会社経営者必読!従業員の入社前後の手続きや必要書類について解説

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従業員を新たに雇い入れる際に必要な「入社手続き」。入社した従業員の個人情報を扱う場面も多いため、企業にとって入社手続きは重要な業務であり、会社側が正確に把握しておく必要があります。

そこで今回は、従業員の入社前後の手続きや必要書類について解説していきます。

入社前の確認事項と書類

入社手続きとは、新しい従業員が入社したときに行う一連の手続きです。労働条件通知書が法律で義務付けられている書類です。

労働条件通知書、もしくは雇用契約書

労働条件通知書の交付は、法律上の義務となります。労働条件通知書によって、会社は労働条件を明示しなければなりません。雇用契約書の締結は、法律上の義務ではありません。民法では、雇用は当事者同士の約束によって成立することになっています。

ただし、証拠書類として雇用契約書を作成し、締結しておく方が無難です。会社によっては雇用契約書と労働条件通知書を兼ねている場合もあります。

採用通知書(内定通知書)

採用通知書(内定通知書)は、法律上の義務ではありません。入社してもらう従業員に雇用の意志と信用を得るための書類です。雇用契約は、採用通知書に対する承諾があって初めて雇用契約は成立します。

ただし、採用通知書を出した後の雇用者都合による採用取り消しは労働契約法第16条によって違法となります。採用通知書を出す前に会社と雇用する人との間に齟齬ないよう確認をします。

<採用通知書(内定通知書)の記載項目>

・採用応募についての御礼
・採用内定のお知らせ
・入社日(未定の場合は、別途連絡する旨を記載)
・問い合わせ先(人事・総務担当者の連絡先、担当者名) など

入社承諾書・誓約書

入社承諾書・誓約書とは、入社意思を確認するために保管が必要な書面です。採用通知書(内定通知書)に対する返事となる書面とも言えます。入社承諾書・誓約書は、採用通知書(内定通知書)と併せて作成・送付するのが一般的です。入社承諾書・誓約書には、以下のような内容を記載しておくとよいでしょう。

<入社承諾書・誓約書の記載内容>

・就業規則に関すること
・履歴書の記載事項に関すること
・秘密保持や損害賠償に関すること
・入社日
・入社後の待遇 など

入社承諾書・誓約書には、署名・捺印欄を設けておくのが一般的です。署名・捺印の上、自社の定める期間内に書類を返送してもらうよう、内定者に促しましょう。返信用封筒を同封しておくと親切です。入社承諾書・誓約書の返送を確認でき次第、入社手続きを進めていきます。

入社当日の手続き

入社する従業員に必ず提出してもらう必要がある書類は、以下となります。新卒採用か中途採用かで提出物が変わってきますので注意が必要になります。

年金手帳【新卒・中途】

年金手帳は、厚生年金の加入手続きに必要な「基礎年金番号」を確認するための書類です。保管は、「本人」または「会社」が行うことになっています。「本人」が保管する場合には、原本を提出してもらい、コピーを取った上で、従業員に返却しましょう。「会社」が保管する場合には、退職時まで原本を会社で預かります。

なお、入社する従業員が年金手帳を紛失してしまっている場合には、再交付が必要です。年金事務所で再交付手続きを行うよう、本人に伝えましょう。

マイナンバー【新卒・中途】

マイナンバーは、社会保険や雇用保険への加入手続き、年末調整などに必要です。入社時には、「マイナンバーカード」または「マイナンバーがわかる書類」を提出してもらいましょう。マイナンバーを収集する際には、使用目的を本人に事前に伝えておく必要があります。また、マイナンバーは重要な個人情報であるため、取り扱いには細心の注意を払いましょう。

従業員のマイナンバーを収集する際には、正しい番号であることを確認する「番号確認」と、番号の持ち主が正しいことを確認する「身元確認」からなる「本人確認」が必要です。マイナンバーの本人確認は、以下の3つの方法のいずれかで行います。

マイナンバーの本人確認方法

・マイナンバーカード(番号確認と身元確認)
・通知カード(番号確認)と運転免許証、パスポートなど(身元確認)
・マイナンバーの記載された住民票の写しなど(番号確認)と運転免許証、パスポートなど(身元確認)

「マイナンバーカードがある場合には、それだけで本人確認ができる」「マイナンバーカードがない場合には、番号確認と身元確認できるものがそれぞれ必要」と覚えておくとよいでしょう。

