設立したときは合同会社で満足していても、株式会社に変更したいという方が多数存在します。今回は、合同会社から株式会社に変えるための方法や費用について解説していきます。
合同会社と株式会社の違いとは?
会社の形態は大きく分けて2つに分類できます。株式会社と持分会社です。それぞれの違いを解説すると、株式会社が出資者という立場にいる株主か株主総会によって選出された人たちが会社経営を行うスタイルのことで、持分会社は「合同会社」と「合資会社」と「合名会社」の総称です。
合同会社とは有限責任社員のみで構成されている会社、つまり何らかの負債を会社が背負ってしまったときに、その負債が出資額以上ならば負う必要がない社員で経営されている会社のことです。合名会社とは、合同会社とは逆に無限責任社員によって経営されている会社のことです。つまり、何らかの負債を会社が背負ってしまったときに全財産を失ってでも負債対応が求められる社員で経営されている会社のことです。合資会社とは、有限責任社員と無限責任社員で構成された会社となります(それぞれ最低1名ずつ必要)。持分会社の特徴として、設立費用が安く決算報告が必要ないというメリットがそれぞれに存在しています。
(参考記事)これだけの違いがある!?『株式会社』と『合同会社』を選ぶポイントについて解説
合同会社から株式会社に変更する方法
それでは具体的にどのようにすれば合同会社から株式会社に変更することが出来るのかを確認していきましょう。合同会社から株式会社に変更する際の手続きは以下の流れで行います。
・組織変更計画書を作成
・全社員からの同意を獲得
・債権者の保護手続き
・効力発生して登記申請
詳しくは後述で記載していますが、組織変更計画書の作成時に効力発生日を決められます。しかし、登記申請は効力が発生してから2週間以内に行わなければいけないため、組織変更には計画性が必要です。それぞれの詳細について説明していきます。
組織変更計画書を作成
まずは「組織変更計画書」を作成する必要があります。組織変更計画書とは、どのような組織変更を行うのかを定める書類のことです。定める項目には以下のものがあります。
・商号(会社名)
・事業内容
・本店所在地
・発行可能株式総数
・定款
・取締役や監査役など役員
・株式会社へ変更後の発行株式数
・合同会社の社員の役職割り当て
・効力発生日 など
株式会社は株式を発行したり役員を決めたりなど、合同会社にはない取り決めがあります。合同会社を一度解散して新たに株式会社を設立させるつもりで手続きを行いましょう。
全社員からの同意を獲得
合同会社を組織変更する際には、社員全員の同意が必要です。組織変更計画書を作成した後は全社員の同意を得ましょう。合同会社における「社員」とは従業員のことではありません。出資などで持分がある社員のことを指すので注意する必要があります。期限は組織変更の効力発生日の前日までとなっているので、組織変更計画書を作成する前から同意を得ておきましょう。
債権者保護手続き
官報への公告掲載と個別責任者への勧告を行って、債権者に「株式会社に変更する」という旨を伝える必要があります。官報を使っての公告掲載内容は、組織変更をすることを伝える内容と、この組織変更に対する異議申し立てがある人はそれが可能であるということを伝える内容となります。この報告は最低でも1ヶ月以上必要なので注意してください(掲載費用は発行部数によって変わるが基本的には35,000円)。
個別の債権者にも会社形態が変わるといった勧告が必要になります。官報への掲載は債権者が一人もいない場合でも行わなければいけない手続きなので気を付けましょう。また、異議申し立てが発生してしまった場合は組織変更は一度ストップする必要がありますが、よほどのことがない限り組織変更で異議申し立てがあることはないでしょう。
効力発生して登記申請
作成した組織変更計画書に記載した効力発生日を迎えると、その日から2週間は株式会社への組織変更が可能です。効力が発生したら登記申請を行いましょう。組織変更をする際には、法務局で以下2つの登記が必要です。
・株式会社の設立
・合同会社の解散
登記申請には審査があります。1週間程度で審査が終了して株式会社の登記簿謄本が取得できるようになります。
変更に必要な費用について
変更には最低でも10万円程度の費用がかかると考えておきましょう。合同会社から株式会社へ組織変更する際の費用内訳は以下の通りです。
・官報の公告費用:約3万円
・登録免許税:約6万円
官報への公告掲載費用は掲載する発行部数や会社概要などによって異なりますが、約3万円の費用がかかります。
登録免許税は「合同会社解散登記」と「株式会社設立登記」の2つに分けられ、それぞれ約3万円の計6万円です。ただし、株式会社設立登記の費用は資本金の額で変動し、資本金の額が2,000万円を超える場合は資本金の1,000分の1.5倍の金額となります。たとえば資本金が3,000万円なら、以下の計算で株式会社設立登記にかかる費用は4.5万円です。
■ 3,000万円÷1,000×1.5=45,000円
なお、組織変更の手続きを行政書士や司法書士などに全て依頼する場合は、それに加えて10万円前後の費用がかかるため、最低でも20万円ほどかかると考えておきましょう。
まとめ
合同会社は少ない費用で設立することができ、利益・権限などの分配を自由に設定することが可能であるなど中小企業にとって様々なメリットがあります。しかし会社が軌道に乗り事業拡大のために株式会社に変更したいというケースも少なくありません。
合同会社から株式会社に変更しようとお考えの方は会社形態変更の流れや必要な手続きについて事前に知っておきましょう。また、会社形態の変更をスムーズに行うために、司法書士や税理士などの専門家に相談することをオススメします。