会社設立後の消費税免税期間や要件について解説

投稿:
更新:


会社設立後、一定の条件を満たすことで消費税の免除を受けることができます。工夫次第では、会社を設立してから1年以上に渡って、その特例の恩恵を得ることも可能です。ただし誰(どの会社)でもが免税になるわけではありません。

そこで今回は、会社設立後の消費税免税期間や要件について解説していきます。

※この記事を書いているVector Venture Supportを運営している株式会社ベクターホールディングスが発行している「起業のミカタ(小冊子)」では、更に詳しい情報を解説しています。無料でお送りしていますので、是非取り寄せをしてみて下さい。

そもそも消費税とは?

そもそも消費税とはどういった税金になるのでしょうか?消費税を実際に支払うのは我々1人1人、つまり消費者ですが、実際に国に消費税を納めているのは、事業者(法人や個人事業主)になります。法人や個人事業主が、消費者から預かった消費税を国に納めていることになるのです。

国に納める消費税の計算方法は、

・(消費者から預かった消費税) −(仕入や経費を払った際に支払った消費税)=納税予定消費税

になります。

つまり、「売上にかかる消費税」から「仕入などに係る消費税」を差し引いた差額を納めていることになります。

会社設立後、消費税の免税期間について

結論からお伝えすると、会社設立後の消費税免税期間は最長2年間です。

国税庁のHPに掲載されている「納税義務の免除」には、以下のようにあります。

・消費税では、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、その課税期間における課税資産の譲渡等について、納税義務が免除されます。
国税庁|No.6501 納税義務の免除

ただし基準期間の売上高が1,000万円以下だとしても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税対象になります。特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高のほかにも、給与等支払額の合計額でも判定することが可能です。

【無料】起業相談会を実施しています。起業相談会申し込みはこちらから。

基準期間と特定期間の違いについて

「基準期間」と「特定期間」ではどのような違いがあるのでしょうか?

・基準期間:前々事業年度(1年決算法人の場合)
・特定期間:その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間

上記の2つを消費税の免税と照らし合わせると、まずは基準期間で課税売上高が1,000万円以下かを判定されます。従来はこの基準期間のみだったのですが、平成23年の改正で特定期間でも判定されるようになりました。つまり基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高もしくは給与等支払額が1,000万円を超えている場合は、消費税の課税事業者となってしまいます。

ちなみに特定期間の判定方法を課税売上高にするか、給与等支払額にするかは、納税者が選択可能になります。

個人事業主と合わせれば、免税期間が最長4年間

個人事業主と合わせると、最長で4年間消費税が免税になることをご存知でしょうか?個人事業主でも法人化と同じ仕組みで消費税が算出されるので、個人事業主として2年間の免税期間を経た後に法人化すると、個人の期間と合わせて最長4年間消費税が免除されます。

法人化を検討している方は、まずは個人事業主として2年間消費税の免除を受けてからにするのも一つの手でしょう。

会社設立後、消費税の免税要件について

会社設立をしたからと言って、無条件で消費税が免除されるわけではないのは、ここまででご紹介してきたとおりです。

上述のとおり、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合、1期目は消費税が免除されます。ただし2期目以降は、以下のいずれかの要件をクリアすることが必要になります。

ここからは、詳しい免税要件について説明していきます。

・特定期間の課税売上高が1,000万円以下
・特定期間の給与支払額の合計額が1,000万円以下
・設立1期目が7ヶ月以下

特定期間の課税売上高が1,000万円以下

まず1つ目の要件は、特定期間の課税売上高が1,000万円以下であるということです。特定期間は、法人の場合「その事業年度の前事業年度開始日以後6ヶ月」が該当します。(個人事業主の場合は、前年1月1日~6月30日まで)

特定期間の給与等支払額の合計額が1,000万円以下

続いての要件は、特定期間の給与等支払額の合計額が1,000万円以下であるということ。上述したように、特定期間内で1,000万円以下にするのは、「課税売上高」「給与等支払額」のどちらかを選べます。もし課税売上高が1,000万円を超えてしまっていても、給与等支払額を調整して1,000万円以下にすれば、免税事業者になれます。

