一般社会を取り巻く法律が数多くあるように、企業を取り巻く法律もたくさんのものがあります。そして法律は、知らなかったからといって、規制を免れたり、罰則を免れたりすることはできません。また、中小企業だからといって、法律の適用が手加減されるわけでもないです。
法律の遵守は必要不可欠ですが、さらに一歩進めて、法律を経営に生かすこと、すなわち会社経営の各部門で有効に法律を使いこなすことが、これから会社を飛躍、発展させるために必要なポイントとなります。
今回は、事業にまつわる法律や規制についていくつかご紹介していきます。
※この記事を書いているVector Venture Supportを運営している株式会社ベクターホールディングスが発行している「起業のミカタ(小冊子)」では、更に詳しい情報を解説しています。無料でお送りしていますので、是非取り寄せをしてみて下さい。
事業にまつわる法律や規制について
会社法
会社の種類や設立・解散手続き、組織、運営、資金調達(株式、社債など)、管理などについて規律する法律です。会社にかかわる法律は多岐にわたり、取引においては、民法や商法、税制に関しては法人税法や所得税法などの知識も必要です。
労働基準法
人を雇う時の労働条件(最低基準)や雇用契約の締結、就業規則の作成など、会社や事業所の労働環境の管理責任者となる事業主が守るべきルールを定めた法律です。
独占禁止法
独占禁止法の正式名称は,「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。市場競争を促進させるための法律のことで、公正で自由な競争を促進し、事業者の創意工夫によって、より安く優れた商品を提供して売上高を伸ばすことを目的としています。独占禁止法では、市場の私的独占や不当取引などが禁止されており、違反した場合は、課徴金や罰金などの罰則が科せられる可能性があります。
個人情報保護法
個人情報を取り扱う事業者(個人情報取扱事業者)に対して、個人情報の取り扱い方法を定めた法律で、「個人情報の有効活用」と「個人情報の保護」が目的になっており、適切に個人情報を取り扱うようにして下さいというのが、個人情報保護法となります。
-
・個人の氏名・住所・生年月日・電話番号など本人を特定できる情報
・防犯カメラに記録された情報や音声(本人を識別できるもの)
・メールアドレスと氏名など本人を特定できる情報
・名刺情報
-
・個人情報の、利用目的を特定して通知すること
・しっかりと安全に管理をすること(組織的・人的・物理的・技術的)
・本人への開示(要求には応える)すること
・苦情対応の体制をとり適切に対応すること
違反者は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金と罰則規定もあります。
不正競争防止法
不正競争防止法とは、事業者同士が正当な営業活動を遵守するために「正しい競争」の形を守る法律です。公正な競争を阻害する行為を禁止すること、そのような行為の被害にあった事業者への救済措置を通じて、公正な市場を確保することが目的です。
特定商取引法
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。 具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。
不正アクセス禁止法
正確には「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」と呼ばれます。不正アクセス行為や不正アクセス行為につながる識別符号(IDやパスワードなどを指す)の不正取得・保管行為、不正アクセス行為を助長する行為等を禁止する法律です。不正アクセスを行うと不正アクセス罪に問われ、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
下請法
正式名称は、『下請代金支払遅延等防止法』です。企業などの「親事業者」から中小企業などの「下請事業者」を守ることを目的に定めら法律のことです。親事業者と下請事業者のお互いにとって公平な取引が行われるよう定められており、主に金銭のやりとりに関するトラブルを防止する法律と言えるでしょう。
景品表示法
景品表示法は、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」と言います。商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを規制し、提供する側がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守る為のものです。
-
・実際の内容よりも著しくよく見せる(優良誤認表示)
・実際の取引よりも著しくよく見せる(有利誤認表示)
・その他、誤認させるおそれのある表示
顧客に対し、懸賞やプレゼントを提供する場合には上限があります。本来の価値よりも大幅に高いものは禁止されていますし、業種によっては個別の法律でさらに規制されていますので注意が必要です。
事業者がこちらで掲げたような不当な広告をすると調査が入り、場合によっては措置命令や課徴金納付命令を受けることがあります。
著作権法
