『合同会社』代表者の肩書について解説

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2006年の会社法改正に伴い新設された合同会社ですが、年々とその知名度も高まり、株式会社よりも安く設立できる事から、合同会社での設立が増加しています。

ただし、意外と知られていないのが、合同会社代表者の「肩書き」についてです。株式会社であれば、「代表取締役」または「代表取締役社長」が大半ですが、合同会社の場合は皆さんどのような「肩書」を記載しているのでしょうか。

今回は、合同会社における代表者の肩書について解説していきます。

そもそも「合同会社」とは?

合同会社とは2006年に会社法で新設された会社形態で、持分会社のうちのひとつです。現在、会社法で定められている設立できる会社の形態には、大きく分けると株式会社と持分会社の2つあります。

さらに、持分会社には合同会社の他に「合資会社」「合名会社」があり、会社形態は全部で4種類です。合同会社が他の持株会社と大きく違う点は、出資者が債権者に対して有限責任しか負わない点にあります。所有者と経営者が一致しているにもかかわらず、出資者の責任が有限であることで、迅速な意思決定が可能です。そのため、ベンチャー企業に適した会社形態と言われています。

「合同会社」代表の肩書について

結論から言うと、合同会社の代表者であっても「社長」や「代表取締役」と名乗ることができます。なぜなら、肩書の使用について法律の規制はないからです。「社長」は会社の機関の名前ではありませんし、代表取締役以外の者が「代表取締役」を名乗ることを禁止する規定もありません。よって名刺やホームページ、さらには契約書に記載する代表者の肩書も、基本的には自由に決めることができるのです。実際に代表者が「代表取締役社長」を名乗っている会社もあります。

ただし、どんな肩書にしても登記簿には「代表社員」と記載されます。登記簿の記載は法律上決められているからです。

決まりはないが、定款に定めるべき理由とは?

しかし、規制がないからと言って好き勝手に肩書を名乗ると「どういう権限を持っている人なのか?」「社内でどのくらいの立場の人物なのか?」が分からず混乱をきたしたり、信用を落としたり、社内外でのトラブルの原因となりかねません。

そこで、代表権限を持つ人の肩書(役職)は、定款で定めることをおすすめします。定款はいわば会社の憲法であり、会社の組織や活動の基本を定める会社の根本的な決まりです。

「どういった役職を設け、どのような権限を持たせるか、それによってどんな会社にしたいのか」を形にしたものが定款であり、代表者の肩書も組織の重要な要素ですから、定款で明確に定めるべきなのです。
 

◇ 「合同会社」代表者の肩書の例

・代表
・社長
・職務執行者社長
・代表職務執行者社長
・代表執行役員社長
・代表職務執行役社長
・代表社員職務執行者
・CEO
・最高経営責任者

いずれも実際の合同会社で使用されているものです。なお、個人の肩書は自由ですが、会社ではないのに「○○会社」と名乗ったり、合同会社なのに「株式会社××」と記載するなど別の会社形態と誤解させるようなことは法律で禁止されています。違反すると100万円以下の過料を科されてしまいます。

代表社員に課せられる4つの責任について

代表社員には守るべき責任や義務があります。それは以下の4つです。

・善管注意義務・忠実義務
・報告義務
・競業の禁止
・利益相反取引の制限

また、業務執行社員も同様の責任を有しているので注意してください。それぞれ説明していきます。

善管注意義務・忠実義務

代表社員は会社の代表であり、「善良な管理者」として注意深くかつ法令や定款を守りながら職務を遂行しなければなりません。業務執行社員においても経営者として同様の責任を有します。

報告義務

代表社員や業務執行社員は、社員から求められた場合には職務について状況を報告する義務があります。また、その経過についても遅延なく報告する責任があります。

競業の禁止

会社の競業となる行為については、他の社員からの承認を得なければなりません。

利益相反取引の制限

当該合同会社以外の第三者のために取引を行う場合や、社員の利益に反する取引を行う際には、社員の過半数の賛成が必要になるなど制限される場合があります。

代表社員は複数いてもいい?

代表社員が複数人いる合同会社も珍しくありません。決定権のありかを明らかにするための代表社員制度ですが、あえて複数人おくことで、業務が円滑に進む場合があります。国際的に展開する合同会社では、円滑な意思決定のために海外と国内で代表社員を分ける場合もあります。

ただし、代表社員が複数いることで生じるデメリットもあります。まず、逆に意思決定が遅くなる場合が考えられます。代表社員に優劣がないため、意見が対立した場合に会社としての意思がまとまらず、経営が滞る可能性があります。

合同会社のもう一つの役職 業務執行社員について

合同会社では出資者すべてが社員であり、経営の決定権や業務執行権を持っています。特段に定めない場合は、合同会社の社員は全員「業務執行社員」です。業務執行社員は、株式会社でいえば「取締役」です。2人以上複数の業務執行社員がいる場合はその中から代表社員を選びます。

ただし、出資者の中には、出資はしても実際の経営は能力の高い社員に任せたいという人も出てきます。そのようなケースでは、定款によって業務執行役の「業務執行社員」と、業務執行権を有しない「社員」に分けることが可能です。また、定款で業務執行社員と社員に分けることを明記した場合、業務執行社員以外の社員は業務の執行ができません。業務の遂行状態や財務状況を監視することはできますが、実際の運営に口出しするのはできなくなるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?合同会社における代表者の肩書について解説しました。

合同会社の場合は、名刺に表記される肩書きは「代表」や「社長」が一般的です。合同会社の「社員」という肩書きよりも「社長」や「代表」と表記されている方が、社会的な信用度も増すのではないでしょうか。

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