起業して、税理士と顧問契約をしたが上手くいっていないと感じている経営者の方は多いのではないでしょうか?上手くいっていない理由は様々だと思いますが、税理士は会社経営を続けていく上で欠かせないパートナーです。
今回は、税理士を変更するときのタイミングや注意するポイントについて解説します。
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税理士の仕事とは?
税理士は、税理士法にもとづいて認定された国家資格になります。税理士法では、税理士だけが行うことができる業務(独占業務)を定めています。具体的には「税務書類の作成」「税務代理」「税務相談」などになります。この業務を税理士資格のない方に相談することはいくら無償でも法律に反することになります。専門的な作業の為、本人が行うと大変時間がかかり、正確な処理も出来ません。まさに税理士に依頼する最も適した業務になります。
(参考記事)起業家必見! 顧問税理士に依頼できる業務とは?
実際、税理士をつけないといけないというようなビジネス上の決まりはありません。現在、自分でも操作が可能な会計ソフトウェアも登場し、全くの素人でも税務の申告ができる時代になっているとも言えるでしょう。
しかし、今現在も、多くの経営者は税理士をつけているという状況があります。その理由は、自分の事業に集中したいからとか、節税対策を提案してくれるなど昔からの理由の他に、最近では経営のアドバイスが欲しいからとか、金融機関の融資の際に有利だからとかいった理由が多くなってきています。
税理士変更を検討するタイミングとは?
税理士の変更が多いタイミングには、大きく分けて以下の4つあります。
税理士の対応の不満
依頼していた業務への対応の不満や、契約時に約束していたことが守られない(訪問が無かったり等)、仕事のミスが多い、税務調査で指摘される点が多かったなど、税理士の資質や能力に不満を抱き、妥協できないレベルであれば、税理士を変えることを検討するタイミングでしょう。
税理士へのニーズの変化
企業(事業)のステージによって、税理士に求めることも変化してきます。起業直後は会計業務のサポートだけでも心強かったのが、事業拡大とともに、資金調達や数字から鑑みる経営目線での提案などの相談に乗ってもらいたいというニーズが強くなっていきます。そういった際に、現状の顧問税理士では対応できない場合、税理士の変更を検討するタイミングになります。
経営者が変わるタイミング
事業承継で経営者が代替わりしたり、本社から違う経営者が来たりと、新たな経営者を迎え入れた場合などには、経営者と税理士との関係を見直す機会になります。経営者が変われば事業の方針も変わるもので、自ずと税理士に対して求められるものも変わり、より適切な人材に変更されるのが自然です。また、古い付き合いの税理士で先代経営者に不満があるが長い付き合いなので…と我慢をしている場合があります。その場合は、経営者の交代は税理士見直しのきっかけとなります。
税理士事務所の担当者の変更
同じ税理士事務所内とはいえ、担当税理士が変わってしまうと改めて信頼関係を構築することと同様であり、それならば別の税理士との比較も検討したいと考える方も多いようです。
税理士変更の注意点
ここからは、税理士を変更する際の注意点について説明します。
顧問税理士との契約書の内容を確認する
例えば、すぐに資金調達したいので税理士変更したいといって契約解除できない理由で多いのが、現税理士との顧問契約をする際に結んだ契約内容がすぐに解約できないということです。契約によっては、解約の申し出を3ヶ月前に通知する義務があるといった内容が書いてあるケースもあるので、事前に契約書を確認しておきましょう。また、報酬をいつまで支払う義務があるのかという点も確認しておくことと良いでしょう。
次の税理士候補を見つけておく
今の税理士との契約を解除する事ばかり考え、いざ変更となった時に、次の受け皿の準備ができていないと大変困ります。先に解約をしてしまい、次の税理士が見つからないまま税務署から連絡が来たりすると、対応に慌てることになるかもしれません。そんな事態にならないように、すぐに引き継いでもらえる税理士を見つけてから前任の税理士との顧問契約を解約しましょう。
次の税理士に対して期待することを明確にしておく
税理士を変更するきっかけがどのようなものにしろ、現在の税理士では不十分・不的確と判断されている訳で、代わりとなる税理士には、あらためて求める資質やノウハウがあるはずです。そのことを明確にして次の税理士を選ばないと、税理士の変更に失敗する可能性が高くなります。
預けてある資料は回収する
顧問税理士には、多くの会社の重要書類を渡しているケースがほとんどです。以下の書類は特に注意をして、確実に返却をしてもらうようにしましょう。
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・請求書、領収書など金銭的なことが記載されているもの
・給与関係の書類(扶養控除申告書も含む)
・決算書(決算後の場合)、申告書、申請書
・総戡定元帳
・試算表や仕訳帳
・固定資産台帳
その他、償却資産申告書、消費税の届出書など、預けているものはすべて回収するようにしましょう。
税理士によっては、解約後の書類返却がスムーズに進まないことがありますので、注意が必要です。解約の申し出は早めに行い、実際の解約手続きが完了する前に書類等の返却が完了するように進めましょう。
引き継ぐ内容や方法とは?
無事に顧問契約を解約できた後は、新しい税理士への引き継ぎがあります。引き継ぎといっても、新しく顧問契約をするときと同様に、「総戡定元帳」や「申告書」などの書類を新顧問税理士に提出する程度です。新顧問税理士はそれらの書類を頼りに会社のデータを作成します。なお、顧問税理士を変更しても税務署へ届出をする必要はありません。
税理士を変更するのに適切ではないタイミングとは?
適切なタイミングについてご紹介しましたが、逆に適切ではないタイミングもあります。
決算申告前
決算申告前の時期は、申告に向けて1年分のデータの集計に取り掛かっています。決算対策や特別な処理などもあり、申告の直前に税理士を変更すると、重要な情報を見落としたり、処理にミスが出る可能性があります。そのため、もし税理士の変更を考えた場合は、決算申告が終わってからにしましょう。
税理士が忙しい時期
税理士側が忙しい場合は、確認漏れが出る可能性があります。もしくは、業務を後回しにされる可能性もあるため、税理士が忙しい時期だけは避けましょう。
特に確定申告(2月~3月中旬)は一番忙しい時期です。その他、新顧問先が顧客数が多い場合、全体で決算月がバラバラなケースが多い為、予め新顧問先に確認するといいでしょう。
まとめ
顧問税理士変更の手続き自体はそれほど難しいものではないかもしれません。しかし実際にはスムーズに引き継ぎができないこともありますので、あまり頻繁に税理士を変えることはおすすめできません。前述でお知らせしたポイントを確認し、今後長く付き合える税理士を選んで行きましょう。
そして、安い報酬でやってくれる税理士が、必ずしもよいとは限らないという事も念頭に置いておきましょう。最初はいいかもしれませんが、安価な報酬の仕事は、金額成りの仕事になってしまうものです。結局高くつくこともありますので、金額だけで選ぶ事はやめましょう。
起業家にとって、税理士は経営者のパートナーとなり得る存在です。また、頻繁な税理士の変更は、会計・税務の業務に支障を来す恐れもありますので、万全を期してこれはと思える税理士を選んでいきましょう。