著作物並びに実演、レコード、放送、有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定めた法律です。これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とします。
マイナンバー法・番号法
正式には「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」という名前の法律です。日本国民全員に割り振られているマイナンバーは、税金をはじめ幅広く活用されていく予定ですが、その取得や保管、活用などについて定義されており、正当な理由なく特定個人情報ファイルを提供した場合には、個人情報保護法よりも重い罰則が課せられます。
迷惑メール防止法
迷惑メール防止法(特定電子メール法)では「原則としてあらかじめ送信の同意を得た者以外の者への送信禁止」「一定の事項に関する表示義務」「送信者情報を偽った送信の禁止」「送信を拒否した者への送信の禁止」などが定められています。違反の状況により「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(法人の場合は3,000万円以下の罰金)」が課せられますので、名刺交換した相手に宣伝メールを送る際にも注意が必要です。
わからないときや困ったときには専門家に相談しましょう
詳しい事を知りたい時には、法律のことなら弁護士、税金のことなら税理士または公認会計士、行政の手続きについては行政書士というように、それぞれの専門家に相談するといいでしょう。自治体や個々の事務所でも無料相談を実施している場合もあります。分からないことがあった際には、早めに相談することで適切な対応であったり、トラブル回避にもつながります。
弁護士
・「法と企業の番人」
訴訟などの法律相談に対して、起業家や中小企業にとって、これまで顧問弁護士は身近なものではありませんでした。顧問弁護士は、主に法律相談、契約書のチェック、その他にも、訴訟対応や社内体制の構築等、会社の法律問題に関する仕事を幅広く行うことが出来ます。最近は、リーズナブルな料金で提供している事務所や起業・ベンチャーに特化した事務所も増えてきております。
司法書士
・「法人登記の際に登記の申請代理をおこなえる専門家」
司法書士とは、司法書士法に基づく国家資格であり、専門的な法律の知識に基づき登記並びに供託の代理、裁判所や検察庁、法務局等に提出する書類の作成提出などを行います。さらに、法務大臣から認定を受けた認定司法書士は、簡易裁判所における民事訴訟、民事執行、民事保全、和解、調停などにおいて当事者を代理することができます。
行政書士
・「公的な書類を作成する際に代行してくれる専門家」・「許認可申請を代行してくれる専門家」
行政書士法に基づく国家資格で、官公庁に提出する書類および権利義務・事実証明に関する書類の作成、提出手続、行政書士が作成した官公署提出書類に関する行政不服申立て手続(特定行政書士(後述)の付記がある者に限る)等の代理、作成に伴う相談などが出来る専門家です。その他、飲食店を開業するには、まず保健所や警察署に必要書類を提出し、飲食業としての基準を満たしているかどうかの判断をすることも行政書士の仕事です。
税理士
・「節税や税務アドバイスが行える専門家」・「資金調達を相談できる専門家」
税理士は、税務に関する専門家のための国家資格であり、税理士法に定める税理士となる資格を有する者のうち、日本税理士会連合会に備える税理士名簿に、財務省令で定めるところにより、氏名、生年月日、事務所の名称及び所在地その他の事項の登録を受けた者をいい、主に事業で発生した税金の申告の代行や税金の節税アドバイスなどを行います。そして、お金廻りの専門家なので、資金調達関連の相談も可能になります。
公認会計士
・「監査・会計の専門家」
公認会計士の資格は、弁護士や医師とともに、自由業の三大国家資格といわれています。公認会計士の仕事の内容は、バラエティに富んでおり、監査業務、会計業務、コンサルティング業務、税理士として行う税務業務など多岐にわたります。「会計士」とも呼ばれます。
社会保険労務士
・「社会保険に加入する際、手続きの代行を行ってくれる専門家」・「労務全般の専門家」
社会保険労務士とは、労働関連法令や社会保障法令に基づく書類等の作成代行等を行い、企業を経営していく上での労務管理や社会保険に関する相談、指導を行う専門家です。「社労士」とも呼ばれます。
弁理士
・「知的財産に関する専門家」・「商標・特許の相談、手続き依頼」
弁理士は、産業財産権を専門としており、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの知的財産権を取得したい方のために、代理して特許庁への手続きを行うのが主な仕事になります。
中小企業診断士
・「経営に関する専門家」
中小企業の成長戦略策定や各種制度活用の助言のほか、起業、資金調達、集客、ITなど幅広い経営課題に対応します。そして企業と行政・金融機関などをつなぎ、専門知識を活用して経営支援を行います。
まとめ
事業にまつわる法律や規制についていくつかご紹介しました。企業の経営者であれば一度は目を通しておくことをお勧めします。