事業を拡大するためには、資金の調達をする必要があります。資金調達の方法のひとつに、エンジェル投資家から出資を受ける方法がありますが、そもそもエンジェル投資家をどのように探すのでしょうか?
そこで今回は、エンジェル投資家の探し方や出資を受ける為のコツについて解説していきます。
※この記事を書いているVector Venture Supportを運営している株式会社ベクターホールディングスが発行している「起業のミカタ(小冊子)」では、更に詳しい情報を解説しています。無料でお送りしていますので、是非取り寄せをしてみて下さい。
目次
そもそもエンジェル投資家とは?
エンジェル投資家とは、起業家のスタートアップを助ける個人投資家です。エンジェル投資家の多くは、現起業家、引退した起業家、M&A・IPOなどで会社を売却して資金を手に入れた実業家達になります。
通常、起業後まもない時期は、資金調達の面で苦労を強いられます。起業時は説明できる実績が 無いため、銀行や金融機関などの融資やベンチャーキャピタルの出資を受けにくいからです。こうした資金調達の問題を解決してくれるのが「エンジェル投資家」の役目です。
エンジェル投資家には、投資の見返りとして、株式などを提供します。エンジェル投資家は、友人などのケースは別ですが、何の利益も見込めないようなベンチャーに対しては基本的に投資はしません。 当然ですが、投資した企業が倒産すると資金回収は出来ませんので、通常の投資と比較すると極めて高いリスクを負うことになるわけです。
出資と融資の違いとは?
エンジェル投資家からの出資と金融機関からの融資で大きく異なる点は、返済の義務があるのかという事です。金融機関からの融資では、返済の義務があるうえに、返済額に加えて利子も支払わなければならず、返済面で行き詰ってしまう起業家も沢山います。その反面、エンジェル投資家からの出資では返済の義務はありません。
上記内容を知ると、全ての人がエンジェル投資家からの出資を望むものですが、エンジェル投資家の中には、株式会社が所持している所有権を譲るように求めてくる投資家や経営に対して過度に口を出してくる投資家も存在します。返済の義務が無いのは、大きなメリットとなりますが、利用する際には、デメリット面も考えたうえで検討するようにしましょう。
エンジェル投資家の探し方とは?
当たり前のことですが、エンジェル投資家に投資をしてもらうためには、エンジェル投資家と出会うことが必要です。
起業家とエンジェル投資家を繋ぐマッチングサイトや金融機関や人材企業、全国各地の自治体、経済団体などが開催する起業家と投資家のイベントやセミナーに参加もありますが、「この人に投資してほしい」という具体的な希望があるなら、直接、手紙やメール、SNSでコンタクトを取ってみるのも有効です。
交流会やイベントに参加する
交流会やイベントへの参加は、投資家にすぐに直接会うことができ、自身の事業やビジョンなどの熱意をアピールできる場です。そして、交流会やイベントに参加する人の中には、事業計画の必要性や斬新さを正しく評価してくれる人が多く存在します。業種別の専門的交流会になると特にです。
しかし、どうしても会える投資家の数は限られてしまうので、自分にマッチする投資家と会えるかはわからない所がありますので、インターネットやSNSなどで合いそうなエンジェル投資家が登壇するイベントを探してみて下さい。
マッチングサイトを利用する
マッチングサイトの一番のメリットは、簡単に多くの投資家から自分にあった投資家を見つけることができるという点です。マッチングサイトを通してエンジェル投資家を探せるサービスを行っている会社も多く、利用することで、相手の情報を素早く知ることができ、自分の空いた時間に利用することができるため、効率も良いと言えます。
サイトの利用は、無料のものから、月額10,000円近いものまで存在し、月額料金が上がれば上がるほどマッチングできる投資家の数が増える仕組みになっています。Startup List(月額5,000円(登録のみは無料))やANGEL PORT(月額0円)などがオススメのマッチングサイトです。
・Founder
Founder(ファウンダー)は、エンジェル投資家と起業家のマッチングサイトの中では日本最大級の登録数を誇ります。そのため、起業家がより自身の事業に合ったエンジェル投資家を探しやすいといえます。
・ANGEL PORT
投資家はエンジェル投資家のみとなっており、SNSのDMと同じような機能のため気軽に相談ができるのが特徴です。
・グッドエンジェル
ITやアプリなど、ジャンルごとに投資家を検索できるシステムが特徴です。公式サイトのトップページでは起業家と投資家、それぞれのアクセス数を可視化し、ランキング形式で紹介しています。
TwitterやFacebookなどのSNSで探して連絡を取る
次にTwitterやFacebookなどのSNSで探して、直接コンタクトを取る方法です。投資をしてほしい起業家に手紙やメールを送り、企業への熱意と協力を訴えます。しかし、全く面識がないなら、反応してもらえる可能性は低いでしょう。日本では「経営者に直接支援を申し込むのは失礼」といった考え方もあります。その場合は、まず知り合いの経営者や起業家の中にその投資家と繋がりがある人物がいないかを探します。その人物にエンジェル投資家を紹介してもらうのが近道です。きちんとした紹介があれば信頼度も上がり、出資してもらえる可能性も高まります。
エンジェル投資家が投資を決めるポイントは、その起業家を応援したいかどうかです。事業の将来性や収益も大切ですが、起業への情熱や自分の魅力を全力で伝えていくことが重要です。
ピッチコンテストへ参加する
ピッチコンテストというのは、起業したばかりのスタートアップ企業を対象に行っているプレゼンテーション大会の事を言います。エンジェル投資家がピッチコンテストの審査員をしている場合も多いので、ピッチコンテストでのアピールを通して出資が決まる可能性があります。
また、受賞したあかつきには、「投資家とのマッチング」という支援プログラムがあるため、コンテストへは積極的に参加すると良いでしょう。コンテストは、地方自治体が開催しているものから企業が開催しているもの、規模も大小それぞれあるので力試しに挑戦してみるのも面白いのではないでしょうか?
