題はないでしょう。
一方、上場企業などの公開会社では発行可能株式総数は設立時発行済株式の4倍以下と定められています。前述の例でもし公開会社であれば、80株が限度になるということです。今後事業を拡大し、多くの株式を発行する意思がある場合は、発行可能株式総数を多めに設定しておく方が、新たに株式を発行する必要が出てきた場合、後の株主総会での特別決議や変更登記といった手間を省けます。
何故 発行可能株式総数を定めるのか?
会社は様々な場面で、追加の資金を必要とすることがあります。考えられるのが借入、社債発行、増資などです。しかし、増資についてあまり無制限に行えば、他の第三者が多数の株式を取得することにより、既存株主の持ち株比率が低下してその発言権は小さくなってしまう可能性が考えられます。
ここで事前に発行可能株式総数が定められていれば、発行済株式数と見比べることで今後どれだけ株式が発行される可能性があるのか、自分の発言権が小さくなる可能性があるのか、前もって知ることができるというわけです。
つまり発行可能株式総数を定めておく理由は、既存株主を保護する意味合いが強いということです。
まとめ
■ 発行可能株式総数の決め方
・一般的には1株あたりの金額を1万円か5万円に設定する会社が多い
・一般的な中小企業(非公開会社)の発行可能株式総数は株式数の10倍としておいて問題はない
・株式上場するような株式公開会社の場合には発行済株式総数の4倍以下という制限があるので設定の際に注意が必要
・発行可能株式総数という制度は株主を保護する為の制度
株式会社設立時の1株あたりの金額は1万円もしくは5万円が多いということを意識するといいでしょう。
会社設立のプロである専門家(司法書士など)であれば、数多く会社設立案件を行っていますので、不安な場合や、特に今後上場を目指している会社などについては、予め相談しておきましょう。