起業するというタイミングは、多くの人が夢と希望に満ち溢れていることでしょう。しかし、起業した会社のすべてが順調に経営を続けていけるわけではありません。せっかく起業をしても、1年以内に廃業してしまう会社も数多く存在します。
そこで今回は、起業から経過した年数ごとの生存率や廃業してしまう理由、これから起業する際の注意点などについてご紹介してきます。
目次
企業生存率とは?
企業というものは、起業することによってはじめて生まれます。
誰しも、起業したからには事業を軌道に乗せ、1年後、2年後、5年後、10年後と長く経営を続けていきたいですよね。しかし、起業したものの事業がうまくいかず、倒産してしまう企業が非常に多いのが実情です。
起業した会社のうち、数年後に事業を継続している割合のことを「企業生存率」といいます。企業生存率を正しく把握することで、起業から数年にわたって事業を継続する難しさがわかり、延いては倒産に至る原因、長く経営を続けるためのポイントなども見えてくるでしょう。
起業から経過した年数ごとの生存率は?
新しく事業を始めた企業や個人事業者のうち、数年経っても継続しているものの割合を「生存率」と称します。多くの方は、起業後も長く事業を続けたいと望んでいますが、実際のところ、その希望とは異なる結果になることも多いようです。
経済産業省のウェブサイトで公開されている「中小企業白書」のデータによると、新しく設立された企業個人事業が1年後も経営を継続できている割合、生存率は約72%とされています。
また、起業してから3年後の生存率は約50%、5年後の生存率は約40%というデータもあります。時間が経つにつれて生存率は減少していることがわかりますが、3年や5年が経過すると、それなりの安定感が得られるとも言えます。
さらに、起業してから10年後の生存率は約26%です。起業してから10年間事業を継続できる人は、4人に1人の割合だということです。ただ、廃業したとしても、別の形態での事業再開や法人化という形で新たなスタートを切ることも考えられます。
総じて、長期間事業を続けるためには、リスク管理と経営戦略の見直しを常に意識することが欠かせないでしょう。
起業しても廃業してしまう理由とは?
起業は難しく、多くの企業が数年以内に廃業してしまうのは様々な理由があります。以下に、起業しても廃業に至る主な理由を具体的に挙げてみます。
資金不足
初期投資、運転資金、突発的な経費など、資金が予想以上に必要になることが多く、資金計画が不十分な場合、事業を継続できなくなることがあります。
市場調査の不足
需要の見込みやターゲット顧客のニーズの把握が不十分なため、商品やサービスが市場に受け入れられないことがあります。
競合との差別化が不十分
競合他社との差別化が十分でない場合、消費者の選好を獲得するのが難しくなります。
経営ノウハウの不足
起業家自体が経営経験が少ない場合、経営判断の誤りや人材管理の問題などが生じることがあります。
人材の確保・育成の失敗
適切な人材を確保、育成できないと、事業の拡大や効率的な運営が難しくなります。
販売・マーケティング戦略の失敗
適切なプロモーションや広告戦略がないと、商品やサービスの認知度が上がらず、売上が伸びないことがあります。
外部環境の変化
経済の不況、法規制の変更、大手企業の市場参入など、事業環境の急激な変化に対応できない場合、廃業に追い込まれることがあります。
技術・製品の陳腐化
技術進化のスピードが速い産業では、新しい技術や製品に追随できない場合、競争力を失うリスクがあります。
質の低下
品質の低下やサービスの質の低下が顧客からの信頼を失う原因となることがあります。
適切な顧客サポートの不足
顧客からのクレーム対応やアフターサポートが不十分な場合、リピート顧客を失うことがあります。
事業拡大の失敗
利益を活用して事業を拡大する際、急に多くの人材を雇ったり、事業所を拡大したりするケースは珍しくありませんが、事業拡大後に業績が低迷しても、固定費を削減するのは難しいです。固定費を削減できず、更なる業績悪化につながり、廃業することがあります。
これから起業する際の注意点
起業からの生存率を高めるためには多くの注意点が考慮されるべきです。以下は、特に重要とされる点を具体的に挙げています。
事前のリサーチと計画の徹底
・市場のニーズや競合他社の動向を綿密に調査する。
・SWOT分析(Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats)を行い、自社の強みや弱み、機会や脅威を明確にする。
資金計画の明確化
・初期投資や運転資金、緊急時の資金まで、詳細な資金計画を立てる。
・余裕をもった計画を心がけ、意外な出費や収入の減少時にも対応できるようにする。
明確なビジョンとミッション
・事業の方向性や目標を明確にし、それを達成するための具体的な行動計画を策定する。
適切な人材の確保と育成
・起業初期からのメンバー選びは非常に重要。適材適所での配置やチームの結束力を意識する。
・社員教育や研修を実施し、スキルアップを促進する。
顧客との関係構築
・顧客のフィードバックを積極的に収集し、サービスや商品の改善に反映させる。
・顧客ロイヤルティを高めるための取り組みを継続的に行う。
柔軟な経営姿勢
・市場の変動や技術の進歩に迅速に対応するための組織体制や戦略を持つ。
・変化を恐れず、必要な時には方針転換も考慮する。
適切なマーケティング戦略
・ターゲット顧客を明確にし、彼らのニーズや要求に応じたプロモーションを展開する。
・デジタルマーケティングやSNSを活用した宣伝活動を行う。
リスク管理
・事業のリスクを事前に洗い出し、それに対する対策を準備しておく。
・例えば、契約の際は専門家の意見を求める、保険に加入するなど。
ネットワーキング
・他の企業や業界の人々との関係を築くことで、新しいビジネスチャンスや情報を得ることができる。
継続的な学び
・業界の最新動向や新技術について常に学び続けることで、競争力を維持・向上させる。
起業する際には十分な準備と柔軟に対応する姿勢が求められる
起業する際には十分な準備と計画が必要です。また、事業を継続する上でも、市場の動向や自社の弱点を常に把握し、柔軟に対応する姿勢が求められます。
起業は容易ではなく、多くの挑戦が待っていますが、上記でご紹介した注意点を考慮することで、事業の生存率を高める可能性が上がりますので、これから起業する人は参考にしてみてください。