個人事業主が知っておきたい『青色申告』について解説

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年末に近づくにつれて、個人事業主の方は確定申告の準備に入るかと思います。そもそも青色申告について知っていますでしょうか?個人事業主が確定申告をするときは、「青色申告」「白色申告」どちらかでする必要があります。

今回は、個人事業主が知っておきたい『青色申告』について解説します。

青色申告とは?

個人事業主が確定申告をするときは、「青色申告」「白色申告」の2つの方法があります。
確定申告で必要な簿記には、単式簿記と複式簿記の2種類がありますが、現金の出入りを単純に記帳する単式簿記に対して、複式簿記は、すべての取引を借方と貸方に分けて記帳して、整理しなければなりません。そして、青色申告では、その難しいほうの複式簿記によって、帳簿の記録を行うことになります。

個人事業主の場合は「所得税の青色申告承認申請書」を、法人の場合は「青色申告の承認申請書」を、それぞれ事前に所管の税務署へ提出する必要があります。税務署に、法人は会社設立の日から3ヶ月以内、個人事業主は1月1日~1月15日までに開業した場合はその年の3月15日までが提出期限、1月16日以降に開業した場合は開業日から2ヶ月以内が提出期限になりますので注意が必要です。

ちなみに、開業してから何も申請を出さなければ、自動的に白色申告の扱いになります。『年間売上-必要経費=事業所得』この事業所得に応じて税金を払うシンプルなスタイルです。

青色申告対象者とは?

青色申告対象者に当てはまるのは、以下3種類のいずれかの所得がある方になります。

・不動産所得:土地や建物などの不動産の貸付け、船舶や航空機の貸付けによる所得
・山林所得:山林をその取得日以後5年を経過した後に伐採して譲渡、またはそのまま譲渡したことによって得た所得
・事業所得:農業や漁業、製造業やサービス業、その他の事業などを通じて得た所得のうち、譲渡所得と山林所得を除いたもの

青色申告ができない条件とは?

事業所得と認められず、サラリーマンの副業所得など雑所得だと判断されると、青色申告は利用できません。

青色申告ができない条件

・会社員が勤務先から受け取る給与や賞与
・会社員の退職金など退職に係る収入
・土地、建物、ゴルフ会員権などの譲渡による収入
・株の配当金や投資信託の分配金などによる収入
・預貯金や公社債の利子などによる収入
・競馬などギャンブルの払戻金や生命保険の一時金など
・どれにも該当しない所得

青色申告のメリット

青色申告の申請書を税務署に提出することによって様々なメリットがあります。

青色申告特別控除

複式簿記で記入する場合、最高65万円の所得控除が受けられます(単式簿記は10万円)。売上から経費を引いた上でさらに10万円~65万円を差し引くと「所得」が減少し、納税額も減少します。

なぜなら、所得税額は「所得」に所得税率をかけて算出されるからです。そしてその所得税率は「所得」額が大きくなるほど、税率も大きくなる累進課税制度により決められます。「所得」が小さければ税率も小さくなるので、納税額を抑えられるでしょう。

青色申告者の専従者控除

「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出した個人事業主は、生計を同じくする家族・親族の給与を経費に算入することができます。但し、経費にするには、以下2つを押さえておかなければなりません。

・その家族が「青色事業専従者※」として認められる条件を満たしている
・「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出

■青色事業専従者とは

事業を手伝ってくれる親族のことです。しかし青色事業専従者として認められるには、以下の条件を満たしている必要があります。

・生計を一にする配偶者や親族であること
・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
・その年を通じて6ヶ月を超える期間(一定の場合には事業に従事できる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること

欠損金繰越控除(赤字が繰り越せる)

法人であれば、その年に発生した欠損金(赤字)を最長10年間繰り越し、翌年以降の黒字と相殺することができます。個人事業主の繰り越し期間は3年です。そして、その翌年が黒字になったら、繰り越した赤字と相殺して「所得」を減らせます。

最長で3年間は赤字を繰り越せますので、赤字・黒字を上手く相殺できれば、納税額を大幅に抑えられるかもしれません。

少額減価償却資産の特例

30万円未満の減価償却資産を一括で経費にできます。業務に必要な道具などを30万円未満で購入した場合、すぐ経費にできます。

10万円以上のモノは通常「減価償却資産」として計上し、数年かけて経費として計上しなければいけません。しかしこの特例を利用して費用にできれば「所得」が減少し、納税額も減少させられます。ちなみに特例が利用できるのは、2020年3月31日までなので、ご注意ください。

