一人会社の株主総会について解説

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一人会社とは、たった一人が株主・取締役(社長)・従業員である「自分一人で株式会社を経営している会社」を指しますが、「株主は自分一人で、取締役も自分一人なので、株主総会を開催しなければならないのか」という質問をよく受けます。結論から言うと「開催は義務」です。年1回の定時株主総会を開催をして「決算報告」を行い、議事録を作成・保管をしないと法律違反になります。

そこで今回は、一人会社の株主総会について解説していきますので、これから一人で起業する方は参考にしてみて下さい。

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そもそも株主総会とは?

株主総会とは、簡単に言うと「株式を所有している人=株主」が参加する「株式会社における意思決定の最高機関」のことです。

そして、株主には「自益権」と「共益権」という2種類の権利があります。自益権は会社から配当金や株主優待などの経済的な利益を得る権利のことをいい、共益権は株式会社の経営の重要な意思決定に参加し、その経営を監督して是正する権利(株主総会における投票権など)のことをいいます。ある意味、株主総会はその共益権を行使する場だといえます。

一人会社の株主総会について

一人会社とは上記でも記述しましたが、たった一人が株主・取締役(社長)・従業員である「自分一人で株式会社を経営している会社」を指します。

一人会社でも「株式会社」である以上は、大企業と同じように会社法施行規則72条に従って、定時株主総会の開催が義務です。全て一人なので面倒と思っても、年1回の定時株主総会を開催をして「決算報告」を行い、議事録を作成・保管をしないと法律違反になります。

また株主総会には、「定時株主総会」と「臨時株主総会」があります。それぞれの違いについては以下になります。
 

<定時株主総会>

・毎年の決算の後、一定の時期に開催される株主総会
・法律上開催が義務付けられている
 

<臨時株主総会>

・定時株主総会以外で必要に応じて開催される臨時の株主総会
・必要が生じればいつでも何回でも招集できる

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株主総会はいつやるのか?

では、やらなければ行けない株主総会は、いつやるのでしょうか?それは、定時株主総会であれば、毎事業年度終了後、3ヶ月以内です。例えば、事業年度を4月1日~翌年3月31日としている会社であれば、3月末に事業年度が終了しますから、そこから3ヶ月以内、つまり、6月末までの間に行う必要があります。日本は3月決算の会社が多いですから、結果的に総会もそこから3ヶ月以内の5〜6月開催が多くなりますが、12月末までが事業年度の会社であれば、3月末までが開催時期になりますし、結局その時期は会社によることになります。

一方、臨時株主総会であれば、その名の通り、臨時に行うものなので、必要に応じて開催することになります。臨時総会は必要がなければ開催しないので、長く続く会社でも、一度も開催したことがないという場合もあり得ます。

一人会社の株主総会の開催手順

一人会社の株主総会も、開催の手順は、複数の株主参加の場合と変わりません。招集通知を出し、招集通知で指定した日時と場所で株主総会を開催をし、議事録を作成し、保管して終了です。一人会社の株主総会は、招集通知を自分宛てに発送して、決めた日時に一人で株主総会と称して、一人で議事録を作成して終わりです。

複数の株主がいる場合は、報告以外にも、会社に関する話し合いと多数決による承認が発生しますが、一人会社は「株主全員の同意=自分一人」となるため、議事録に記載すれば可決です。つまり、「株主総会開催時間=議事録作成時間」なので、時間はかかりません。

一人会社の株主総会は省略できるのか?

一人会社の株主総会は、「みなし決議・報告(書面決議・書面報告)」という制度を利用すれば開催を省略できます。みなし決議・報告とは、株主総会を実際に開かなくても、書面上で決議と報告があったとする制度です。「事前に株主全員の同意があるなら、株主総会を開催しなくてもいい、事業報告も書面やメールで十分」という考えから、株主が少人数だったり、株主との関係が良好な企業がこの制度を活用しています。

一人会社の株主総会を「みなし決議・報告」にすると、「招集通知」「日時・場所を指定した株主総会の開催」「開催した株主総会での報告」が省略され、議事録作成だけになります。細かい手順が省略され、議事録作成だけが正式な株主総会となるのがメリットです。

一人会社の株主総会をみなし決議・報告にする方法

一人会社の株主総会を「みなし決議・報告」とするには、「今後の株主総会はみなし決議・報告とする」と記載した株主総会の議事録を作成するだけです。一人会社は「株主全員の同意=自分一人」となるため、議事録に記載するだけで認められたことになり、実行できます。なお、通常の株主総会開催に戻す場合も一人株主の場合は「みなし決議・報告ではなく、株主総会の開催に戻します」と議事録に明記すれば戻せます。みなし決議・報告を決定した事が明記された議事録は、10年間保管します。

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株主総会の開催省略であって「議事録は必要」になる

一人会社の株主総会を省略して、みなし議決・報告にしても「議事録の作成作業」は発生します。みなし決議・報告は「株主総会の開催を省略」であって、定時株主総会に該当する報告は必要なので「何もしなくていい」わけではありません。一人会社であっても、株式会社である以上は「会社で決めた事」の証拠として議事録は必要になります。

なぜそんなにも議事録が大事なのかと言えば、それはもちろん、法律で決まっているというのもありますが、何かを決議した場合に、決議したというひとつの証拠になるからなのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、一人会社の株主総会について解説しました。

どんな規模の株式会社でも、株主総会は、行う必要があります。どんなに小さくても、株主も社長もひとりしかいなくても、「うちに株主総会は関係ない」とすることはできません。粛々と議事録を残しておきましょう。

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