会社の設立に際しては「定款(ていかん)」の作成が必要になります。株式会社や一般社団法人などで起業する場合に定款は公証人の認証を受けなければなりません。
そこで今回は、定款の認証を行う場所やかかる費用について解説していきます。
目次
定款とは?
定款は、法人や団体の設立時に作成される重要な文書であり、発起人全員の同意のもとで定める「会社の根本の規則」になります。会社の設立時に定款には会社の事業内容や商号、住所といった基本的な情報に加えて、会社の指針となる様々な規則を記載します。
以下に、定款に含まれる一般的な内容について説明します。
法人の名称と目的
定款では、法人の正式な名称とその活動目的が明記されます。目的は、法人が達成しようとする社会的・営利的な目標や使命を示します。
組織形態と運営方法
定款では、法人の組織形態(例: 株式会社、有限責任会社、非営利団体など)とその運営方法について詳細が規定されます。役員の任命・解任手続き、組織内の決定権の行使方法、役員会や総会の開催頻度や手続きなどが含まれます。
資本金や出資方法(株式会社の場合)
株式会社の定款では、資本金の額や出資方法に関する規定が含まれます。例えば、資本金の総額や分割方法、株主の持分比率や株式譲渡の制約などが明記されます。
役員の権限と責任
定款では、役員(例: 取締役、監査役)の権限と責任について詳細が規定されます。役員の選任基準、職務内容、権限の範囲、役員間の関係や会社への義務などが含まれます。
会計・監査に関する事項
定款では、会計や監査に関する事項についても規定されます。会計年度、財務報告書の作成・公開、監査人の任命方法や権限などが含まれます。
定款認証とは?どこで行うのか?
定款の認証とは、定款の正当性を「公証人」に証明してもらうことを言います。定款の認証を受けておくことで、設立当初の定款の内容を公的に証明できるようになります。のちに会社の相続トラブルなどが起こった際に、定款の内容の正当性について揉めるリスクを回避できる点がメリットです。株式会社や一般社団法人などの定款については必ず認証が必要となるので、登記前に手続きを行いましょう。
また定款の認証は、本社所在地と同じ都道府県内にある公証役場で行います(※北海道については道内の管轄区域が分かれているので、最寄りの法務局へ問い合わせしてください)。管轄区域外の公証役場では定款の認証ができないので、あらかじめ管轄先を調べてからお出かけください。そして公証人が出張等で不在の場合やスケジュールが埋まっている場合もありますので、予約もせずに勝手に公証役場へ出向くのは控えましょう。
(参考)日本公証人連合会|公証役場一覧
定款の認証にかかる費用
定款の認証にかかる費用は、以下のとおりです。
・公証人に支払う認証の手数料(認証1件につき5万円)
・設立登記申請用の謄本の請求手数料(謄本1ページにつき250円。定款の枚数によって総額は異なりますが、およそ2千円ほど費用が発生)
・特定文書にかかる印紙税として収入印紙代4万円(社団法人・信用金庫の定款の場合は、収入印紙は不要)
認証の手数料と謄本の請求料は、当日現金で支払います。収入印紙については、公証役場の多くは収入印紙の販売を行っていないので、郵便局等で購入してから認証に行くとよいでしょう。収入印紙を定款に貼付するタイミングは、公証役場にて定款に修正点がないか確認してもらった後がおすすめです。
なお、認証後に定款の変更を行う場合にも、2万5千円ほどの費用がかかります。定款の作成はよく考えたうえで行いましょう。
★令和4年1月1日から定款の認証の手数料が変更
株式会社又は特定目的会社の定款の認証の手数料について、これまで「5万円」であったものが、資本金の額等が100万円未満の場合「3万円」に、資本金の額等が100万円以上300万円未満の場合「4万円」に、その他の場合「5万円」にと改められます。 令和4年1月1日から新しい手数料額となりました。
定款の認証をするために必要なものとは?
定款の認証を受けるためには以下のものが必要になります。
・定款3通(公証役場での保存用1通、会社保存用1通、登記申請用1通)
・発起人全員分の印鑑証明書をそれぞれ1通ずつ(発行から3ヶ月以内のもの)
・発起人全員の実印(定款に不備があった場合、すぐに修正を行うため)
代理人が定款の認証を行う場合は、上記に加えて代理人本人であることがわかる身分証明書(印鑑登録証明書)や委任状が必要になります。委任状の書式については管轄の公証役場へ問い合わせるか、各公証役場のホームページ等のサンプルを参考に作成しましょう。
電子定款の場合の費用
従来、定款の認証は紙面でのみ行われていましたが、インターネットとパソコンの普及により、オンラインでも定款の認証を受けられるようになりました。また、電子定款の認証の場合は収入印紙代4万円分が不要となります。インターネットやパソコンの環境が整っている人は、電子定款を活用することで安く認証を受けられます。電子定款で認証を行う場合のおおまかな流れは以下のとおりです。
・パソコンで電子定款を作成する
・管轄の公証役場に問い合わせの上、定款案をメールやファックスなどで送付し、内容と誤字脱字を確認してもらう
・電子定款のPDFファイルに電子署名をする
・署名済みの電子定款を法務省の「登記・供託オンライン申請システム」で提出する
・管轄の公証役場に、オンラインから電子定款の認証申請を行った旨を連絡する
・公証人から認証完了の連絡を受けたら、管轄の公証役場にて本人確認資料の提出や認証の手数料の支払いを行う。紙面での定款認証と同じく、認証の嘱託人か代理人が対応する必要がある
電子定款には「収入印紙代がかからない」「登記・供託オンライン申請システムの運転時間内ならどこからでも申請ができる」などのメリットがあります。一方デメリットは、申請に際して電子証明書の作成や申請ソフトのインストールといった諸準備が必要である点です。自分の環境を考えつつ、申請しやすい方法で定款の認証を受けてください。
まとめ
最終的に会社を登記する法務局はどこでもいいわけではなく「会社の住所(本店所在地)を管轄する法務局」です。公証役場は会社の住所がある都道府県であればどこでも良いのですが、法務局は独自の管轄がありますので、予め法務省のホームページでどこが管轄なのか調べておきましょう。もし申請先の法務局を間違えると申請が却下されますので注意が必要です。