定款に記載の事業目的に違反したらどうなるのか?デメリットや違反しないために気をつけるべき事について解説

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会社設立の際には定款の作成が必要ですが、定款には事業目的を記載する必要があります。では、「定款に記載のある目的以外の事業を行った場合」や「定款記載の事業目的に違反することによるペナルティ」はあるのでしょうか?

今回は、定款に記載される事業目的についてや違反する事へのペナルティの有無について解説していきます。

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定款に記載される事業目的とは?

事業目的は定款の絶対的記載事項のひとつで、定款に含まれていなければ、定款自体が無効になってしまいます。原則として会社は定款に定めた事業目的の範囲内で、事業を営むことができます。事業目的は定款だけではなく、登記簿の記載事項にも含まれています。事業目的は、会社はどのような事業をして収益を得るのかを明確にするものです。

また事業目的は通常は10個前後の目的が記載されることが多いようです。そして設定される目的は何でもよいというわけではなく、基本的には以下3つの要件を満たしている必要があります。

    ・明確性:目的の対象が過度に抽象的になっていないか、解釈の幅が広すぎないか
    ・合法性:法律に違反することは目的にできません。たとえば「ねずみ講の運営」や「違法薬物の販売」などは記載できません。
    ・営利性:企業なので営利目的であるである必要があります。「ボランティア活動」や「寄付活動」などは基本的には記載できません。

    厳密には合法であっても内容によっては融資が受けづらくなったり許認可が取りにくくなる目的もあります。たとえば、出会い系サイトや風俗店、FXや仮想通貨への投資などが挙げられます。必ず問題となるわけではありませんが「将来やるかもしれない」くらいの目的なら入れないでおきましょう。

    逆にいうと、それぞれの目的の関連性は問われません。たとえば飲食店の事業者が一見すると畑違いのアパレル販売を目的にすることも可能です。

    (参考記事)会社設立時の事業目的 決める時に考える事

    定款記載の事業目的に違反することによるペナルティ

    結論から言うと、会社が定款記載の事業目的に違反する取引行為などを行ったとしても、刑事罰や行政罰を課されることはありません。一方で、民法のルールでは、会社が事業目的に違反する行為を行った場合には、その行為は無効と定められています。

    会社が行った行為が無効となった場合、その行為によって得た利益はすべて不当な利得(法律上の原因に基づかない利益)と判断されることになってしまいます。不当利得とされた利益については取引関係者やそれ以外の人から原状回復を求められた場合には返還しなくてはなりませんので、取引関係が極めて不安定な状態になってしまう可能性があります。

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    定款記載の事業目的以外のことをやったときのデメリット

    上記でもお知らせした通り、事業目的として記載されている以外の事業を行った場合の罰則はありませんが、いくつかデメリットが考えられます。

    特定業界の許認可などへの影響

    事業活動に許認可が必要な業界(たとえば建設や労働者派遣、不動産業など)において、会社の実態がわかりにくくなることで審査に影響が出る可能性があります。

    新規取引などへの影響

    新規の取引を開始する前に、与信調査の一環として登記を確認するケースがあります。この際に事業目的がわかりにくかったり、当該取引に関係のない目的が多すぎる場合など取引開始に影響が出る場合があります。

    融資など資金調達への影響

    金融機関からの融資や、出資による資金調達では必ず登記内容の確認が行われます。この際に調達目的となっているはずの目的が記載されていなかったり、関連のない目的の記載が多い場合に信用が得られなくなる可能性があります。提供側からすれば、資金を出しても当初と違う目的に消費されるのではないかという印象を与えてしまいます。できれば指摘される前から適切な目的にしておきましょう。

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    違反しないために、定款を作成する際に気をつけるべき事とは?

    上記でもお知らせしましたが、定款に書かれた事業目的以外の事業を行っても罰則はありませんが、ビジネスに支障をきたす可能性はあります。事業目的が違反にならないように、定款を作成するときに気をつけるポイントがあります。

    営利目的のものにする

    会社は営利を目的として運営されることが大前提となります。そのため、営利を目的としてない慈善事業だけを事業目的に掲げることは適切ではありません。営利を目的としない事業だけを行う法人を設立したい場合には、公益法人を設立するのが一般的です。ただし、実際には営利目的の事業を行いながら、同時進行で慈善活動などに出資を行うことなどは問題ありません。

    「附帯関連する一切の事業」と記載しておく

    定款に記載した事業目的以外の事業を行うことでトラブルが起こることを避けるためには、事業目的を記載した後に「上記各号に附帯関連する一切の事業」と記載します。「附帯関連する一切の事業」と入れておくことで、広く営利目的の取引活動を含めていると解釈されます。

    将来予定している事業は事業目的に含めておく

    融資を受けたり、新たな取引先を開拓したりすることを考えると、前述のように該当する事業目的の記載がないことは、相手方に不信感を与えます。一方、事業目的はいくつまでという制限はありませんが、数が多すぎるのも適切ではありません。あまりにも実態のない事業目的が多いと、何をしている会社なのか、取引先や金融機関から見えにくくなります。

    会社設立の際の事業目的は多くても10件程度とし、今後、展開する予定のある事業は含めておくことが賢明です。将来営む予定のある事業も記載しておくことで、定款変更のための株主総会の開催や法務局への登記に掛かる、手間やコストを省くことができます。また、取締役の改選の際など、登記の変更を行うタイミングで、定款の事業目的の見直しを図るとよいでしょう。

    まとめ

    定款の事業目的に違反した行為を会社がしても刑事罰などを受けることはありません。

    一方で、事業目的に違反する会社の行為は、取引の相手先や株主、債権者などからその効力の無効を主張されてしまう可能性があります。取引の安定性を確保するためにも、会社設立時には事業目的の記載方法に注意しておくようにしましょう。

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