飲食店を開業する準備を始めてからオープンするまでにやることが沢山あります。お店のコンセプトを決めたり、資金の準備、計画・店舗物件探し・内装、設備工事・メニューや仕入先の決定・開店、営業に係わる各種届出・スタッフの採用、教育・開店前準備など、多岐にわたり準備が必要となります。
例えば、飲食店を開業するときに調理師免許は、無くても居酒屋は開業できます。必要な資格としては「食品衛生責任者」があります。飲食物を扱うお店であれば、1店舗に1人の食品衛生管理者が必ず必要になります。
また、お店の規模が従業員を含め、30人以上の店舗になる場合は、消防法により、「防災管理者」を選任する必要があります。そして、お酒を提供する飲食店が夜0時以降も営業する場合や主にお酒を提供している場合には「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」を警察に出さなければいけません。
今回は、飲食店開業する為の基礎知識や準備からオープンまでのスケジュールついて解説していきます。
目次
店舗コンセプトの立案~確定(出店する約1年前~半年前)
飲食店を開業するにあたり、業態、想定客層、価格帯などを細かく検討し、どのようなお店にするかコンセプトを作り上げます。
コンセプト作りのポイントは以下になります。
・業態(イタリアン、大衆居酒屋、フレンチなど)
・想定客層(性別、年齢、職業、趣味嗜好、ライフスタイルなど)
・価格帯(メイン商品、サブ商品、飲み物、時間帯別など)
・メニュー(メニュー種類、調理方法、味付けなど)
・店舗雰囲気(店舗の広さ、内装、取り付け家具、厨房など)
ある程度コンセプトが決まったら、お店の名前を考えましょう。つけた名前が商標登録されている可能性がありますので、事前に調べておきましょう。
(参考記事)【飲食店開業】コンセプト作りの考え方について
物件探し~契約(出店する半年前)
立案したコンセプトに見合った物件を探します。但し、なかなか希望通りの物件は見つかりません。場合によっては物件に合わせてコンセプトを練り直します。
そして、物件は場所によって特徴があります。
オフィス街
会社勤めのサラリーマンがメインターゲトになります。平日の売上は見込めますが、休日は集客から難しくなる傾向にあります。家賃設定も高めです。
駅前
駅前は人が最も集まる場所なので好立地です。但し、その分賃料が高くなりますので、単価を上げるか回転率を上げるかの判断が重要になります。
繁華街
商業施設が立ち並び多くの人が集まる好立地です。集客力は十分ですが、賃料が高い設定です。
商店街
周辺住民がターゲットとなります。家賃設定は低めですが、如何に商店街・近隣の方に興味を持ってもらうかがカギになります。一風変わったお店にすれば、商圏外からの顧客も取り込めます。
住宅街
主婦層や高齢者がターゲットとなるためそれを見越したコンセプト設定が必要になります。家賃設定は低めです。
国道などの幹線道路沿い
車での来客が基本的なので、駐車場計画や看板の見え方により集客が大きく影響します。家賃設定は普通価格です。
その他、階数や周りの環境によって物件はさまざまな特徴がありますが、飲食店開業を始めようとした時から常に行く先々で物件について確認しておくことが重要です。
そして、物件を選んだ街にはどのくらいの人口がいるかは重要になります。人口データは総務省統計局のページから確認しましょう。
物件に係る費用や物件探す方法などについては下記参考記事からご確認ください。
(参考記事)【飲食店開業】物件を探す方法について
(参考記事)【飲食店開業】居抜き物件の注意点について
(参考記事)【飲食店開業】スケルトン物件のメリットデメリット
(参考記事)【飲食店開業】店舗の保証金・敷金について
(参考記事)【飲食店開業】飲食店の「店舗物件取得」に係る費用について
(参考記事)【飲食店開業】物件の内見時に確認するポイントとは?
(参考記事)【飲食店開業】店舗を借りる時、店舗賃貸借契約書での注意点とは?
