飲食店を開業する際に重要な事として「資金調達」「物件選び」がありますが、よく相談者の方に「資金調達」「物件選び」どちらが先に進めなくてはいけないのかという質問をいただきます。
そこで今回は、「飲食店開業する際、「資金調達」「物件選び」どちらが先なのか?」について解説していきます。記事ではおススメの資金調達先や飲食店開業する際の届出や資格などもご紹介していますので、合わせてご確認ください。
目次
「資金調達」「物件選び」どちらがが先なのか?
結論からお伝えすると、「資金調達」より「物件選び」が先です。
多くの人が物件選びではなく、開業資金を準備することが先決であると考えている人が多いのではないでしょうか。資金がなければ物件を契約できないといったイメージがあるためです。しかし、実際には資金調達ではなく、物件を探し契約する方を先に行わなければなりません。
理由は、自己資金ではなく資金を調達して開業するケースが一般的であるためです。資金を調達する際には、開業した後に細かい事業計画書を作成しなければなりません。資金融資をする立場では、どのような店舗を出店するのか未定である、賃料が分からない、出店予定地域で開業することが確定していないという相手には、どれほど事業計画書を作成しても信用できません。最終的に、資金調達ができなかったという可能性があるためです。
そのため、資金調達ではなく、物件探しを先に行う必要があります。物件に申し込む際には手付金を支払わなければならないケースがありますが、手付金不要で申し込みできる物件もあるため、オーナーに交渉しましょう。借り手が融資を受けた後に契約するというケースは珍しいことではないため、物件を手付金なしで仮押さえをしたいといった希望にも柔軟に対応してくれることが多いです。
物件選びは施工業者にも同行してもらいましょう
物件を探している際に、内見で確認すると、内装工事をする間取りや、設備の関係で予定していた席数を確保できないといったケースが非常に多いです。そのため、物件を選ぶ際に施工業者と一緒に行う方法が有効です。
施工業者と一緒に物件を選ぶことによって、希望通りの内装工事を行えるかどうかをその場で判断できます。また、物件を仮押さえする際に施工業者に同行してもらうことにはメリットが多いといえます。物権を改装した後に、内装工事、外装工事、資金調達など様々な準備を行なわなければならないため、開業予定日の8ヶ月~10ヶ月前には契約を済ませておきましょう。
ただし、いつから家賃を支払わなければならないのかについて、注意しなければなりません。開業の準備をしている最中も家賃が発生する契約は、居酒屋の売り上げがない状態で家賃を支払い続けなければならないため、自己資金の中から開業前の家賃を算出しなければなりません。
なお、飲食店を開業する際には、物件を選ぶ際にもポイントがあります。物件にはいぶき物件とスケルトン物件など種類があることが特徴です。居抜き物件にはいくつかの種類があり、椅子やテーブルが撤去されていても、天井や壁が残った状態なども居抜き物件と呼ばれます。居抜き物件は飲食店だけを指すのではなく、医療や小売店なども居抜き物件が使用されているケースが多く、不動産会社で確認する際には「造作譲渡物件」と記載されているケースが一般的です。
ただし、居抜き物件の場合は、以前営業していた店舗が集客できなかったために閉店したケースも珍しくありません。そのような居抜き物件は近隣の住民から良い印象を持たれていないため、新しく飲食店をオープンしても良いイメージを持ってもらうまでに時間がかかる可能性があります。そのため、居抜き物件を確認する際には、不動産会社へ前に営業をしていた店舗の情報も問い合わせることがポイントです。
また、どのような店舗を運営するのかによって、厨房の広さや必要な器具には違いがあり、飲食店の経営を検討している人ごとに作りたい店舗の雰囲気にも違いがあります。そのため、内装が作られた状態や厨房設備が残った状態の物件を借りることによって、経営者がイメージしている雰囲気のお店を作れないケースもあるでしょう。スケルトン物件であれば、設備や内装は取り除かれているため、こだわりの店舗作りを行えることがメリットです。
飲食店開業する際の手順について(物件選び・資金調達)
