ピザは気軽に食べられて、チーズのまろやかさと生地のパリパリ感で日本でも人気の食べ物です。そんなピザを提供するお店を開業したいと一度は思ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、ピザ屋を開業するにあたり必要なことについて解説していきます。
目次
ピザ屋の開業形態について
まずピザ屋の開業形態について、主に単独店とFCシステムの2業態があります。FCでは「ピザーラ」、「ピザハット」、「ドミノピザ」の3社が業界をリードしています。
また店舗だけではなく、車内に窯を積んで移動販売しているものなど、ここ数年で販売業態も多様化してきています。実店舗でもイートインとテイクアウトを並行していることもあれば、どちらかに特化している場合もあります。業務形態が違うだけでも、構えるべき店の規模は大きく変わってきます。繁華街や観光地などでは食べ歩きできるワンハンドフードの需要が高いため、テイクアウト専門店も人気があるようです。最近では都市部やイベント会場など、人が多く集まる場所での移動販売も見かけることが多くなりました。
ピザ屋の形態別メリット・デメリット
ここでは、ピザ屋の形態によるメリットとデメリットをご紹介します。開業を検討するときには、それぞれの特徴を理解して自分にあった形態を選ぶようにしましょう。
実店舗型
実店舗型の一番のメリットは、固定の顧客がつきやすいことでしょう。店が認知されることでリピーターも増え、運営を継続していくうえで大きな強みになります。大型の店舗であればさらに認知度も高くなり大勢の集客が見込めることから、小規模開業の業態よりも売り上げを安定させて多くの収益を得やすくなるでしょう。
ただし、テイクアウトが可能な店舗では、食べこぼしや包装紙などのゴミが周辺に増えることで、近隣店舗とのトラブルにもつながるおそれがあります。また、家賃や人件費などのランニングコストがかかり、店の規模が大きくなるほど負担が大きくなることは覚えておかなくてはいけません。
移動販売型
移動販売は、その都度集客が見込める場所で販売できることが大きなメリットです。また、1~2人の少ない人数で稼働できるため、人件費もかからず省スペースで開業が可能なことも強みです。車両の維持費も実店舗の家賃より安くおさえることができますが、車両のメンテナンスや事故などのトラブルのリスクがあります。
デリバリー専門型
デリバリーの場合は、イートイン店舗のようにバッシングや接客サービスは必要ありません。しかし、代わりにピザを配達する人員を確保しなければなりません。配達エリアによっては人員を増やすことも必要で、人件費を大きく圧迫してしまうおそれもあります。また、移動販売と同じように事故やトラブルのリスクも出てきます。
ピザ屋を開業するために必要な資格
ピザ屋に限らずどんなお店でも、飲食店を開業する上で必要になってくる資格があります。こうした資格がないと店舗や設備や人材をいくら準備しても開業することはできませんので、まずは以下のような資格を取得することから始めましょう。
食品衛生責任者
まず食品を扱うお店には必須の資格となる「食品衛生責任者」の資格は、絶対に取る必要があります。食品衛生責任者の資格がないと営業許可が出ないのはもちろんですが、食品を扱う上で衛生管理というのは非常に重要であることをしっかり意識する意味でも、しっかりと勉強して資格を取得しましょう。
なお調理師や栄養士・管理栄養士、製菓衛生師などの資格を持っていれば、講習なしでも資格取得が可能です。この資格は、店舗全体の衛生管理を行うことや、店舗従業員に対し衛生管理を指導し、管理する立場としての資格です。衛生管理の概念なくして飲食店開業はあり得ません。資格を取得するには保健所において講習とテストを受講する必要があり、費用はおよそ1万円です。テストの難度は、しっかり講習を受ければ合格できるはずです。
防火管理者
「防火管理者」とは、店舗や映画館など不特定多数の人が出入りする建物等、すべての防火対象物に関する防火管理の資格です。甲種と乙種があり、甲種は店舗の収容人員が30人以上、かつ延べ床面積が300平方メートルの場合に資格取得が義務付けられています。甲種の延べ面積に満たない場合は、乙種の防火管理者資格を取得しなければなりません。
資格を取得するためには、地域の消防長や認定機関となる法人が主催する講習会に参加し、効果測定試験に合格する必要があります。なお乙種は一日の講習で済みますが、甲種は二日の講習の受講が必要なので注意が必要です。
ピザ屋を開業するために必要な手続き
飲食店の開業には、さまざまな届出や手続きが必要になってきます。ここでは開業に際し届出や提出が必要な書類について説明していきます。
保健所や消防署に提出する書類
保健所や消防署に提出する書類もあります。まず保健所に対しては、「食品営業許可申請」を届出る必要があります。店舗完成の10日ほど前までに提出が必要ですので、早めに提出しておきましょう。
また消防署には、火を使用する設備を設置する場合には「火を使用する設備等の設置届」を、設備設置前までに提出します。そして店舗収容人員が30人を超える場合は「防火管理者専任届」を提出する必要があり、期限は営業開始日までです。「防火対象設備使用開始届」もあわせて提出する必要がありますが、内装業者が届けてくれる場合がほとんどで、届出が必要かどうかは所轄の消防署にあらかじめ問い合わせましょう。