事業計画書の作成~融資申請(出店する3~4ヵ月前)
飲食店開業する場合、自己資金と足りない分を融資による借入をする場合が多いです。
融資による借入をする場合、金融機関の審査を通る為には、綿密な事業計画(収支計画)を作る必要があります。飲食店開業で資金の考え方として必要な項目は下記になります。
・投資計画:いくら借りるか
・売上計画:どれくらい売れるのか
・損益計画:どれくらい儲かるのか
・経費算出:どれくらい経費がでるのか
なかなか自分自身で計画を作るには知識と労力がいります。特に飲食店は他の業種に比べて廃業率も高く、金融機関もシビアな目で確認します。資金調達に強い専門家(税理士など)と協力して作成することが融資成功の近道になります。
(参考記事)日本政策金融公庫について
(参考記事)資金調達検討者必見!日本政策金融公庫の創業計画書の書き方
(参考記事)信用保証付き融資について
(参考記事)融資に強い税理士の見分け方
(参考記事)【飲食店開業】開業融資を受ける為に事前にやっておくこととは?
内装業者の選定~工事引き渡し(出店する2ヵ月前)
飲食店開業資金の中で大部分がこの内外装工事でかかってくる部分です。数百万から数千万に費用が発生します。大金が動きますので、それだけ内外装業者選びは慎重にいかなくてはいけません。
ほとんどの場合、知り合いの業者か、知り合いに紹介してもらった業者さんに依頼するかと思いますが、工事にかかる部分は専門的な為、価格が適正か判断が難しいところです。必ず複数業者に相見積もりをすることと、見積の項目には「一式」ではなく「それぞれかかる費用」を記載してもらうようにしましょう。
その他、飲食店開業の内外装業務を行ったことがない業者は注意が必要です。経験豊富ではないと、保健所の許可が下りる仕様ではないまま工事が進んでしまい、結果店舗営業できない内装になってしまったり、更に費用が発生する可能性があります。
このようなことを踏まえて業者を探すことが重要です。
(参考記事)【飲食店開業】内装業者選定ポイントを解説
(参考記事)【飲食店開業】内外装工事の流れ
(参考記事)【飲食店開業】お勧めの業務用厨房機器メーカー
メニュー開発(出店する2ヵ月前)
立案したコンセプトを基にメニューを開発します。
コンセプトや今までの飲食経験によって変わってきますが、はじめて飲食店を開業する方はできるだけ数を抑えめに始めましょう。開業時は、慣れていないため、仕込みや調理に時間がかかり、手間取ってしまう可能性があるためです。
そして、メニューの開発をしたら、友人や知人を呼んで、試食してもらいましょう。良い意見も悪い意見ももらって、改善を心がけます。
(参考記事)【飲食店開業】メニュー開発のポイントと原価率について
仕入れ業者選定(出店する1~2ヵ月前)
メニュー開発が終了したら、開発したメニューに沿った仕入れ業者を選定します。
仕入れ業者選びについては、飲食店経験者であれば、今までのコネクションで選ばれるかと思います。当然、一番融通がきき、出店時にビールサーバーや食器、グラスなどの協賛品などを出してもらえる会社もあります。現在、飲食店にお勤めの方は仕入れ業者から色々聞いてみることが必要です。
また、これまで飲食店に携わってきていない方であれば、インターネット上で様々な仕入れ業者をみつけることが出来ますので、まずは一度インターネットでお近くの仕入れ業者を探し、仕入れ業者からの話を直接会ってから、聞いてみるもの良いでしょう。
(参考記事)【飲食店開業】仕入先を探す方法について
店舗開業までの届出(出店する1ヵ月前)
飲食店を開業するにあたり2つの資格と、用途によって申請や届出が必要になってきます。
飲食店開業する際に必ず必要になる資格
・食品衛生責任者
・防火管理者
(参考記事)【飲食店開業】飲食店の開業に必要な2つの資格
飲食店開業する際に必要な申請や届出
・飲食店営業許可申請
・個人開業届・法人登記
・消防署に届出(条件あり)
・警察署に届出(条件あり)
(参考記事)飲食店を開業するのに必要になる資格・許可・届出について
(参考記事)【飲食店開業】食品を扱う事業者向け 保健所の営業許可申請について
(参考記事)【飲食店開業】消防署に必要な届出
(参考記事)【飲食店開業】(東京都)防火対象物使用開始届出書について
(参考記事)【飲食店開業】警察署に許可・届出が必要な飲食店の条件とは?
