塗装業での開業について解説~必要資格・許可や開業資金調達方法など~

投稿:
更新:

塗装業の開業について検討している方もいるでしょう。塗装業を始めるには様々な準備が必要になってきます。

そこで今回は、塗装業での開業に必要な準備や手続き、開業資金の調達方法などを解説しますので、これから塗装業を開業する方はぜひ参考にしてみて下さい。

そもそも塗装業とは?

まず塗装業とは、塗装工事を請け負う業者のことで、塗料や塗材を工作物に吹き付けたり、塗り付けたり、貼り付けたりするといった工事一般を実践する業者です。国土交通省が発行している「建設業許可事務ガイドライン」によると、塗装業の主な業務は、屋根塗装、外壁塗装、コーキング補修となっています。

なお、路面塗装や鋼構造物への塗装、溶射工事なども塗装業に分類されるので留意しましょう。意外と業務の幅が広いことに驚かれた方もいるかもしれません。塗装業を始めるにあたり、全部の分野を一定のレベルで実践できるのも理想ですが、屋根塗装なら自信があるというように、何か強みを持つのも一案です。
 

<塗装業の主な仕事>

・屋根塗装
・外壁塗装
・コーキング補修

塗装業開業の準備

塗装業を開業するにあたり、どんな準備が具体的に必要なのか、ここでご紹介します。開業前にしっかりと読み、準備漏れがないようにしましょう。

資格と許可

塗装業を開業するにあたり、何か必要な資格や許可はあるのか気になる方もいるかもしれません。具体的には特に必要な資格や許可はなく、誰でも始めることができます。しかしクライアントの信頼を得たいのであれば、塗装についての技術力や専門性を証明する塗装技能士や、有機溶剤の取り扱いができることを証明する有機溶剤作業主任者などの国家資格があるとよいかもしれません。

民間資格でも住宅診断の結果とそれに対する提案ができることを証明する外壁劣化診断士や、外壁について知識、技術面ともに熟練していることを証明する外壁塗装マイスターなど、様々な資格がるので資格を取ってみることをお勧めします。

塗装業開業で必要な手続き

個人事業主として開業する場合、一般的な手続きとして、個人事業の場合、個人事業の開廃業等届出書、所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書、青色申告承認申請書等を納税地の所轄税務署へ提出します。また、個人事業開始申告書は事業所所在地の都道府県税事務所へ。詳しくは、最寄りの管轄行政に問い合わせが必要です。

法人として会社を設立する場合、定款作成、会社登記をし、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、法人設立届出書(地方税)などを提出します。

開業資金

どんな事業でも開業するときに必要なのが資金です。道具を一式揃えたり、塗料を置くスペースを借りたりする必要がありますし、場合によっては事務所を構えることもあるでしょう。最初に必要な資金をしっかりと用意しておくことが重要です。

塗装業の場合、仕事をしたからと言ってすぐにお金が手に入らないこともあります。支払い振り込みは2~3月後というケースも多々あります。その間必要な道具を買い足したり、従業員にお金を払ったり、光熱費などを払ったりするためにある程度の貯金がなければ開業は難しいでしょう。

最低でも300万円の貯金は必要です。500万円以上あれば開業してから軌道に乗るまで安心でしょう。開業前にしっかりと貯金するように心がけてください。

単価設定

塗装業を始めると、その単価の設定にも要注意です。直接クライアントと自分が契約をしてやり取りする元請けの場合は、売上高から営業費や事務費、もろもろの経費を出費することも考えて値段設定しなければなりません。競合に勝ちたいと思うあまり、最初に設定した値段が低すぎると、後に自分が苦しむことになります。

顧客をつかみたいあまり、最初に相手の言い値であまり利益の上がらない金額で引き受けてしまうと、その後もその金額で仕事を頼まれかねません。また、同じ地域に住む競合に苦情を言われる可能性もあります。その地域で同じような塗装業をしている業者の値段を参考にしてみるのも一案です。

元請けは、営業マンの育成や宣伝費などもろもろの費用が掛かり出ていくお金が多いように感じるかもしれませんが、軌道に乗れば売り上げの40~50%が手元に残ります。下請けの場合は売上があっても職人の手間や原価を抜くと売り上げの20%しか手元に残らないことがほとんどです。その辺りも考慮して単価を考えてみましょう。

