飲食店を経営するにあたって、日々考えなければならないのが売上です。売上は飲食店に関わらず、どんな事業でも長く継続するためには必要な指標です。この売上を安定させるために、数値化して予測するのが「売上予測」になります。
そこで今回は、飲食店の売上予測の立て方について解説していきます。
目次
売上予測とは?
売上予測とは、さまざまなデータを元に導き出す詳細な売上の予測データの事になります。飲食店経営時の、経営戦略や営業戦略などを考える際に必要なデータの1つとなります。主に、客数や稼働率などから分析し「どれくらいの期間で」「どれくらいの売上げを出せるか」などを数値化していきます。
一般的に売り上げ予測を出す期間として1週間、1ヶ月、1年とさまざまな単位で作られる場合が多いです。また、数値化すると同時に、グラフやデータにするとより売上動向が可視化され、分析しやすくなります。
売上予測と売上目標との違いについて
売上予測と売上目標は混同されやすいですが、2つは違った意味を持ちます。
売上目標とは、現在の実績から希望とする売上の目標数値です。違いとして、詳細にデータから分析して導き出した売上予測とは違い、経営者の感情や見込みから算出したデータのため正確性が異なります。
しかし、売上目標も飲食店を経営する上で、モチベーションや経営戦略に必要となるデータです。売上予測を立てる際に、一緒に作成しておきましょう。
飲食店の売上予測を立てる際のステップ
飲食店の売上予測を立てる際には、以下のステップを考慮しながら具体的な計算や分析を行うと効果的です。
過去のデータ分析
既存の店舗であれば、過去の売上データや客数を基に平均的な売上を算出します。季節性やイベントによる売上の変動も確認しておくとよいでしょう。
ターゲット客層の分析
どのような客層をターゲットにしているかを明確にし、その客層の平均支出額や来店頻度を推計します。
立地条件の考慮
店舗の立地に応じて、通行人数や競合店舗の数、近隣のオフィスや学校などの影響を分析します。通行人数から一定のコンバージョン率(入店率)を想定し、来店客数を予測します。
日々の営業時間と日数
週何日、1日何時間営業するのかによっても売上は変動します。営業日数や営業時間を考慮して、期間ごとの売上を予測します。
メニューの平均単価
提供するメニューの平均単価を算出し、上記で計算した来店客数と掛け合わせて売上を計算します。
プロモーションやキャンペーンの影響
新規オープンやキャンペーン時には特別なプロモーションを行う場合があります。その影響を加味して、期間限定の売上予測を追加することも考慮します。
外部の影響要因の考慮
天気、季節、イベント、経済状況など、外部の影響要因が売上に与える影響を考慮しましょう。
継続的な見直し
売上予測は一度立てたら終わりではありません。定期的に実際の売上と比較し、予測の精度を向上させるための見直しを行います。
売上予測を立てる際には、多くの要因や変動要因を考慮する必要があります。予測の精度を上げるためには、継続的なデータ収集と分析が欠かせません。
売上予測を立てるときに重要な数字とは?
売上予測を立てるときは、以下の数値を使い、計算をするのが基本の考え方となります。
■売上予測 = 客席数 × 客単価 × 回転数 × 客席稼働率
以下ではそれぞれの数値について説明します。
客席数
席数は店舗の面積と業態によって決まります。店舗面積のうち、必要とされる厨房の面積は平均で30%、カフェやバーではそれより低く、メニューの品数が多いレストランではそれより高くなります。また客席のスペースに配置できる席数も、業態によって違ってきます。店のレイアウトを決める段階で客席数を明確にしましょう。
客単価
1回の飲食で支払う金額はそれぞれ違いますが、客単価はすべての客の支払額の平均値で考えます。ランチタイムとディナータイムで客単価が大きく違う場合、昼と夜に分けて計算するほうがより正確になります。
回転数
1日のうちに1つの席を何人のお客が利用したかという数字です。1日の来店客数を席数で割ったものが回転数です。
客席稼働率
客席が実際にどれくらい使われるかを数値で表したものが客席稼働率です。0.7、0.8のように設定します。4人掛けのテーブルに3人が座ると、満席でも客席稼働率は低くなります。
上記の数字のうち、客席数以外は「予測」する必要があります。店舗の状況を考慮し、できるだけ正確な予測をすることが大事になります。
開業時の売上予測の立て方とは?
既存飲食店であれば売上予測は立てやすいですが、開業前の事業計画で売上予測を立てるには、どのような考え方をすればよいでしょうか。
ひとつの有効な方法は、競合店の調査です。競合店の調査は客単価の相場を知るために欠かせません。メニュー単価を決めたり、店の差別化ポイントを考えたりするのにも役立ちます。近隣の店に行けばその土地における客単価や回転数、客席稼働率が推測できるので参考にしましょう。
また、飲食店の売上には月ごとに波があることも考慮しましょう。一般的な飲食店では2月や8月は閑散期、12月や1月は繁忙期とされているため、1か月ごとの売上予測を立てることも有効です。
開業前に売上予測を立てることが難しい場合は、専門家に相談するという選択肢もあります。近年は自治体で無料の創業支援窓口を設置していることが多いので、チェックしてみましょう。有料で飲食店開業を支援しているコンサルタントに相談する方法もあります。また、不動産会社や内装業者に参考意見を求めるのもいいかもしれません。
飲食店のあらゆる管理をおこなうためにも、より正確な売上予測が重要になる!
そもそも売上予測って絶対に必要なものなのかという疑問に感じている方もいるでしょう。しかし、売上予測を適当におこなうと在庫管理や資金繰りに問題が生じる可能性があります。
多くの飲食店では売上予測によって算出した数値をもとに事業計画を立て、その計画に沿って経営します。そのため、不正確な売上予測をもとに食材を発注してしまうと不良在庫や材料不足が起きてしまうのです。
また、人数が必要ない時間帯や曜日に多くのスタッフを出勤させ、必要以上の人件費がかかってしまうケースもあるでしょう。飲食店のあらゆる管理をおこなうためにも、より正確な売上予測が重要になります。