企業が利益を上げて成長していくためには、優秀な人材を確保する必要があります。しかし、少子高齢化などの影響もあり、人材不足に悩んでいる企業も多いでしょう。そこで注目されているのが、ジョブリターン制度です。ジョブリターン制度とは、やむを得ない理由で退職した従業員が復職する制度のことです。
そこで今回は、ジョブリターン制度について解説していきます。
※この記事を書いているVector Venture Supportを運営している株式会社ベクターホールディングスが発行している「起業のミカタ(小冊子)」では、更に詳しい情報を解説しています。無料でお送りしていますので、是非取り寄せをしてみて下さい。
そもそもジョブリターン制度とは?
ジョブリターン制度とは、育児や介護などやむを得ない理由やキャリアを向上させるために退職した社員が本人が希望すれば職場復帰できる人事制度のことを指します。ジョブリターン制度の特徴としてこれまで退職した社員の退職理由が正当なものであった場合に条件付きで復職できる制度になっているということです。
社員の出戻り採用を非公式で行っている企業もあったのですが、しっかりと制度化して運用している企業や公表している企業は少ない傾向にありました。
ジョブリターン制度を導入するメリット
ジョブリターン制度を導入するメリットとして、以下のメリットがあります。
企業のイメージアップ
ジョブ・リターン制度は、女性が活躍しやすい会社としてのPRにも繋がります。子育てと仕事の両立について不安を感じている女性は多いため、復職する事例が増えれば、在職中の女性従業員や入社を検討する女性に安心感を与えられるでしょう。
また、介護のために退職した人にとっても明るい材料になるでしょう。制度を活用して、「一度退職してもまた戻りたいと思えるほど良い会社」であると社内外に印象づけ、企業のイメージアップを図ることも可能です。
採用コスト・教育コストの大幅抑制可能
ジョブリターン制度を活用することによって、採用コストと教育コストの大幅抑制が可能となります。経験者を中途採用したとしても採用コストと教育コストなどがかかるためです。中途採用者を採用するよりも以前に在籍して仕事や社風に慣れた社員を採用した方が人材育成に関するコストが低くなります。
他社で得たスキルを活かせる
ジョブリターン制度を導入することによって、他社で得たスキルを活かすことができます。他社での就業経験を持った社員が自社で他の会社の良いところを取り込んで仕事をしてくれる可能性があるためです。また、他の会社に転職した後に元の会社を志望するということはそれだけ会社を高く評価しているということでもあり以前よりも仕事にコミットしてもらえる可能性もあります。
助成金が利用可能な場合がある
ジョブリターン制度を活用することによって助成金が存在していた時期もありました。厚生労働省の両立支援等助成金の中の再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)というものでした。再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)では、妊娠や出産・育児や介護または配偶者の転勤などで退職した社員が復帰できるように再雇用制度を導入して、希望者を復帰させた企業に対して助成金がおりるというものでした。助成金は年度ごとに内容が変わるため、実施しているかどうかは都度確認するようにしましょう。
ジョブリターン制度を導入する想定されるデメリット
メリットもあればデメリットもあります。以下でジョブリターン制度を導入する想定されるデメリットを紹介します。
現職の従業員が不満を感じる
ジョブリターン制度を導入することによって現職の従業員が不満を感じる可能性があります。在籍している社員は退職者よりも頑張っていまの仕事を続けているという自負があるためです。在籍して頑張り続けている社員の評価を高くするなどの措置を考えるなど対策を行うようにしましょう。
安易な退職を誘発する可能性もある
ジョブリターン制度を導入することによって安易な退職を誘発する可能性があります。ジョブリターン制度があることによって「辞めてもまた戻ればいい」と考えて積極的に退職していく社員が増える可能性があるためです。安易な退職を防ぐためにもジョブリターン制度で復帰できる社員の条件を定めるようにしましょう。
社内の雰囲気悪化につながる可能性がある
既存社員のモチベーション低下や社内の雰囲気悪化も大きなデメリットのひとつです。社内のモチベーションが低下しないよう、資格や勤続年数、離職年数に応じて待遇を明確に設定しておくなど、誰もが納得できるルール作りが重要です。
ジョブリターン制度を導入するためのポイントとは?
ジョブリターン制度が利用できる条件の明確化、既存社員との不公平にならない制度の制定、企業と退職者がつながる手段の確保、そして復職時の雇用形態の柔軟化です。
以下のポイントを押さえて、復職する従業員と既存従業員、そして企業の三者がそれぞれ納得できる制度づくりを進めましょう。
制度が利用できる条件を明確にする
ジョブ・リターン制度を導入する際には、制度が利用できる条件を明確化する必要があります。例えば、退職の理由を介護や妊娠・出産、配偶者の転勤、留学などに限定する、勤続年数が3年以上の従業員に絞る、などです。このように条件を絞ることで、誰もが利用できる制度ではなくなり、離職率も抑えられます。
継続して在籍している従業員との不公平感が出ない制度を制定する
長年在籍している従業員との不公平感が出ない制度にするために、既存社員をベースに考えて制度の内容を決めましょう。復職する従業員のほうが待遇が良いとなると、現役社員から不満が出るためです。例えば、既存社員よりも給料を低く設定する、役職や昇進は既存社員を優先する、などとすれば既存社員のモチベーションも下がりません。長年自社に貢献してくれている社員のチャンスや成長を阻まないように配慮しましょう。
企業と退職者がつながる手段を確保しておく
企業と退職者がつながる手段を確保しておくと、人手が欲しいときにも復帰したい従業員から連絡が来る場合があります。あらかじめ自社のホームページで、ジョブ・リターン制度専用のページを作っておくと、退職者とスムーズにつながれるはずです。また、退職者の住所をシステムに登録しておき、企業側からジョブ・リターン制度の案内を出す方法もあります。このようにお互いの連絡手段を確保しておくことで、人手不足が発生した際にも解決することができるでしょう。
復職時の雇用形態を柔軟に対応する
復職時の雇用形態に幅を持たせると、勤務する本人にとって働きやすくなります。小さい子どもがいる従業員にはパートタイム、介護から手が離れた従業員にはフルタイム勤務など、一人一人に柔軟な対応ができるのが理想的です。復職希望者一人一人に合わせることで、従業員は復職後も安心して働けるようになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、ジョブリターン制度について解説しました。
優秀な人材の採用と確保に苦労している企業にとって、ジョブリターン制度は有効な制度のひとつですが、重要なのはジョブリターン制度の目的を明確にすることです。まずは、自社でジョブリターン制度を導入した場合、どんな効果を得たいのか、その目的を明確にすることから始めましょう。