ビジネス上、従業員、顧客先や提携先とのトラブルを避けるために様々な契約書が存在します。契約書といっても、その種類はさまざまですが、本記事では、起業家やベンチャー経営者にとって身近なものをいくつか取り上げてみます。ここでご紹介したものは取り交わす機会が多い契約書になるので、その内容は覚えておきましょう。
目次
そもそも契約書とは?
顧客や提携先との契約を行う際に書面ではなく、当事者同士の口頭での合意があれば成立する事がありますが、相手方や提携先が「契約をしていない」といった言った言わないのトラブルを口頭だけの契約では招くことは予測されます。
そのようなことを防ぐために、契約内容を正確に確実にする方法として、書面での契約書にする事がビジネス上では一般的となっています。契約書と言うのは、契約内容に対して、締結を行う際に作成する当事者間同士の契約内容を表示した文書の事を意味しています。
いざというときに自分の会社を守ってくれるものでもありますので、しっかりとした契約書を作成しておかないと想定外の損失を負うこともあります。
契約書の必要記入事項について
自分で契約書に記入する必要事項とはいったいどんな事項でしょうか?
契約書はそもそもトラブルを避けるため内容を明確にしておくことが必要です。したがって、事前に後日どのようなことについてトラブルが生じやすいかを検討し、そのようなトラブルに対して契約書の不備がないかをチェックしておくことが必要です。
誰と誰の契約なのか
まずその契約は誰と誰の契約なのか、契約の当事者を明確にしていることが契約書を記載する際のポイントになります。自分が作成する側の場合も同様です。そのうえで、契約当事者の署名+捺印をします。本来ならば直筆で署名し、認め印もしくは、実印を使うことが望ましいですが、簡単な契約ならば省略されることも多いです。せめて当事者関係を明確にしていることを最低限チェックしておきましょう。
【豆知識:契約で記入する「甲」と「乙」基本的な考え方】
※甲:お金を払う人 乙:お金をもらう人
契約の期限・期日
契約の有効期間を定めることが必要です。契約がいつからいつまでのものなのか、契約の有効期限を定めておくことも重要なポイントです。
記入するべき期限は「契約の有効期限」の他に「仕事の納期」「商品の納入日「報酬支払日」などもしっかり記入しておきます。
契約の義務関係
どのような仕事に対していくらの対価が支払われるのかという仕事内容の義務関係を記入します。
納入するモノ・サービスはどのようなものなのか、契約違反の基準はどこにあるのか、違反した場合はどのような処置がとられるのかなどです。自分が契約によって何をするのか、いくら払う・もらうことになるのかを明確にします。
相手方の契約書の確認注意事項
相手先から契約書の締結を求められる場合、必ずチェックしなければいけない事があります。
前述の「誰と誰の契約なのか」「契約期日」「業務関係」は当然ですが、その他にもありますので、ここでは説明します。
不利な条項がないかチェックする
契約書を見る際に、相手方にとって一方的に有利な規定がないか、逆に言えば、自分にとって著しく不利な規定がないかについて確認しなければなりません。具体的には契約書のなかで自分が負うことになっている義務が必要以上に広汎で重いものになっていないか、また自分が相手に対して負ってもらいたい 義務についての記載があるか、記載があったとしても不足がないのかをチェックする必要があります。
尚、自分自身では民法上、刑法上など自分ではわからない点があるかと思いますので、その際には専門家である弁護士や、行政書士に依頼することをお勧めします。
契約の有効性をチェックする
契約を締結したとしても、契約自体が無効であれば意味がありません。契約の締結は自由なのですが、例外的に締結された契約が無効とされることがあります。
ビジネス上で利用する主な契約書とは?
一般的に下記契約書が顧客先や提携先と取り交わすことが通常です。
業務委託基本契約書
業務委託契約書とは、自社の業務を第三者に委託する際に使用する業務内容や条件を書面化させたものです。
業務委託契約書の内容は法律で義務付けられていません。内容は発行者や依頼内容により様々で、自由に決められます。自由度が高いからこそ自分にとって有利な契約内容にもできますし、不利な内容にもなります。
(参考記事)【起業・開業者必見!】業務委託契約書とは?基本項目や注意点を解説
秘密保持契約書
秘密保持契約とは、機密事項を相手方に開示する場合、又は相手方の機密事項を開示される場合に、その秘密情報を他に漏えいしないように約束させるための契約です。
秘密保持契約をしているのにその契約内容に反して相手の機密を第三者に漏えいすると、その会社は差し止め請求を受けたり損害賠償請求を受ける可能性があります。秘密保持契約を締結することによって、機密情報が一般社会に漏えいするリスクを減らすことができます。
(参考記事)秘密保持契約書(NDA)とは?