備品などの購入(出店する1ヵ月前)
飲食店では、膨大な数の備品を揃える必要があります。拘りがあることは否定しませんが、出来ればコストを抑えて汎用性のあるものを選びましょう。
【用意する備品例】
・食器
・カトラリー
・紙ナプキン
・コースター
・ストロー
・おしぼり
・トレイ
・メニュースタンド
・伝票
・釣銭トレイ
・傘立て
・時計
・ラップ
・衛生手袋
・ペーパータオル
・まな板
・トイレットペーパー
・掃除道具
・花瓶
・ゴミ箱
・筆記用具
・ノート
・玄関マット
・店内マット
・固定電話
・懐中電灯
・パソコン
購入先としては、インターネット通販や近くの量販店で揃えましょう。
店舗用BGMを取り扱っているUSENのような会社は、飲食店開業関連の商材を数多く揃えていますので、そういった会社からトータルで安くリースするのも得策です。
(参考記事)【飲食店開業】食器・備品について
(参考記事)【飲食店開業】飲食店のBGMと著作権について
人材採用計画~採用面接(出店する1ヵ月前)
人材採用方法として「店内チラシ」「ポスティング」「アルバイト情報誌」「求人サイト」「従業員からの紹介」などありますが、社員として雇用する場合は、身内や今まで仕事を一緒にしてきた方などで構成するのが望ましいです。
(参考記事)飲食開業の肝!オープニングスタッフ募集におすすめの求人情報サイト5選
販売促進(出店する2週間前)
工事をしていると注目の的になります。特典をつけたお店のチラシを貼ったり、WEB上で告知をしましょう。
近隣住民や近隣の施設・会社などにチラシを渡すことも重要になってきます。
豆知識! Googleマイビジネス(マップ)の登録をしておきましょう
皆様が普段使っている「Google」そしてGoogleのサービスで飲食店などの店舗型のビジネスは必ず登録しておくべきツールがあります。
それがGoogleマイビジネスです。
Googleマイビジネスは、Google検索や Googleマップなど、さまざまな Googleサービス上にお店の住所や電話番号や営業日時などの情報を登録できる無料ツールになりますので、是非登録しておきましょう。
(参考記事)【飲食店開業】販売促進方法について
(参考記事)人気店は使ってる!集客に効果的な「Googleマイビジネス」の使い方
研修実施~オープン(出店する1週間前)
採用者に対して、研修を実施し、晴れてオープンです。
オープンすることがゴールではなく、スタートラインに立ったばかりです。
これから皆様には色々な計画があると思いますが、日々の営業で改善した方が良いところなどがたくさん出てくると思います。
今日までは正解だったことが、明日には不正解になることもあります。あなたがその店舗の責任者として、今何をすべきか、従業員にどのように伝え、どう育てるべきか?、お客さんに喜んでいただく為には?、などを常に考えて繁盛店を作り上げていただくことを願っています。
(参考記事)【飲食店開業】オープン時の採用面接とトレーニングの注意事項
(参考記事)【飲食店開業】飲食店オープン前にプレオープンは行うべきか?
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、飲食店開業する為の基礎知識や準備からオープンまでのスケジュールついて解説しました。
飲食店は開業しても1年未満で約35%、2年以内で約15%、約半数の飲食店が2年以内に廃業している現状があります。開業準備は資金調達、物件探しを中心に内外装、許認可・免許・届出、従業員採用と多岐にわたり行うことがありますので、抜け漏れのないように準備していきましょう。そして各分野には専門家(税理士、行政書士、社会労務士、内外装業者、仕入れ業者など)がいますので、用途に沿った専門家に相談しましょう。