会社設立時の資本金(出資金)の払込みについて解説

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法人(株式会社や合同会社)を設立する際には、必ず資本金(出資金)の払込みをする必要があります。資本金の払込のタイミングを間違えてしまうと、会社設立ができなくなるリスクがあります。

そこで今回は、会社設立時の資本金(出資金)の払込みについて解説していきます。

資本金(出資金)の払込みについて

資本金は、事業を行うための元手となる資金です。会社設立の際には、資本金払込みも欠かせない手続きです。

会社を新しく設立するときには、定款で定めた設立時の資本金額を、所定の銀行口座に現実に払い込まなくてはなりません。もっとも、会社はまだ設立手続き中なので世の中に存在していませんから、会社名義の銀行口座はまだありません。そのため、便宜的に会社設立の発起人となる人の個人口座に対して定款記載の資本金額を振り込むことになります。

そして発起人個人の銀行口座を便宜的に資本金入金用の口座として使うことになるのですが、発起人が複数人いる場合には少し注意が必要です。発起人が複数人いる場合には、発起人総代となる人の個人口座を資本金入金用の口座として使います(発起人総代は通常設立後には代表取締役となります)。

発起人が複数人いる時には、それぞれの発起人が負担する資本金の金額を設立事項で定めているはずですから、それぞれの人が正しい金額を入金したかどうかがわかるようにしておかなくてはなりません。そのため、発起人総代の個人口座への入金方法は「預け入れ」ではなく、お金を入れた人の名前が銀行通帳に表示される「振込」で行わなくてはなりません。なお、発起人が1人だけの場合は預け入れでも問題ありません。

資本金の払込みはどのタイミングで行うのか?

会社設立の手続きには一定の流れが存在します。立ち上げる会社が株式会社と合同会社では設立の流れが少し違うため、資本金払込みのタイミングも異なるので注意してください。

まずは、会社設立の流れを簡単に説明しながら、払込みのタイミングを解説します。

株式会社設立でのタイミング

株式会社設立の流れは以下のとおりです。

・定款の作成
・定款の認証
・資本金払込み
・登記申請(設立日)
・税務署や自治体に開業届などの提出
・会社の開始

株式会社を設立する場合は定款を作成し、会社の所在地を管轄する公証役場で認証してもらった日以降に資本金払込みを行います。事前にどれだけの金額を払い込むのかを決めておく必要があります。資本額を決めるタイミングは、商号の決定や役員報酬額の設定、印鑑の作成が行われる設立準備の段階です。

合同会社設立でのタイミング

合同会社設立の流れは以下のとおりです。

・定款の作成
・資本金払込み
・登記申請(設立日)
・税務署や自治体に開業届け出などの提出
・会社の開始

合同会社の場合、設立にあたり定款の作成は必要ですが、公証役場での認証は必要ありません。そのため、合名会社における資本金払込みのタイミングは定款を作成した後になります。資本金額の設定は、株式会社と同様に設立の準備段階で決めます。

資本金の払込みの口座と方法


上記でもお知らせしましたが、会社が設立する前なので、当然会社名義の銀行口座はありません。発起人の口座に払込みを行います。 発起人が一人だと、自分の口座から一度出資金を引き出し、その後自分の口座に入金することで出資金を払い込んだことになります。たまに勘違いしている方がいますが、口座に出資金(資本金)の金額が入っているから大丈夫と思われている方がいますが、それでは出資金(資本金)が払い込まれたことになりませんので注意が必要です。発起人が複数人いる場合は、発起人のなかの誰か1人の個人口座に入金・振り込みします。発起人であればだれの口座でも大丈夫です。

当然ですが、「発起人以外」の第三者の口座に入金しても、資本金の払込みとして認められません。振り込む際には、出資者の氏名が通帳に記載されるように行うことで、誰がいくら振り込んだのか分かるようになります。

個人事業から法人成りする場合、個人事業時代の屋号名義の口座では認められないことがありますので、必ず発起人の個人名義の口座をつかいましょう。

金融機関はどこでも大丈夫なのか?

日本国内の銀行であれば、ほぼすべての銀行で払込みが可能です。ゆうちょ銀行・信用金庫・農協・国内銀行の外国店支社・内閣総理大臣の認定を受ける外国銀行の日本国内支店でも構いません。Web通帳で開設できる銀行やネット銀行でも払込みは可能です。

以前は後に振込みの証明が必要なことから通帳のある銀行が一般的でしたが、Web通帳でもマイページから取引証明書を表示できるので、そのコピーを証拠に使えます。そのため、紙通帳のない銀行を払込先にしても問題はありません。

証明書の作成


全ての払込みが完了したら、払込みがあったことを証する書面(払込証明書)を作成します。払込み証明書は、出資金の払込みがあったことを証明する書類です。 払込みの額、払込みのあった日付などを記載します。代表社員が会社代表印で押印します。