ここからは、具体的な飲食店開業する際の手順について(物件選び・資金調達)説明していきます。
STEP①:日本政策金融公庫に先に相談に行く
上記でもお知らせした通り「店舗物件を決める」が先なのですが、飲食店を開業する地域が決まっているのであれば、店舗物件を決めるより前に、その地域の日本政策金融公庫に一度相談に行くことをお勧めします。日本政策金融公庫に行って、融資の申請に必要な書類をもらい、申請の手続き、融資が決定するまでの期間などを実際に聞いて、店舗物件を見つけてから融資の申請をするまでの流れを把握しておきます。申請をしてから、実際に融資が決まるまで1~2ヶ月程度時間がかかりますので、店舗物件を見つけたら融資の申請までをなるべくスムーズに短期間で進めていく準備をしておきます。
飲食店開業の資金融資の申請は、綿密な事業計画を立てて提出しなければなりません。開業しようと決めた店舗物件の物件取得費はいくらなのか、その店舗での内装工事費はいくらかかるのか、その店舗に必要な厨房設備にはいくらかかるのかといった、決めた店舗物件に対してかかる開業費用をきちんと算出して開業計画書に書かなければ融資の申請すらできないのです。融資をするかどうか決めるために日本政策金融公庫の人が実際に店舗を見に行くこともあります。融資を受けられるかどうかも店舗物件ありきなのです。
STEP②:店舗物件を決める
店舗物件を決めてから開業資金の融資を申請しますが、店舗物件を決めるという事は店舗物件を契約するではありません。店舗を契約すると店舗物件取得費が発生します。たとえその費用を払える自己資金があったとしても、融資が通らなければ内装工事もできない、厨房機器を揃えられない、開業できないではお話になりません。気に入った店舗物件を見つけたら、不動産屋に「お金が借りられたら契約したい」という旨を伝えます。
店舗物件というのは、普通の部屋を借りるのと違い、借りるだけでも結構な額のお金が掛かります。借りた後も内装工事や厨房設備などなど開業するまでに大きなお金が掛かります。そのことは不動産屋ももちろん分かっていますし、個人が飲食店を始めるときには、融資がおりてから店舗物件の契約をするは普通のことです。手付金を払って店舗物件の融資が決まるまで契約を待ってもらったり、長いこと空いている物件なら手付金無しで待ってくれることもあるかもしれません。
STEP③:開業資金の融資を申請する
この店舗物件で開業しようと決めたら、いよいよ動き出します。決めた店舗物件で事業計画を立てます。店舗物件取得費の算出はもちろん、数社の施工業者に内装工事の見積もりを出してもらいます。内装工事の見積もりは、実際に店舗物件を見ながら話し合いをし、図面を引いたりと見積もりが出るまでに時間がかかります。必要な厨房設備、備品から運転資金まで開業に必要な全てのお金をはじき出して、日本政策金融公庫に必要な額の融資を申請します。
飲食店開業の資金調達方法は「日本政策金融公庫」
融資というと、銀行や信用金庫などの民間の金融機関が浮かびますが、飲食店の開業資金の融資については、こうした金融機関はほとんど対応してくれません。なぜなら事業者としての取引実績がないからです。
代わって開業融資に応じてくれるのが、日本政策金融公庫や信用保証協会といった公的な融資機関です。特に日本政策金融公庫は、中小企業や小規模事業者の創業や創業後の経営を支援するため、政策的に設立された100%国が出資する金融機関ですから、個人レベルで飲食店を開業する際にはありがたい融資先になります。
では、飲食店の開業に対応した日本政策金融公庫の融資制度や融資を受ける際のポイントなどについて具体的にお伝えします。
飲食店の開業に対応した日本政策金融公庫の融資制度
飲食店を開業する際、利用できる日本政策金融公庫の融資制度としては、「新創業融資制度」があります。この融資制度の対象者は、新たに事業をはじめる方、または事業開始後間もない方(税制申告を2期終えていない方)となっています。また、無担保、無保証人で、融資限度額が3000万円(運転資金1500万円)というものです。飲食店開業者の多くはこの融資制度を利用しています。
