YouTubeやSNS、有料配信サービスの台頭もあり、業界の常識も変わりつつあるため、今後も様々な形で独立するタレントが増えることは必至です。またそんなタレントをマネジメントする事務所の開業を検討している方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、芸能事務所(プロダクション)での開業について解説していきます。
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ビジネスの特徴
基本的な業務は、芸能活動を行うタレントのマネジメント業務になります。具体的には、タレントの発掘・育成・スケジュール管理や、テレビやラジオの放送局・制作会社・広告会社等への営業活動などが挙げられます。
タレントの活動場所は東京をはじめとした大都市が多いことから、必然的に大都市集中型の業種となっています。地方での開業は特別な計画がなければ困難となる可能性が高いです。
必要な手続き
芸能事務所を開業する際に、公的機関等への許認可は特に必要ありません。
法人として会社を設立する場合、定款作成、会社登記をし、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、法人設立届出書(地方税)などを提出します。
法人として登記する場合の事業目的について
事業目的には、将来的に見込まれる業務を盛り込む事が出来ますので、例えば飲食店の展開を検討している場合には、「飲食店の経営」などを記載しておくことも可能です。
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・タレント・アーティスト・モデル・スポーツ選手の育成及びマネージメント
・芸能タレンその他著名人のマネージメント
・芸能プロダクションの経営
・音楽家の育成及びマネージメント
・CD・ビデオ・DVD等の原盤の企画・制作・販売・賃貸
・映像・音楽の企画・制作・販売
開業タイプ
芸能事務所業界には、大小無数の事業所が存在します。小規模な事務所だとしても、有力なタレントが所属している、あるいは、業界にコネがあるなどの強みがあれば生き残っていくことは可能です。ただし、個人で開業する場合は、大型プロダクションのように多角的な事業展開を行うことは現実的ではない。開業タイプとしては、基本的には自身の得意分野に絞った個人事務所の運営が主となるでしょう。大手プロダクション等で、経験を積んだりコネをつくったりした上で開業するという方法も有力です。
以下では、個人事務所の開業を前提とし、テレビタレント系、音楽系等の主要な芸能事務所のタイプを挙げていく。
タレント・俳優系
株式会社オスカープロモーションや株式会社ホリプロ等の大手から、有限会社フラームや株式会社バーニングプロダクション等、所属タレント10組ほどの小規模な事務所も存在します。小規模な事務所の中には、所属タレントの出演機会をつくるために、インディーズ映画の配給にかかわるなどの施策を行っているケースがあります。初めは小規模な作品でも、話題作になればテレビドラマや大作映画等へ出演するチャンスにつながることもあります。
音楽系
音楽系の芸能事務所では、株式会社アミューズやエイベックス・マネジメント株式会社などが大手として知られます。アーティストのマネジメント業務として、音源・映像の制作やコンサート等のライブイベントの企画・運営、メディアへのプロモーション等を行います。また、ファンクラブ事業として、アーティストグッズの販売や会報誌の発行などを行うケースもあります。
お笑い系
吉本興業ホールディングス株式会社や株式会社太田プロダクションなどが大手として知られる業界。大手であれば、所属タレントが公演を行う劇場など、興行施設を運営している場合も少なくないです。営業先としては、テレビやラジオのほか、学園祭等のイベントなどの出演も主となります。
声優系
大手として、株式会社青二プロダクションや株式会社81プロデュースなどが知られる業界。所属タレントの活動範囲は、アニメやゲームへの声の出演、洋画の吹き替え、ナレーションなどがあります。
YouTuber系
国内トップクラスのYouTuberが多数所属するUUUM株式会社など、近年ではYouTuber専門の所属事務所も増えてきています。また、「バーチャルYouTuber」と呼ばれる、キャラクターのアバターを用いて動画配信を行うタレントも登場しており、バーチャルYouTuber専門の事務所も現れています。
コンプライアンス対策は重要
芸能事務所はタレントの人気が重要な商売です。そのため、タレントが問題を起こして人気が落ちること、あるいは、活動休止に追い込まれることは、大きな事業リスクとなります。
近年では、2019年に起きた、吉本興業ホールディングス株式会社の所属タレントによる「闇営業」問題が大きな話題となりました。この事案では、同社の所属タレントが反社会的勢力主催のイベントに出演し、金銭を受領したことが問題となっています。結果として、多数のタレントが活動休止に追い込まれています。また「闇営業」だけでなく、違法行為や公序良俗に反する行動などにも注意が必要です。所属タレントの日々の生活すべてを管理することは現実的ではないが、うかつな行動がタレントの人気を落とし、事業に悪影響を及ぼす可能性があることを留意しておくべきです。
適切な士業の支援は必須
知らぬ間に脱税や脱法行為を行わないためにも、経営や税金の知識に自信がない場合は、適切な士業の支援をしっかりうけるべきです。
税金申告処理などを税理士に依頼するのであれば、一件あたり数万円~お願いできますし、月30~50万円程かかりますが、顧問税理士を雇うのも手でしょう。また、登記の手続きが難しい場合は行政書士・司法書士などの力も借りましょう。
そして動画やコンテンツ制作をメインにするのであれば著作権などに詳しい人(弁理士)のサポートを受けられれば更に心強いでしょう。また、芸能に強い弁護士もタレントが問題を起こした際などは大変役に立ちます。
まとめ
芸能事務所の収益化において最も重要なのは、やはり「タレント」の質です。仮に所属タレントが1名しかいないとしても、そのタレントが継続的に売上を立てていれば問題なく営業は続けられます。そのため、新規に開業する場合は、有力な所属タレントが確保できていることが望ましいです。一度どこかの芸能事務所で勤務した後、独立して開業するようなかたちが現実的でしょう。