クライアントにわかりやすい値段設定をしたいのであれば、パック料金を設定するのもおすすめです。たとえば、「外壁100平方メートルにつきシリコン塗料〇万円」というように設定すればクライアントにも明確です。また、電話などで直接「外壁塗装はいくらぐらい?」と聞かれた時に見積もりをしないとわからないでは相手が不信感を抱きかねません。パック料金を設定しておけば即答できますしクライアントもどれぐらいの費用がかかるのかイメージしやすいのでおすすめです。

塗装業で取得しているとお客様からの信頼を得やすい資格

上記でもお知らせしましたが、塗装工として独立するときに必ず取得しなければならない資格や許可はありません。しかし、取得しているとお客様からの信頼を得やすい資格はいくつかあります。

ここでは、塗装業に関連する資格や許可をご紹介します。

塗装技能士【国家資格】

技術力や専門性を証明します。

足場の組み立て等作業主任者【国家資格】

足場の組み立て、解体、変更などの作業ができることを証明します。

有機溶剤作業主任者【国家資格】

有機溶剤の取り扱いができることを証明します。

石綿作業主任者【国家資格】

アスベストを含む建材を処理できることを証明します。

乙4種危険物取扱者【国家資格】

引火の可能性がある油性塗料の取扱時に必要となる資格です。

外壁診断士【民間資格】

外壁の知識を持っていることを証明します。

外壁劣化診断士【民間資格】

住宅診断の結果とそれに対する提案ができることを証明します。

外壁塗装マイスター【民間資格】

知識・技術面ともに熟練していることを証明します。

建設業許可

請負金額が500万円以上の工事などでは許可を受ける必要がある。認定は国土交通省・各都道府県。

塗装工にとってもっとも汎用性の高い資格は、国家資格である塗装技能士です。レベル別に1級から3級まで分かれていて、取得するとお客様や同僚から知識や技術面での信頼を得やすくなります。自身の腕試しとして受検してみるのもよいでしょう。

また建設業許可については、塗装工事の多くは工事規模が比較的小さいため、建設業の許可申請が必要となるケースは少ないと言えます。しかし、次の要件のいずれかに該当する工事を請け負う場合は、建設業許可が必要となります。

・建築一式工事について、工事1件の請負金額が1,500万円以上の工事または延べ面積が150㎡以上の木造住宅工事
・建築一式工事以外の建設工事について、工事1件の請負金額が500万円以上の工事

詳しくは国土交通省のHPからご確認ください。

塗装業で使う道具

塗装業では様々な道具を使って工事をします。開業後に慌てて用意することがないよう、余裕を持って準備を始めておきましょう。

ローラー(ウールローラー、砂骨ローラーなど)

用途によって素材や毛足の長さの違うローラーを使います。

刷毛(平刷毛、筋交い刷毛、寸胴刷毛など)

ローラーではきれいに塗れない細かい部分の塗装に使用します。用途に応じてさまざまなラインナップがあります。

養生シート

外壁を塗装する際に窓に塗料が付かないように覆うためのシート。透明のビニールシートが多いです。自動車やバイクを覆うタイプの養生シートも販売されています。

養生テープ

養生シート同士を張り合わせるためのテープです。後から剥がせるマスキングテープを用いることが多いようです。

足場

高所での作業時に必要です。

高圧洗浄機

塗装前に屋根や外壁にこびりついた汚れを落とす際に使います。

開業資金をどこから調達すればいいのか?

開業するにあたり、自己資金、いわゆる貯金だけで開業できればいいですが、なかなか日々の生活費なども考えると難しい所です。では自己資金以外でどこから調達すればいいのでしょうか?

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。

一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。

創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。

信用保証付の融資

「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。

手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。

親族、友人・知人からの借入

親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。

その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、塗装業での開業に必要な準備や手続き、開業資金の調達方法などを解説しました。

塗装業を開業すると決めたら、まずは資金や資格取得などについて検討してみましょう。開業したら集客方法などにも工夫して、安定したビジネスが行えるよう積極的に取り組んでみましょう。

より詳しい情報や起業・開業に役立つ情報は「起業のミカタ(小冊子)」を無料で贈呈していますので、合わせてお読みください。

相談会

相談会

今まで1,000人以上の相談会をしてきたアドバイザーが、豊富なデータ・最新情報とノウハウ、専門家の知見を元に、無料かつ約30分~1時間ほどで「起業・開業ノウハウ」をアドバイスします。