主な調整方法は、以下のとおりです。

・月末締め翌月支払いにすることで、特定期間の給与を5ヶ月分にする
・給与の一部を賞与という形で、特定期間外の下半期に支給する
・業務委託を活用して給与ではなく外注費として支払う

設立1期目が7ヶ月以下

法人で会社設立する際、1期目を7ヶ月以下にすれば、特定期間の条件に該当しないので、免税事業者になれます。つまり1期目が7ヶ月以下であれば、上述した2つの条件がクリアできなくても消費税の納税義務は発生しません。

ただしその場合の免税期間は最長で1年7ヶ月となるので、「課税売上高」「給与等支払額」ともに1,000万円を超えてしまいそうなときは、1期目の期間を調整してみるのもいいでしょう。

消費税の免税期間をできるだけ延ばすには

資本金に関する対策

期首時点での資本金が1,000万円未満であることがその事業年度で消費税の課税を免れるための必要条件です。もし、増資をしたいのであれば、会社設立後2期目の期首時点を過ぎたあとに実施することで、消費税の課税対象となるタイミングを1年間遅らせることができます。

課税対象売上高に関する対策

前事業年度の上半期(税法上の「特定期間」)に計上される課税対象売上高を1,000万円以下に抑えることで、消費税の課税開始時期を1年間延ばすことが可能です。もともと上半期に計画していた、売上増につながるキャンペーン施策を下半期に延期するなどの対策が挙げられます。

ちなみに、売上高基準だけに注目した場合、1事業年度全体の売上高が1,000万円を超えれば、その翌々事業年度から消費税が課される原則となっています。したがって、「特定期間」の売上高が1,000万円超となってしまったために、創業後2期目から消費税が課される事態は、ぜひ避けたいものです。

支払給与等に関する対策

前事業年度における上半期(税法上の「特定期間」)に支払う給与および賞与等が1,000万円を超えないように調整することで、翌事業年度の消費税が免除されます。なお、ここでいう支払い給与等には、正社員および役員分だけでなく、派遣社員およびパート社員など非正規社員分も含みます。月々の給与支払額での調整が難しければ、自分への賞与(ボーナス)の支払いを、上半期から下半期に変更することも有効な対策のひとつです。

なお、上記の資本金の条件は必須ですが、売上高および支払給与等に関する対策は、いずれかを実施すれば、消費税の課税開始のタイミングを延期することが可能です。

【無料】資金調達相談会を実施しています。資金調達相談会申し込みはこちらから。

課税対象を選択した方がいい場合とは?

起業・開業してから数年は、高額な設備投資や大きな仕入れをする会社も多いでしょう。支払った消費税が受け取った消費税よりも多い場合は、その差し引き分を還付してもらえます。

そのため、消費税の免税対象となるのではなく、自ら課税対象を選択して還付を受けた方が得になることもあります。設備投資や仕入れと売上のどちらが多くなるのかを計算して、還付金がもらえるのか、消費税免除の方が有利なのかを考えてみるとよいでしょう。

ちなみに免税事業者が課税事業者になりたいときに税務署に提出する届出を「消費税課税事業者選択届出書」といいます。提出期限は、課税事業者になりたい課税期間(※)の初日の前日まで、提出先は納税地の所轄税務署長です。
(※)課税期間とは、個人事業者の場合1月1日~12月31日までの1年間、法人の場合は事業年度です。(ただし特例あり)

例えば、事業年度が4月1日~3月31日の法人が「消費税課税事業者選択届出書」を出す場合の提出期限は、3月31日になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、会社設立後の消費税免税期間や要件について解説しました。

これから会社設立を計画しているのであれば、必要以上に消費税を納めることにならないよう、資本金の設定金額や売上高等について細心の注意を払うことをおすすめします。月々の財務コントロールを適切に実施するためにも、精度が高い事業計画の策定や月次決算の実施が重要になります。

より詳しい情報や起業・開業に役立つ情報は「起業のミカタ(小冊子)」を無料で贈呈していますので、合わせてお読みください。

相談会

相談会

今まで1,000人以上の相談会をしてきたアドバイザーが、豊富なデータ・最新情報とノウハウ、専門家の知見を元に、無料かつ約30分~1時間ほどで「起業・開業ノウハウ」をアドバイスします。