扶養控除等申告書【新卒・中途】

扶養控除等申告書とは、税金の手続きを行うために必要な書類です。正式には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と言います。この申告書をもとに配偶者や扶養家族の有無を確認し、毎月の給与から源泉徴収する所得税が算出されます。扶養控除等申告書を提出することで、低い税率で所得税を源泉徴収できるようになるため、扶養家族がいない場合でも、扶養控除等申告書を提出してもらう必要があります。なお、扶養控除等申告書の用紙は法的に定められています。申告書の用紙を入社する従業員に渡し、必要事項の記入と捺印の上、提出してもらいましょう。

住民票記載事項証明書【新卒・中途】

住民票記載事項証明書は、入社する従業員が履歴書と同一の住所に住んでいることを確認し、住民税支払いの手続きを適切に行うために必要な書類です。以前は、「住民票」の提出を求めるのが一般的でした。しかし最近では、個人情報保護の観点から、住民票の代わりに、住民票記載事項証明書の提出を求めるのが望ましいとされています。

住民票記載事項証明書は、「会社所定の様式」を使うことも、「市区町村の様式」を使うこともできます。実際には、書類の確認・管理のしやすさを考慮し、「会社所定の様式」を用意している企業が多いようです。印鑑や本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)を持参の上、住んでいる市区町村の役所で住民票記載事項証明書を発行してもらうよう、入社する従業員に案内しましょう。

健康診断書【新卒・中途】

健康診断書は、入社する従業員の健康状態を把握するために必要な書類です。「労働安全衛生法」では、「常時使用する労働者」を対象とした「雇い入れ時の健康診断」の実施が、企業に義務付けられています。健康診断は、事前(入社前3カ月以内)または入社後3カ月以内に実施します。労働安全衛生法に定められた「雇い入れ時の健康診断」の検査項目を全て受けてもらいましょう。なお、企業が病院や日時を指定し、健康診断にかかる費用についても企業が負担するのが、一般的です。

誓約書や身元保証書【新卒・中途】

誓約書や身元保証書も、入社する従業員全員に提出してもらう必要がある書類です。誓約書は、就業規則や秘密保持といった企業の定めるルールを遵守することを宣誓してもらうために用いられます。誓約書にはあらかじめ、企業側で「就業規則に関すること」や「履歴書の記載事項に関すること」「秘密保持(機密保持)・守秘義務に関すること」「損害賠償に関すること」などを記載しておきます。署名捺印をした誓約書を提出してもらいましょう。

身元保証書は、従業員の故意または重大な過失により生じた損害について、従業員本人が賠償できない場合に、身元保証人が連帯して賠償責任を負うことを約束してもらうために用いられます。身元保証人の条件は企業によって異なりますが、「両親」が身元保証人となるのが一般的です。必要に応じて、「従業員本人と別の世帯を持っていること」「安定した収入があること」「二親等以内の親族を除くこと」などの条件を企業ごとに設けることもできます。企業が用意した身元保証書を入社する従業員に渡し、身元保証人の署名捺印の上、提出してもらいましょう。また、身元保証人の印鑑証明書の提出を求めるかどうかなども検討します。

給与振込先申請書【新卒・中途】

給与振込先申請書は、給与振込先の「支店名」「口座番号」などを確認するために必要です。給与振込を希望する人全員に、必ず提出してもらいましょう。企業が用意した申請書を入社する従業員に渡し、「支店名」「口座番号」「口座名義人」などを記入の上、提出してもらいます。社内規定により銀行通帳のコピーの保管が必要な企業では、申請書と併せて、「銀行通帳のコピー(支店名・口座名が記載されたページ)」の提出も求めましょう。

各種手当の支給申請書【新卒・中途】

各種手当の支給申請書は、「通勤手当」や「住宅手当」「家族手当」「資格手当」などを支給するために必要な書類です。各種手当の支給を受ける人全員に、提出してもらう必要があります。企業が用意した所定の申請書を入社する従業員に配布し、必要事項を記入の上、提出してもらいましょう。

資格などの証明書【新卒・中途】

資格などの証明書は、「履歴書に記載された資格が正しいのか」や「業務に従事する上で必要な技能・知識があるのか」を確認するために必要です。例として、車を使った営業が必要な職場であれば「自動車運転免許証」が、英語を多用する職場であれば「TOEICのスコアを示す書類」が、医療従事者であれば国家資格の「資格取得証明書」が挙げられます。これらは、資格手当を支給する条件として、提出を求めることもできます。不正防止の観点から、現物を実際に確認した後、コピーを社内で保管するのが望ましいとされています。

卒業証明書【新卒】

卒業証明書は、「入社する従業員の学歴が正しいか」を確認するために必要です。「新卒」や「第2新卒」の場合には提出を求めることが多いですが、「中途」の場合は基本的に提出不要としている企業が多いでしょう。「新卒」の場合、書類の提出時期によっては卒業前であるため、代わりに「卒業見込証明書」を提出してもらいます。なお、配属先を決める際の判断基準の一つとして使用する場合は、最終学歴の学校での成績が記載された「成績証明書」も併せて提出してもらうとよいでしょう。

