株式会社の定款には必ず記載しなければならない絶対的記載事項というものがあり、絶対的記載事項を記載していない定款は無効となります。
「本店の所在地」は、絶対的記載事項とされているため、本店の所在地は定款に必ず記載しなければなりません。
そこで今回は、定款の本店の所在地の記載について例もまじえて解説していきます。
目次
そもそも本店所在地とは?
本店所在地とは、法人の本店が所在する場所をいいます。前述しましたが、本店所在地は、法人の設立に際して、定款に必ず記載しなければいけません。
本店というのは、便宜的な表現で本社となる事業所が店舗であるかどうかは関係なく決めることができます。
本店所在地の記載例
定款に記載する本店所在地の記載例は以下の通りになります。
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都新宿区に置く。
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都新宿区西新宿二丁目1番1号に置く。
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都新宿区西新宿二丁目1番1号 新宿三井ビルディング 49階に置く。
本店所在地と本店所在場所
定款には「本店所在地」を、登記簿には「本店所在場所」を記載することになります。
本店所在場所とは、具体的な本店の場所のことをいいますので、「東京都港区西新宿二丁目1番1号」のように「丁目・番・号(ビルやマンション名含む)」までの表示を含みます。
本店所在地とは、本店所在場所の最小行政区画までのことをいいます。「東京都港区西新宿二丁目1番1号」が本店所在場所であれば、「東京都新宿区」が本店所在地になります。
定款には最小行政区である市区町村まで記載することが多い
定款に記載が求められているのは本店所在地ですので、上記定款の記載例の中では「東京都新宿区に置く」と記載することが一般的かと思います。その理由としては、本店を同じ東京と新宿区内に移転する場合は、定款を変更するための株主総会の開催が不要になるからです。
上記定款の記載例で「東京都新宿区西新宿二丁目1番1号 新宿三井ビルディング 49階に置く」と定款に定めた場合、同じビル内に本店を移転する場合でも株主総会を開催して定款変更の決議をする必要が生じます。
一方で、「東京都新宿区に置く」と定款に定めておけば、同じ新宿区内の移動であれば、本店の移動にかかる決定も取締役会の決議(取締役会非設置会社では取締役の決定)のみで足りることになります。
政令指定都市、郡のケース
政令指定都市(京都、大阪、横浜、名古屋、神戸、札幌、川崎、仙台、北九州、福岡、広島、千葉、さいたま、静岡、堺)「区」ではなく「市」までで大丈夫です。群制の場合は、町・村までの記載が必要となります。
登記簿には本店の所在場所の記載が必要になる
上記までは、「定款」への本店所在地の記載方法まで説明しましたが、定款には本店所在地の記載で足りますが、登記簿には本店所在場所の記載が必要になります。
登記簿に記載する本店所在場所は、「丁目・番・号」以降のビル名・マンション名あるいは部屋番号は省略することが可能です。
法人登記後に本店所在地の住所変更は可能なのか?
結論から言うと法人登記後に、本店所在地の住所変更は可能です。ただし、本店所在地の住所変更は、登記が必要な事項となるため、本店移転登記をする必要があります。
本店移転登記は法務局で行いますが、法務局の管轄が異なる住所地に変更する場合は、注意が必要です。法務局の管轄が同じ住所地への移転であれば、法務局への登記申請はひとつで済みますが、法務局の管轄が異なる住所地に変更する場合は、変更前と変更後の法務局それぞれで登記申請を行う必要があります。
また、本店移転登記が完了したら、税務署や都道府県、市区町村(県税事務所や市税事務所)、年金事務所にも登記簿の写しなどを添付して、住所変更の届けを出す必要があるので、注意しましょう。
まとめ
一般的に、定款で定める会社の本店所在地は最小行政区画(東京都新宿区)までを記載すれば足ります。上記でもお伝えした通り、株式会社で起業する場合、本店の所在地は定款に必ず記載しなければなりませんので、事前に覚えておきましょう。