社会人塾への入学
これは、起業家自らがビジネスを学べる場に足を踏み入れ、そこの講師であったり受講生を通じて紹介してもらう方法です。講師陣には多くの人脈があり、投資家も多く知っている可能性があります。
また、受けに来ている受講生の中にも、多くの情報を持っている方や同じ悩みを抱えている方など、様々な出会いがあるため、自分にはなかった新しい道を切り開くことへも繋がります。
株式投資型クラウドファンディング
投資型のクラウドファンディングでエンジェル投資家と出会う方法が注目されています。クラウドファンディングとは、資金を提供することでその事業を応援したいというプラットフォームのことです。株式投資型クラウドファンディングでは、投資をすることで事業の応援をすることが可能になります。
投資家にとっては最先端の技術を取り扱う事業や、社会的に公益性の高いビジネスを投資することで応援することが可能です。スタートアップの事業者においては、クラウドファンディング上で事業の成長性をアピールすることによって資金調達をすることが可能です。
出資を受けるためのコツとは?
上記でご紹介した内容でエンジェル投資家と出会えたとしても、必ず出資してもらえるわけではありません。では、どうすれば出資を受けやすくなるのでしょう。出資を受けるためのコツについて以下で紹介します。
市場規模と成長性
プロダクトの完成度が高くても、市場規模が小さければそれだけ利益も少なく、投資家のリターンも期待外れのものになります。事業がスケールするかどうかが、投資の価値があるかどうかに直結します。
プロダクトのクオリティ
良いプロダクトを生み出すためにはペルソナ(サービスや商品を利用する典型的なユーザ像)を正確に捉えられているかにかかっています。ペルソナの設定がプロダクトとマッチしているかどうか、慎重に検証してみてください。
トラクションの兆しがあるか
トラクションとは、スタートアップ企業の成長に必要な「牽引力(勢い)」のことです。事業が思うように成長せず、失敗に終わったスタートアップについて「トラクションが足りなかった」などと言われることがあります。成長の兆しを予期できる材料を準備しておきましょう。
事業計画に競争優位性が示されてるか
投資を受ける際に事業計画書を提出することは必須です。が、そこに競合他社と比較した際の優位性は書かれていますか?投資家が納得できる根拠や優位性をイメージしやすい図などを用意しておきましょう。
経営者の人間性
エンジェル投資家は最終的に起業家がどんな人物かを見極めようとします。事実と異なる言動や、誠実さを欠いた対応をすると、どんなに魅力的な事業計画書を用意していても、信用を失い投資する価値がないと判断されるでしょう。
エンジェル投資家から投資を受ける際の注意点
エンジェル投資家は事業を進めていくうえで心強い存在であり、多数のエンジェル投資家がビジネスのサポートをしています。一方で、エンジェル投資家を利用する際には注意点もあります。デメリットに目を向けることで事業リスクに備えることができるのです。具体的にどのような点に注意すればいいか見ていきましょう。
投資詐欺に注意する
エンジェル投資家を装った詐欺が増えていると報告が増えています。多くのエンジェル投資家は投資をすることを目的にしています。一方で、その良心につけこんで詐欺をはたらこうとする人も一定数いるのです。「投資をしてあげるから先にいくらかお金を払ってください」などと、お金の支払いを求められたときは注意しましょう。
しかし、詐欺であるケースとそうでないケースは分かりづらいことも多く、中々断りづらいケースも多いのが現状です。判別がつかないケースである場合、少しでも怪しいと感じたなら専門家などへ相談を行いましょう。マッチングサービスなどを活用する場合は、他のユーザーのレビューを参考にすることも重要です。事業の大切な資産を守るために、しっかりと対策をしましょう。
経営権に関与される場合がある
エンジェル投資家から投資を受けるためには、株式を発行するというケースも多いです株式を交付するということは、経営権の一部を譲り渡すということです。株式を一定数持った投資家は経営に関与することが可能となるため、経営者と対立することも考えられます。経営に関与されることは事業を成長させるために有利にはたらくこともありますが、事業者の思い通りに運ばないというケースも出るため注意してください。
事業の意思決定をスムーズに行くように、株式の発行を伴って資金調達をする際には十分な対策を講じておきましょう。具体的には、株式の保有数を管理する、事前に経営方針に関することを話し合っておくなどの方策が有効です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、エンジェル投資家の探し方や出資を受ける為のコツについて解説しました。
エンジェル投資家は、単純に儲かるか否かだけでなく、起業家がどれだけの熱意を持っているかやどれだけ事業が社会にインパクトを与えるかを注視しています。それぞれのエンジェル投資家の視点が異なるため、根気よく相性のよいパートナー探しをしましょう。
そして、投資してくれるからといって安易に飛びつくのではなく、今後も付き合っていけるか、自分の事業のメリットになるのかを慎重に見極めることが重要になってきます。