払込証明書の作成には、出資金の払込みのあった預金口座の通帳のコピーを用意します。 コピーは、通帳の表紙、金融機関名・支店名・口座番号・口座名義人が記載されたページ(通常は通帳の表紙を1枚めくったところ)、払込みがあったことが分かるページの最低3枚を用意します。ネット銀行の口座の場合は、どの部分をプリントアウトすればよいか事前に、法務局にご確認ください。

作成した払込証明書を上にして左端を2箇所ホチキスでとじて、払込証明書に押印した会社代表印で各ページに割印(契印)して完成です。

資本金を払い込む際の注意点

ここからは、資本金の払込みを行う際に知っておきたい注意点をご紹介していきます。

資本金額が口座に入っていても使えない

発起人の口座に設立事項で決めた資本金額がすでに入っている場合もあるでしょう。それをそのまま資本金にしたいところですが、そのままでは使えないので注意してください。

会社設立では、「資本金としてお金を用意した」という事実を明確にしなければなりません。そのため、すでに資本金額分が口座に入っていても、払い込んだ証明ができないので、資本金として使えません。口座に入っている分を資本金に使う場合は、一度資本金額以上の額を引き下ろしてから、振込みで口座に入金する作業が必要になります。

ネットバンクを利用する際のポイント

資本金払込みはネットバンクでも可能です。ただし、ネットバンクは通帳が発行されないため、通帳のコピーができません。しかし、ネットバンクのマイページから閲覧できる取引履歴をプリントアウトすれば、払込みの証明をして利用可能です。

プリントアウトする際は、「銀行名と支店名」「口座の名義人」「資本金払込みの取引履歴」の項目が含まれるようにします。最近はメガバンクや地方銀行でも通帳のペーパーレス化が進んでいます。Web通帳で口座を開設した場合も同様の方法で払込みの証明が可能です。

払込み後のコピーは早めに済ませる

資本金の払込みが完了したら、できるだけ早めにコピーを取ることをおすすめします。詳しくは後述しますが、現在は会社設立後すぐに備品購入などの費用に資本金を使えます。その場合、資金の動きが激しくなるため、コピーするページ数が増え、また、払込金額のチェックに手間がかかるかもしれません。コピーやチェックの手間を軽減するためにも、通帳のコピーは早めに済ませておきましょう。

印鑑は代表社印(会社実印)で登録

払込証明書の作成では印鑑を押す必要があり、その際使う印鑑は代表社印です。間違って代表取締役個人の実印を押さないように気をつけてください。代表社印とは、法人登記の際に登録する法人用の印鑑です。簡単にいえば、会社の実印になります。法人登記や払込証明書の作成だけではなく、業務上の契約書などでも用いられる重要なものです。設立準備の段階で作成するものなので、忘れずに作成しておきます。

資本金を使えるようになる時期は?

結論からお伝えすると、会社設立時に資本金としたお金は、前述の「資本金の手続き」終了後、基本的にいつでも事業のために引き出しても問題ありません。会社法の施行前には資本金として会社に振り込んだお金は設立から1ヶ月間は使えませんでしたが、現在は設立後すぐに引き出して経費支払いのために使ったとしても問題ありません。

現在のルールでは、資本金は「会社を設立するタイミングでどのぐらいのお金を集めることができたか」を判断するための基準としての意味しかないといえるでしょう。ちなみに、資本金として会社のお金となるため、社長個人のお金として引き出すことは基本的にできません(プライベートで引き出した場合は社長への貸付金となります)。

最後に注意点として「資本金=会社設立時に振り込まれたお金の総額」という意味がありますので、設立時にきちんとお金が振り込まれたと言うことは後から証明できるようにしておかなくてはなりません。設立時に株主となった人が発行する払込証明書と、設立時の銀行通帳のコピーを保管しておきましょう。

募集設立時は払込金額保管証明書が必要になります

多くの方にとっては関係のない話ですが、株式の一部を発起人が引き受けて、残りの株を引き受けてくれる人(株主)を募る募集設立で会社設立する場合は、上記の書類の他に「払込金額保管証明書」が必要になります。これは、定款を作る発起人による設立とは資本金の取り扱い方が異なるため、発起人が払い込んだ資本金を保全する役割を担っているからです。

「払込全額保管証明書」は、銀行で発行してくれます。発行してもらうには、法務局で定款の認証がされてからとなります。手順が発起人による会社設立と少し異なるので、募集設立時にはこの証明書が必要になると覚えておきましょう。

まとめ

最後に基本的な流れをおさらいすると、以下の4つの手順を踏んで払込んでください。

・発起人の銀行口座の準備
・公証役場にて定款認証後、資本金の振込み
・通帳のコピー
・払込証明書の作成と通帳コピーを合わせて綴じる

単純な作業になりますが、出資金(資本金)の仕方や払込みのタイミングを間違えてしまうと、会社設立ができなくなるリスクがあります。大切なポイントは、払い込む先の口座を1つに絞ることと、払込証明書をつくるタイミングです。前述を参考にミスなくおこなってください。

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