また「中小企業経営力強化資金」という融資制度もおススメです。この融資制度では、経済産業省が認定した「経営革新等支援機関(認定支援機関)」の指導や助言を受けると、「新創業融資制度」よりも多くのメリットが受けられるものです。主なメリットとしては、支店における決済額の上限が「新創業融資制度」の場合は1000万円であるのに対し、「中小企業経営力強化資金」では2倍の2000万円までとなっています。また、利率についても約1%低く設定されていますので、借入額や借入期間によっては100万円以上の差となります。
飲食店開業するために必要な資格について
飲食店を開業するためには、食品衛生管理責任者と防火管理者の二つの資格を取得する必要があります。
食品衛生責任者
食品衛生責任者は食品を扱う店舗で働く従業員のうち必ず1名以上が取得していなければならない資格です。食品衛生責任者は店舗内の衛生管理や従業員の衛生管理指導を行う立場のスタッフです。食品衛生についての知識を学ぶために、それぞれの地域にある保健所で講習を受け、資格を取得し、費用は1万円ほどが一般的です。
費用についてはそれでも地域で異なるので、保健所に詳細を確認しましょう。
防火管理者
全店舗内の収容人数が30名以上の飲食店は、防火責任者を配置しなければなりません。それぞれの地域の消防署に足を運び、講習を受け付けることで取得できます。講習は1日もしくは2日かかり、費用は3000~5000円と地域によって異なります。講習のスケジュールや費用について、事前に確認して予定を組みましょう。
調理師免許は必要ない
飲食店を開業するためには、調理師免許を持っていなければならないと考える人も多いですが、実際には調理師免許がなくても小さい飲食店を開業することは可能です。調理師免許を取得するために、調理についての専門技術や知識を習得できるため、経済的時間的な余裕がある人は調理師免許を取得するのも良いでしょう。
飲食店を開業するために必要な届出
飲食店を開業する場合、各所に届出をしなければなりません。届け出先と、対象の業態、期限について紹介します。
食品営業許可申請
・届出先:保健所
・対象の営業形態:全店舗
・届出時期:店舗完成の10日ほど前まで
防火管理者選任届
・届出先:消防署
・対象の営業形態:収容人数が30人を超える店舗
・届出時期:営業開始まで
防火対象設備使用開始届
・届出先:消防署
・対象の営業形態:建物や建物の一部を新たに使用し始める場合
・届出時期:使用開始7日前まで
火を使用する設備等の設置届
・届出先:消防署
・対象の営業形態:火を使用する設備を設置する場合
・届出時期:設備設置前まで
深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
・届出先:警察署
・対象の営業形態: 深夜12時以降もお酒を提供する場合
・届出時期:営業開始の10日前まで
風俗営業許可申請
・届出先:警察署
・対象の営業形態:客に接待行為を行う場合
・届出時期:営業開始の約2ヶ月前
個人事業の開廃業等届出書
・届出先:税務署
・対象の営業形態:個人で開業する場合
・届出時期:開業日から1ヶ月以内
労災保険の加入手続き
・届出先:労働基準監督署
・対象の営業形態:従業員を雇う場合
・届出時期:雇用日の翌日から10日以内
雇用保険の加入手続き
・届出先:公共職業安定所
・対象の営業形態:従業員を雇う場合
・届出時期:雇用日の翌日から10日以内
社会保険の加入手続き
・届出先:社会保険事務所
・対象の営業形態:法人の場合は強制加入/個人の場合は任意
・届出時期:可能な限り早く
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、「飲食店開業する際、「資金調達」「物件選び」どちらが先なのか?」について解説しました。
融資の申請をしたら、融資の可否が分かるおおよその時期を聞いておきましょう。融資の可否が決まる時期が分かれば、不動産屋に店舗物件をおさえてもらう期間の話が出来ます。
融資で資金調達ができなければ飲食店を開業できないという方が多くいます。お金の問題でつまずいてしまったら開業は基本的にできませんので、事前に資金調達の専門家(税理士など)に相談しておくと良いでしょう。