税務署に提出する書類
個人でピザ屋を開業する際は、まず所轄の税務署に、「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出が必要です期限は開業から1ヶ月以内で、税務署に対し事業の開始を知らせる目的のために提出するものです。飲食店などある程度の規模で事業を行う場合、青色申告の方が確実に税制上お得になりますので、「青色申告承認申請書」も提出しましょう。ピザ屋の経営者は確定申告を行い、その際にあらかじめ青色申告にしておけば、青色事業専従者給与控除や事業損失の繰越控除(3年)、貸倒引当金などの優遇措置を受けられます。
また自治体の市町村役場に対しても、「個人事業開始申告書」の提出が必要になる場合もあります。これは事業所得が290万円を超えた場合に都道府県に納める個人事業税に関する申告書ですが、確定申告を行っていれば自治体にも情報は届きますので、必ずしも提出しなければならないものではありません。場合によっては都道府県と市町村両方に提出が必要な場合もあるので要注意です。
従業員を雇う場合に提出する書類
店舗において従業員を雇う場合に提出が必要になる書類もあります。従業員を雇う場合には、労働基準監督署に労災保険の加入手続き、公共職業安定所に対し雇用保険の加入手続き、社会保険事務所に社会保険の加入手続きを行う必要があります。社会保険は、法人の場合は強制加入、個人の場合は任意です。
ピザ屋を開業するのにはどれくらいの費用がかかるのか?
ピザ屋に限った話ではなく、まずはどんな飲食店を始めるにしても「初期費用」は必要です。とくに都会の場合は店舗の賃貸契約を行う際の初期費用が莫大にかかってきます。都心の場合1,000万円はかかるといわれる初期費用には、たとえば以下のようなものがあります。(実店舗の場合)
・店舗の物件取得費用(保証金・礼金・家賃前払い分・仲介手数料など)
・厨房機器費
・内装、外装工事費
・看板施工費
・採用広告費
・販売促進費
・備品費
・仕入れ材料費
・運転資金
デリバリータイプや移動販売店など店舗の形態や規模により、必要な費用も変わりますし費用の額も上下します。店の規模や形態を選ぶ際に初期費用を基準とするのも一つの方法です。
開業資金をどこから調達すればいいのか?
開業するにあたり、自己資金、いわゆる貯金だけで開業できればいいですが、なかなか日々の生活費なども考えると難しい所です。では自己資金以外でどこから調達すればいいのでしょうか?
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。
創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。
信用保証付の融資
「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。
親族、友人・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。
ピザ屋開業にあたっての留意点
FCの加盟店として参入する場合には店舗を本部指定の仕様にすることが必要であり、独立店よりもコスト高となるケースがあります。また商圏内の人口や世帯数、属性と嗜好など潜在購買力の把握と競合店の有無が出店のポイントとなるために、綿密な事前調査が必要になります。
料理から宅配まで労働集約的性が強い業種であり、従業員はパート・アルバイトが主力となります。経費に占める人件費の比率が高いので、繁忙時と閑散時を見極めて人員を適切に配置することが収益性に大きく影響します。
そしてピザは材料が高い傾向にあります。ピザ生地の主原料である小麦粉の約9割は海外から輸入していますが、価格は毎年のように変わり、不安定な相場になっています。粉もの商売は儲かるといわれていた頃もありましたが、今はそこまで甘くはないようです。現地の味を再現するような本格的なピザを作るために、イタリア産やフランス産などの輸入チーズを使うことが多いですが、これも小麦粉と同様に安いものではありません。地域によってはかなりの高額になるものもあります。スペイン産の生ハムを使ったりなど、ほかの具材にもこだわっていけば、ピザの原価はどんどん高くついてしまうのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、ピザ屋を開業するにあたり必要なことについて解説しました。
ピザ屋は現在も増え続けており、デリバリー専門や移動販売などさまざまな業態が展開されています。しかし商材であるピザは、原価が高くつくこともあり、安定した経営を目指すのであれば業務用の生地を使うなどして、原価をおさえながら経営することも大切です。
コストを削減していくことも可能ではありますが、ピザ屋を開業するには1,000万円前後の初期投資費用を必要とすることもあります。独立の経験や経営ノウハウがない場合には、フランチャイズに加盟して開業することも方法のひとつになります。
また立地は半径2Km以内に2万世帯以上がある商圏エリアの中心部に位置し、競合店の少ない立地が望ましいです。生活道路に面しており、持ち帰り客も期待できるロケーションであればよりいいでしょう。