赤字決算にする事のメリット・デメリットを解説

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法人は営利組織ですので、常に利益を追求していく姿勢が基本となります。そして決算書は会社にとって成績表のようなものです。単純に言えば、赤字より黒字の方が良いに決まっています。しかし、わざと決算書を赤字にすることで、結果的に企業を存続させることができたという企業もあります。

そこで今回は、赤字決算にすることのメリットとデメリットを解説します。

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赤字決算とは?

赤字決算とは、特定の期において支出が収入を上回っている状態のことになります。

一般的にいえば、収入から支出を差し引いた額がマイナスである状況が続けば、やがて債務超過となり倒産に至ります。ただ、赤字決算はあくまで、ある期間において赤字であることを示しており、その期において収支がマイナスだったからといって、すぐに資金が枯渇するわけではなく、ましてや倒産に至るというわけではありません。

赤字の種類

赤字にはいくつかのパターンがあります。その期の売上げがその期の総支出を下回ってしまった場合に発生する赤字決算ですが、一口に赤字決算といってもいくつかのパターンがあります。

創業赤字

企業を起こしたばかりの時点で発生する「創業赤字」です。起業したばかりのときは、まだ事業活動が軌道に乗っていないために売上が伸びないことが多く、その一方で人件費を始めとする諸費用はかかるため、赤字決算となりやすい傾向があります。

後に大きく成長した企業でも「創業時は苦しかった」ということは多いので、甘受すべき赤字であるともいえるでしょう。

臨時的な赤字

事業というのは常に計画どおりに進むわけではありません。何らかのアクシデントによって今期だけ赤字決算になってしまうこともあります。たとえば地震で工場や営業所が機能しなくなってしまった時など、その営業停止期間分の利益の逸失はもちろん、再建のためにもまた巨額の費用が必要になります。

ほかには、退職者が多く退職金がかさんでしまった、設備投資として高額な機械を増設した、などもこのパターンです。ただこれはそのアクシデントの影響を払拭できさえすれば黒字に転換できる可能性が高いので、それほど悲観的になることはないでしょう。

恒常的な赤字

業界全体が縮小傾向にある、強力な競合他社が現れた、創業時から何年たっても受注数が伸びない、などの理由で起こるのがこの恒常的な赤字です。この赤字は上記2つの赤字とは違い明らかに問題と言えます。なぜなら、何らかの抜本的な改革を計らない限り業績回復の芽が見いだせない状況だからです。

人員整理などはその最たる例ですが、そうした施策を実施したからといって必ず経営状態が健全化するわけではありませんし、成功しない場合にはそれまで会社として蓄えてきた資産や融資を食いつぶしながら事業を継続していかなくてはなりません。そうなると資金不足から新しいことにも挑戦できないので現状からの脱却もますます難しくなり、やがては倒産、という事になってしまいます。

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赤字決算にするメリットとは?

赤字決算における最大のメリットは、法人税が発生しないという点です。日本では制度上、法人税は損益計算書の税引き前利益の収支がプラスの企業にのみ行われます。そのため、赤字決算、すなわち収支がマイナスのときは、法人税の課税対象とならないのです。ただ、法人住民税の納付は必要なので、東京都の例だと最低でも7万円はかかります。

ただ、法人としてかかる課税額がこれで済むというのは、大きな利点といえます。そのため、特に中小企業の中には、節税のためにあえて赤字決算にしようとする企業は少なくありません。赤字決算にするには、製品などの製造量やサービス提供量などを減らす、あるいは売上高を減らすといったことは必要なく、費用・軽費をできるだけ計上することで行えます。

客観的にみれば、収支がマイナスになっている赤字状態は好ましい状況とはいえません。しかし、決算期に上手く調整していくことで、大きな節税効果が期待できるのです。ただ、節税のために恣意的、露骨に赤字決算を行うと税務署の調査を受けることになるので、調整できる範囲には限度があります。

赤字決算にするデメリットとは?

赤字決算には当然、不利な面もあります。その1つが金融機関からの信用度が下がり、融資を受けにくくなるという点です。金融機関が融資を行う際、最も参考にする指標が各企業の決算書なので、赤字決算だとそれだけ融資先を決める格付け上の評価が低くなり、融資の中止が採決されることがあります。そのため、銀行から多額の融資を受けている企業の場合、節税のためとはいえ、安易に赤字決算にしようとするのは危険でもあるわけです。

その他、本当に赤字経営なのか、不正を行なっているのではないか、調査される可能性があります。場合によっては家宅捜索が入ったり、脱税容疑で逮捕されるケースもあるので、注意が必要です。赤字であっても税務調査は入ります。「赤字だから大丈夫だろう」と高をくくっていてはいけません。繰越欠損金等の関係から、税務署としては虚偽・不正申告の赤字は困りますので、調査したいという意図が税務署側には存在します。

まとめ

上記でご紹介した通り、赤字決算にはメリットもデメリットもあります。決算を迎える前に赤字を回避したいと思った場合にできる対策としては以下などいくつか方法があります。

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