業務提携契約書
業務提携契約書とは、会社間でお互いに得意な分野で提携したり、業務の一部を他社に委託するときに締結する契約書です。
一般的なものとしては情報共有や事務所共有、技術共有などがあります。その他、資本提携という形も業務提携契約の一つになると言えるでしょう。
業務提携は双方的なものですが、一方的なもので近いものでは業務委託契約があります。業務委託はアウトソーシングと言われるように、業務の一部委託、委任などのことを指すことが多いです。この場合も重要なことは、契約書は、タイトルで中身が決まるのではなく、中身でどんな契約なのかが判断されますので自分がしたいことについて悩まれるようでしたら、専門家にご相談されることをお勧めします。
(参考記事)業務提携契約書とは?主な内容について解説
金銭消費貸借契約書
お金を借りるときに使用する契約書で、いわゆる借用書に該当するものです。、いつ・誰が・誰に・どのような理由で・いくら貸したかを契約書として残しておきましょう。
金銭消費貸借契約書を作成していないと、貸した相手方が支払いをしなくなった場合に、貸したことの証明を自分がしなければならなくなり、お金も時間もかかってしまいます。返済期日や利息遅延損害についても定めておきましょう。
請負契約書
事業を円滑に進めるにあたり、非常に重要なものが請負契約になります。元請、下請などの表現もありますが、請負契約は、契約の完了をすることが目的になります。よくあるものは建設業かと思いますが、あることの完成完了で請負としての仕事が終わります。
一方、見かけ上似ているように思われるものに委任契約があります。請負契約は仕事の完成完了が目的になりますが、委任の場合には完成完了ではなく一定の行為をすることが目的になります。形があり完成を必要とする仕事なら請負、完了を求める仕事なら委任という形で考えて契約締結をしたら良いでしょう。
(参考記事)請負契約書とは?記載事項や印紙について解説
取引基本契約書
特定の企業と数量商品等が多岐にわたる取引が確定した時、取引の基本方針となる契約書を取り交わしておくことがその後の取引を円滑にします。型式などはその取引内容によって大きく変わってきますが、取引の基本方針を確定しておくことで具体的な取引において、簡易な書類を交わすことのみで継続的な取引をすることができます。
売買契約書
商取引においては、継続的な取引が多いため、基本的な取引条件を盛り込んだ契約書を作成し、それを元に取引をすることも多いです。その際には支払いに関して、締め日と支払日などの期日を決めておくことで毎月の支払いを確定するような方法を示しておくのが良いでしょう。
譲渡契約書
譲渡契約書とは、権利や財産、株式、法律上の地位などを他人(他社)に譲り渡すことを記載した契約書です。金銭対価のある譲渡は売却、対価のない譲渡は贈与とされます。譲渡の対象となる権利の具体例としては債権、著作権、特許権、意匠権などが、財産については不動産や自動車など様々あります。
販売店・代理店契約書
販売店・代理店契約書とは、店とメーカーとの間で取り交わす契約書です。販売店は製品を仕入れて在庫を抱え、販売価格との差額を利益とします。一方、代理店はメーカーの代理として販売活動を行うもので、在庫リスクはなく、販売手数料の形で利益が入ります。なお、特約店はメーカーから販売活動を委託される点では代理店と同様ですが、一般的に代理店の場合はメーカーが購買客との売買契約当事者になるのに対して特約店は契約当事者になる点で区別されます。
まとめ
顧客・受託者にとって不測の事態が起こったとき、話し合いによって解決できればベストですが、巨額のコストや多くの人物が関わっていたりすると、難しいケースが多いものです。そんなときに双方が合意した契約書があると、安心して交渉に挑めますので、 あらゆるケースを想定し、気持ちよくビジネスができるようにまずは契約書について把握し、必要であれば契約書の締結を行いましょう。