源泉徴収票【中途】

源泉徴収票は、年末調整をする際に必要な書類です。前の職場を退職した年と同じ年に自社に「中途入社」する従業員には、源泉徴収票を提出してもらいましょう。年をまたいで就職(退職した翌年以降に自社に転職)した場合は、源泉徴収票を提出してもらう必要はありません。

源泉徴収票は、退職時に前の職場から渡されます。万が一、「退職時に源泉徴収票をもらっていない」「源泉徴収票をなくしてしまった」という場合には、前の職場に発行してもらうよう、入社する従業員に促しましょう。

雇用保険被保険者証【中途】

雇用保険被保険者証は、雇用保険の資格取得に必要な「雇用保険被保険者番号」を確認するために用いられます。以前、雇用保険に加入したことのある「中途」入社の従業員には雇用保険被保険者証を提出してもらいましょう。

入社後早急に行う手続き

新しい従業員が入社したら、社会保険(厚生年金保険や健康保険)と雇用保険、住民税の手続きを行います。厚生年金と雇用保険、住民税の手続きは、電子申請、郵送、窓口持参のいずれかです。

社会保険の資格取得

社会保険(厚生年金保険や健康保険)は、常時雇用されている従業員であれば、国籍や性別、年金受給の有無に関わらず、一定の条件を満たす全員が加入対象となります。70歳以上の新規雇用者の場合、加入対象となるのは健康保険のみです。

社会保険の資格取得には、雇用後5日以内に、管轄の年金事務所と健康保険組合へ、「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を提出する必要があります。協会けんぽの場合は年金事務所が窓口になります。

提出方法は、電子申請(e-Gov)か郵送、窓口持参のいずれでも構いません。配偶者や子どもがいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届」の提出も必要です。また、「国民年金の第3号被保険者」となる配偶者がいる場合は「国民年金第3号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3号該当)届」も一緒に提出します。

雇用保険の加入手続き

雇用保険は、以下の2つの条件を満たした場合に、加入手続が必要です。

・31日以上の雇用継続
・週20時間以上の所定労働時間

条件に合致する場合は、雇用月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」に法定三帳簿(後述)などの確認資料を添えて、ハローワークへ提出しましょう。内定者が中途採用の場合は、前職の「雇用保険被保険者証」が必要です。

税金に関する手続き

採用内定者には、所得税と住民税の手続きが必要です。所得税の手続きでは、入社時に提出してもらった「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をもとに、企業側が源泉徴収簿を作成します。年内に再就職した従業員には、前職の「給与所得の源泉徴収票」を提出してもらいましょう。源泉徴収税は、給与支払い月の翌月10日が納付期限なので、それに間に合うように源泉徴収簿を作成します。

住民税は、前年の所得に対して徴収されます。そのため前職が無職の場合は、住民税の手続きをする必要はありません。この場合は、来年の6月に従業員の給料から所定の金額が天引きされます。住民税を普通徴収(自ら納める)から特別徴収(源泉徴収する)に変更する場合は、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を納付先の役所に提出しましょう。

特別徴収を継続する場合は、「特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を納付先の役所が設定している期限までに提出します。

法定三帳簿の作成

法定三帳簿とは、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿のことです。労働基準法によって作成・保管が義務付けられています。

労働者名簿は、性別・住所・仕事の種類・入社年月日などを記載し、保管します。賃金台帳は、契約社員やアルバイトを含む全従業員の賃金情報が必要です。出勤簿は全社員が対象で、3年間保管する必要があります。

備品の支給

円滑に業務に取りかかれるよう、入社後すぐに必要な備品は事前に用意し、入社日に渡せるようにしましょう。企業や配属先の部署などによって、必要な備品は異なります。例としては、「制服」や「社員証」「名刺」「机・イス」「PC」「事務用品」「入退室用のICカード」などが挙げられます。備品の支給と併せて、「メールアドレス設定」や「社内ネットワークに入るためのID・パスワード設定」なども行いましょう。

まとめ

入社時に必要な書類は非常に種類が多いうえに、会社または職種によって、実際に提出しなければならない書類は異なります。特に、中途入社が多い、パート・アルバイトの採用が多いなどの理由で従業員の出入りが激しい場合は、入社書類を抜け漏れなく準備して、郵送するだけでも一苦労でしょう。

入社手続きにかかる工数を減らすため、2019年の法改正によって認められた労働条件通知書のペーパーレス化にあわせて、入社手続きを電子化する企業も増えていますので検討しましょう。

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