今回は、個人事業主・フリーランスとして利益を出していくための基本でもある、経費計上の基礎知識について解説していきます。
経費についてしっかり理解して、健全な経営を行っていきましょう。
目次
経費とは?
『事業を行う上で必要な費用(コスト)』
経費計上についてですが、これはどれが経費にできて、どれができないといった明確なルールはありません。経費の基本的なルールとしては、「事業に関係する費用か?」「使用したもののみが経費」になります。
事業主本人が事業のために使った費用だと認識していれば基本的に経費計上するようにします。そして、それを経費と認めるか否かは税務署の判断です。例えば、自宅で作業をしている方は自宅家賃の一部を経費にすることもできますし、逆に生活に関係する費用や、売上が数百万円規模に対して接待交際費が年間100万円以上あれば、いくら事業関係の支払いだとしても「怪しい」と税務署に疑われてしまいます。
金額や種類は気にせずに、まずは事業に関わる出費は経費計上することを前提に考えておくと良いでしょう。
経費が増えれば税金が下がる
結論からお伝えすると、経費が増えるほど確定申告後に納める税金が下がります。税金は、基本的に課税所得に税率をかけて金額が決まります。税率はそう簡単には変えられませんが、課税所得はしっかり経費計上しておくことで簡単に下げることができます。課税所得は、『収入-必要経費-控除』で計算します。つまり、経費を多く計上することで、収入は維持したまま税金が下げられるのです。
しかし、気を付けて欲しいことが無駄に経費を使わないということです。ここでしっかり考えてほしいことは、本当に事業の発展・成長に繋がる商品・サービスなのか?ということです。いくら経費にできて節税に繋がるとは言っても、購入した物が必要ない物であれば、そもそもが無駄使いと言えるのです。営業をされた場合だけに限らず、ご自身で経費を使う時も「本当に必要なのか?」はその都度しっかり頭の片隅に置いておくようにしましょう。
個人事業主が経費計上するために必要なものとは?
経費計上するために個人事業主・フリーランスの方がきちんと保管・作成しておく物をお伝えします。
領収書やレシートなど
なんとなく認識はされているでしょうが、経費計上するからには、その証拠にもなる領収書やレシート、請求書などはきちんと保管しておくようにしましょう。
また、確定申告をすれば、それら領収書などは捨てていいということはなく、一定年数保管しておかなくてはなりません。白色申告の場合(5年間)青色申告の場合(7年間)の保管期限があります。わざわざノートなどに細かく詳細を書いて保管する必要はありませんが、いつの領収書がどこにあるかぐらいは分かるように管理しておきましょう。
領収書でなくてはいけないと思われている方も多いですが、支払い先や日付、金額、明細がわかれば、レシートでもかまいません。たとえばプライベートの買い物と事業用の買い物がひとつのレシートに混ざっていても大丈夫です。レシートの裏面などに「ボールペン100円分は仕事用」などとメモしておきます。また、取引先との飲食代などの領収書は「取引先の会社名」「相手の名前」「人数」「目的」などをメモします。
帳簿
また、個人事業主として確定申告をするのであれば、帳簿の作成も義務付けられています。事業用財布から経費を使えば「現金出納帳」、銀行振込をしたなら「預金出納帳」なども関わってきます。青色申告で65万円控除を受けたいのであれば、「仕訳帳」や「総勘定元帳」も作成する必要があります。
細かい内容については、税理士などの専門家に事前に確認すると良いでしょう。
個人事業主が経費にできるものとは?
前述でもお伝えしたように、経費にできるものは事業関係の支払いである、そして使用したもののみであるということが言えます。では、個人事業主の方が経費にできる支払いをご紹介します。
個人事業主が経費にできるもの一覧
・仕入高
売上に直結する原料や材料などを外部から調達した際にかかる経費
・租税公課※
個人事業税、自動車税、固定資産税、印紙税などを経費計上する際に使う
・水道光熱費
水道代、電気代、ガス代などの経費
・旅費交通費
電車、バス、タクシー、SuicaやPasmoのチャージ、飛行機などの経費
・通信費
電話代、切手、はがき、インターネット通信料、サーバー代などの経費
・広告宣伝費
インターネット広告や新聞、折込など、様々広告の種類があると思いますが、事業を宣伝するための経費は広告宣伝費として経費計上できます。
・接待交際費
取引先の接待(飲み会、忘年会、飲食費、ゴルフ等)や贈答(お中元、お歳暮、プレゼント、慶弔見舞金)のための経費。
取引先との親睦を深めるための食事や接待などで使った費用は、接待交際費として経費計上ができます。
・旅費交通費
営業先に向かう時の電車賃や、移動の際に車を使っているのであればガソリン代などが交通費になります。
事業の関係で遠方に出かけた時の宿泊費も旅費交通費となります。
・消耗品費
蛍光灯や事務用品、作業服など短期間で消耗する備品などの経費
・減価償却費
土地や建物、機械などの固定資産の価値の減少を経費計上する場合に使用
・外注工賃
業務委託などで外部の会社や個人に業務を委託するための経費
・雑費
他の勘定科目に含まれない少額の経費
・会議費
打合せや会議のための会議室やランチミーティングのお弁当代やお茶代など飲食費
・新聞図書費
事業に関する内容でも書籍を購入した場合は、新聞図書費として経費計上ができます。
ビジネス書ではなくても事業に関われば良いのですから、業界の雑誌でも経費にはなりますし、極端な話漫画でも経費として認められる可能性もあります。
・研究・研修費
業務に関連するセミナー参加費用や会場費用
租税公課とは、納めた税金や公的な支払いを経費にする時の勘定科目です。ただ、こちらも事業に関わる税金・公的支払いのみで、個人に関わる税金などは経費にできません。
代表的な租税公課にできるものには、個人事業税、固定資産税、不動産取得税、自動車税、登録免許税、印紙税などがあり、租税公課できないものは、所得税、相続税、住民税などがあります。
逆に、個人事業主が経費にできないものとは?
以下は個人事業主は経費にできません。
・自分への給与
・健康診断や人間ドックの費用
・仕事で怪我をした場合の治療費、病院代
・国民健康保険料、生命保険料
・スポーツクラブやスポーツジムの会費
・租税公課できないもの(所得税、相続税、住民税など)
・持ち家の場合の自宅への家賃
・スーツ、ワイシャツ、メガネ
プライベートでも着用できる衣服や靴は経費として認められません。ただし作業着など業務での使用目的が明確な衣服は「消耗品費」として計上できます。
・美容院代、散髪代
・個人事業主と専従者のみの旅行、飲食
・敷金(経費ではなく資産計上する) など
1つあたり10万円(又は30万)以上する物は『減価償却』して毎年経費計上する
白色申告の個人事業主は10万円未満の備品のみ一括経費計上可能で、10万円以上になると資産計上して減価償却する必要があります。青色申告の場合は「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」により、30万円未満まで上限が拡張されます。
減価償却とは、白色申告の場合、1つあたり10万円以上の高額な経費を使った場合に、購入した年だけではなく、翌年以降にも分割して経費計上するということです。
まとめ
前述でもお知らせしましたが、経費の上限について、正確な定義はありません。「事業を推進するために合理的な範囲で」になります。
専門家である税理士でも税務署の担当者でも見解が異なる可能性がありますので、例えば、自分が社長で、従業員が経費を申請するときに許容できるか否かという視点で判断するのが良いかと思います。