地方へ移住したい人に必要なのは、仕事と家ですが、ペンションは、仕事と家の両方を手に入れる事ができます。とはいえ、商売を前提に家を新築するとなると初期投資にかなりの費用を要する事になります。
今回は、ペンションでの開業について解説していきます。
開業にあたって必要な手続き
ペンションという名称は通称であり、法的には宿泊施設であるところから、「旅館業法」に基づき都道府県知事の許可が必要です(問い合わせ先は開設地域の保健所)。また、施設の構造設備の基準については、旅館業法施行令で定められています。
<必要書類>
・営業施設の構造設備を明らかにする図面 など
なお、各都道府県の条例によって建築基準法、消防法、風俗営業法の規制および業務の適正化等に関する法律、食品衛生法などの基準が定められているため、施設を開設する前に、開設地域の保健所によく確認する必要があります。また、温泉があったりペットを預かる可能性があるなど、通常のペンションにプラスアルファの価値を付ける場合はそれ毎に許可が必要になります。
個人事業主として行う場合、一般的な手続きとして、個人事業の場合、個人事業の開廃業等届出書、所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書、青色申告承認申請書等を納税地の所轄税務署へ提出します。また、個人事業開始申告書は事業所所在地の都道府県税事務所へ。詳しくは、最寄りの管轄行政に問い合わせが必要です。
法人として会社を設立する場合、定款作成、会社登記をし、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、法人設立届出書(地方税)などを提出します。
立地条件や物件契約時の注意点
ペンションに適しているのは、高原や海など、自然環境に恵まれた立地で、しかも都市部からの交通アクセスがよいところです。さらに、近隣にスキー場、テニスコートといったレジャー施設や、サイクリングコースやハイキングコースなどがあることが望ましいです。
そして土地や物件を借りてペンション経営をするためには必ず契約を行います。その際に特に注意しておきたい点としては、まずペンションや民家だった建物を借りてペンション経営を始める場合は、どこまで内装・外装に手を加えても良いのか確認しましょう。また、状態を確認してどれくらいの修繕・改修が必要で、費用の負担はどこまでが借主になるのかなども確かめておかないと思わぬ出費が出てしまうことがあります。
立地が山の中や近くに民家がない場所の場合は、ガスや水道が来ていないことがあります。そうなると別途工事が必要になり、この場合も自己負担になることがあるので、土地のみを借りる場合は特に確認してください。
集客をする為の営業・広報活動
ペンションのオープン後1~2年は、加盟するペンション団体や提携している旅行会社を通じて送客してもらうのが一般的です。その後は、「リピート客」「口コミの紹介客」「雑誌などを見ての申込客」を増やしていきましょう。
なお、雑誌などを見ての申込客を増やすためには、以下のような工夫が必要になります。
・雑誌などのパブリシティ:女性向け雑誌、レジャーの専門誌、ペンションの専門誌などの編集部に働きかけ、記事として紹介してもらう。
・ガイドブックへの掲載:ペンションを紹介するガイドブックなどに広告費を払い掲載してもらう。
その他、インターネットを活用して、ホームページを開設したり、宿泊予約の代行サイトを利用することも積極的に検討しましょう。
ペンションに必要な開業資金の調達方法
最低でも数千万がかかるペンションの開業資金の一部は、自己資金や今持っている土地建物以外、何らかの方法で調達する必要が出てきます。スポンサーがついていたり、身内に融資を受けられれば良いのですが、それが叶うのはごく一部です。資金調達の主な方法は金融機関や開業をサポートする制度を利用した融資になります。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。
創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。
信用保証付の融資
「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。
親族、友人・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。
その他
ほかにもベンチャーキャピタルやクラウドファンディングという方法もあります。経営に不慣れな場合は、まずは日本政策金融公庫に相談するのがいいでしょう。民間の金融機関よりも開業・創業時の融資の審査が緩く、営利目的の団体ではないので融資を受けやすいです。土地などの担保がある場合は銀行や信用機関を利用すると、経営のアドバイスも受けられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、ペンションでの開業について解説しました。
ペンションをはじめとした宿泊施設の経営は集客が非常に重要になり、競争率も高いことから決して容易な業種ではありません。しかし、小さめのペンションであれば夫婦や家族で経営を行って人件費を減らしたり、宿泊客とのコミュニケーションを取ってリピーターを確保するなど、小規模の宿泊施設ならではの利点もあります。
その土地の魅力を生かし、初めて来た人もほっとできるようなペンションづくりを目指してみてください。最初の数年は苦しいかもしれませんが、集客につながる活動をこまめに行い、来てくれたお客さんに丁寧な対応をしていくことで、口コミで評判が広まって客数は確実に増えていくはずです。