ゲストハウスとは、旅館やホテルとも少し異なる宿泊施設で、一般的にホテル等より小規模で宿泊料金が安く、その分サービス等を簡略化した宿泊施設のことを指します。多くのゲストハウスでは、他の宿泊客との交流ができることが大きなメリットとなっています。
今回は、ゲストハウスでの開業について解説していきます。
※この記事を書いているVector Venture Supportを運営している株式会社ベクターホールディングスが発行している「起業のミカタ(小冊子)」では、更に詳しい情報を解説しています。無料でお送りしていますので、是非取り寄せをしてみて下さい。
目次
ゲストハウスの開業で必要な資格と許認可
ゲストハウスを開業する場合、主に以下の資格と許認可が必要になります。
【必須】消防法令適合通知書交付申請(消防署)
-
・旅館業営業許可申請より先にこちらを申請する必要があります
【必須】旅館業営業許可(簡易宿所営業許可)申請(保健所)
-
・各都道府県が定める衛生基準を満たしていることを確認してから申請
・先に消防法令適合通知書交付申請を済ませておく必要があります
【床面積が100㎡以上の場合に必要】建築検査済証(各地域の土木事務所など)
-
・個人では対応が難しいため建築士等への相談を推奨
【元々宿泊用の建物ではない場合は必要】用途変更申請(各自治体指定の検査機関など)
-
・個人では対応が難しいため建築士等への相談を推奨
・建物の用途変更に伴う必要書類についてで必要書類を説明(※)
消防法令適合通知書と旅館業営業許可の2つは、ゲストハウスの規模に関わらず必須となる許認可です。なお、旅館業営業許可申請よりも先に消防法令適合通知書交付申請を済ませておく必要があるので、手順を間違えないように注意しましょう。
建物の用途変更に伴う必要書類について
建物の用途変更申請を行う場合には、非常に様々な書類が必要となる可能性があります。必要書類等は地域によっても異なるため、開業しようと考えている地域の行政窓口に確認が必要です。そもそも用途変更ができないという場合もありますので、注意しましょう
多くの地域で共通する必要書類の例としては、以下の通りです。
-
・ゲストハウスにする建物内部の各階平面図
・ゲストハウスにする建物の配置図、正面図、側面図等
・ゲストハウスにする建物周辺にある主な施設の見取り図等
これらは、自分一人で準備しようとすると大変な作業になってしまうため、専門家に相談した方が良いでしょう。
その他一般的に開業する場合の手続き
個人事業主として行う場合、一般的な手続きとして、個人事業の場合、個人事業の開廃業等届出書、所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書、青色申告承認申請書等を納税地の所轄税務署へ提出します。また、個人事業開始申告書は事業所所在地の都道府県税事務所へ。詳しくは、最寄りの管轄行政に問い合わせが必要です。
法人として会社を設立する場合、定款作成、会社登記をし、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、法人設立届出書(地方税)などを提出します。
ゲストハウス物件探しに関する注意事項
ゲストハウス用の物件を探す際に気をつけなければならない点は、その土地の『用途地域』です。『用途地域』の種類によっては、どんなに立地が良くても宿泊施設が作れません。数ある『用途地域』のうち、宿泊施設を作れるのは以下の地域です。
-
・第一種住居地域
・第二種住居地域
・準住居地域
・近隣商業地域
・商業地域
・準工業地域
開業資金準備について
ゲストハウスで必要になる資金は、どんなゲストハウスにするか、どんな物件で開業するかによって大きく変動します。いくら低資金で始められるとはいえ、余裕のない資金では開業してから運転資金に困ることになりかねません。資金を用意するときは、以下ポイントに留意しながら、それぞれの予算を決めて準備を進めましょう。
-
・物件にどれくらいの費用を充てるのか
・内装にどれくらいの費用を充てるのか
・設備や備品にどれくらいの費用を充てるのか
必要になる資金は、開業費用だけではありません。開業後、思うように集客ができなくても運営を続けられるように運転資金も必要です。さらには、ゲストハウス経営だけで収入を賄うのであれば、自分自身の生活費も見込んで資金を用意しましょう。
開業後の運転資金では、稼働率を低めに設定して、客単価から売上の推測値を算出します。稼働率は常に一定とは限りませんから、周辺環境から繁忙期・平常時・閑散期をおおよそで割り出し計算してみましょう。スタッフを雇う予定があるなら、人件費の算出もしておきます。持ち家で開業する場合、立地にもよりますが開業に必要な資金はおよそ1,000~2,000万円ほど。すべてを自己資金で用意するのが難しい場合は、最低でも500~600万円は自己資金で用意しておき、足りない分は融資で補填することも考慮しましょう。
開業資金をどこから調達すればいいのか?
開業するにあたり、自己資金、いわゆる貯金だけで開業できればいいですが、なかなか日々の生活費なども考えると難しい所です。では自己資金以外でどこから調達すればいいのでしょうか?
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。
創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。
信用保証付の融資
「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。
親族、友人・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。
ゲストハウスの物件探しに役立つサイト
ゲストハウス向きの物件選びに特化したサイトを活用しましょう。ゲストハウス開業に使える物件を見つけるのはそう簡単なことではありません。街中で見かける不動産屋に相談に行っても、なかなか物件を見つけてもらうことはできないでしょう。そのため、ゲストハウス向きの物件選びに特化したサイトを活用することをおすすめします。
ただし、これらのサイトに掲載されている物件がすべてゲストハウスにできる物件とは限らない点に留意してください。
-
・楽待不動産:本来投資用の不動産を探すサイト。物件登録数が多いのが魅力。
・民泊物件.com:民泊向きの物件に特化。物件登録数も豊富。
・HOME’S:宿泊施設用に特化しているわけではないが大手だけあって物件が豊富。
まとめ
ゲストハウスの開業には資格などは必要ありませんが、法律や申請など、さまざまな手続きをクリアする必要があります。また、コンセプトや内装、サービスに工夫をし、たくさんの人が訪れてくれる場所を作らなくてはいけません。自分が長く愛着を持って過ごせる土地を探し、オーナー自らが宿泊客との交流を楽しみながら経営できるゲストハウスを作りましょう。