貸倒引当金

貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)とは、売掛金や貸付金などについて、回収が困難になると見込まれる場合に、あらかじめ損失の見込額を計上し、当期の損失とするものです。白色申告でも回収不能が確実の場合には、個別に評価して貸倒引当金を計上することが認められますが、青色申告の場合には、その事業を経営する上で生まれた売掛金、貸付金など、金銭債権を合計した帳簿価額の5.5%以下を一括して必要経費として認められます。

尚、個別評価により貸倒引当金が設定された場合、その金額計算の基礎となった個別評価金銭債権は、一括評価を行う帳簿価額の合計額から除かれます。

青色申告のデメリット

青色申告のデメリットは手続きや処理の難易度が高く、手間がかかることです。

青色申告の帳簿作成&確定申告書類の作成が難しいです。複式簿記は簡易簿記に比べると複雑で、簿記の知識のない方にとっては難しく感じるでしょう。また確定申告時に55万円の控除を受けるには、作成する書類の量も多くなります。65万円の控除を受けるとなると、新たにいくつかの手続きが必要です。

承認申請の提出期限

新たに青色申告の申請をする人は、その承認を受けようとする年の3月15日までに、最寄りの税務署に納税地の所轄税務署長に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。但し、その年の1月16日以後に、新規に業務を開始した場合には、その開始日から2ヶ月以内であれば提出することができます。

《例》
・2020年分(2020年1月~12月)を青色申告したい人は2019年3月15日までに申請書を提出
・2020年6月10日に開業する人は、2020年8月10日(2ヵ月以内)までに申請書を提出

この期限を過ぎると青色申告は利用できないので、ご注意ください。また現金式簡易簿記を利用する方は、上記の申請書ではなく「所得税の青色申告承認申請書現金主義の所得計算による旨の届出書」を提出します。

青色申告が取り消されるケースがある?

税務署へ提出する帳簿に不備がある場合や、そもそも帳簿をつけていないといった場合は、当然のように青色申告の取り消し対象となります。主なケースは以下になります。

・帳簿の作成をしていないことが分かった時
・帳簿の不備で所得の計算ができなかった場合
・所得金額・欠損金額を隠ぺいしたとき
・2年続けて確定申告の期限を過ぎてしまう

そして、青色申告がいったん取り消されると、1年間は再申請ができません。青色申告の適用は申請の翌期になるため、再適用は最短でも翌々期になります。当然ながらこの間に生じた欠損金を繰り越すことはできませんが、過去の青色申告承認期間中に発生した欠損金については繰越控除を受けられます。

(参考記事)青色申告が取り消されてしまうケースと再申請の手続きについて解説

青色申告で確定申告するときに必要な書類とは?

青色申告で確定申告する際に必要な書類は、控除額や赤字・黒字によって、提出書類が少し異なります。

・10万円控除:「申告書B」「所得税青色申告決算書(損益計算書)」
・55・65万円控除:「申告書B」「所得税青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書)」
・赤字の場合:「申告書B」「所得税青色申告決算書」「申告書第四表」

国税庁のサンプルがありますので、青色事業専従者給与に関する届出書はこちらからご確認ください。

「所得税青色申告決算書」には4種類あり、あなたの事業内容や記帳方法により異なるので、しっかりと確認してから作成を始めましょう。また控除を受ける際は添付書類なども別途必要になるので、確認しておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?青色申告制度は、数々の特典が得られるので、本格的に事業を行う場合には、青色申告を選択することをおススメします。

ちなみに、個人事業主の人で報酬を支払われる際に源泉徴収される場合もあると思いますが、給与所得者と異なり、確定申告が必要なので青色申告にすることも可能です。帳簿記帳義務はありますが、取引を正確に記録し、把握することは経営する上でも重要なことです。いったん青色申告を選択してやってみたところ、会計処理が大変というときは、後から白色申告に戻すことも可能になります。

自分の事業に集中したい、節税対策をしたい、確定申告を任せたいなどを思っている方は税理士と顧問契約を検討しましょう。確定申告時期にいきなり依頼しても対応してもらえない場合がありますので、前もって税理士に声をかけておきましょう。

(参考記事)いきなり依頼しようとする考え方は危険!?税理士事務所の忙しい時期とは?

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